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再会

 カナから電話があった俺は街中を走り続けて彼女を探していた。


 ――――――ふざけんなよ。


 ケータイの向こう側から聞こえたカナの様子は明らかに変だった。


 そして、言い残した言葉が何より俺の感情を先走らせ、当ても無く彼女を探し続けていた。


 ――――――カナまで奪うなよ。


 誰に向かって言ったわけでもない言葉。

 

 俺の運命か、それとも神様にか。


 たった二人だけだった俺の仲間の一人はもう消えてしまった。


 彼女まで失いたくなかった。






 「あ、ひがみさん」


 街中を走り回って、ようやくカナを見つけた。


 中央道路を跨ぐ形の陸橋の上に佇んでいて、走ってきた俺に気がついて何気なく笑顔を浮かべていた。


 服装は失踪した日と同じミニスカートとカッターシャツ。


 だがその服にも汚れや皴などは見られなく、まるで一週間前からタイムスリップしてきたように当時の彼女のままだった。


 「カナ……今までどこに――――」


 「日上さん」


 俺の質問を遮る強い声。その声には殺伐さと、性急さを感じさせたものだった。


 「少し……歩きませんか」


 そう言ってカナは振り返って俺に背中を見せてゆっくりと歩き始めた。

 

 「おい、カナ!」


 跡を追う。


 早歩きですぐ後ろまで追いついたが、彼女は一向に振り返ろうとしなかった。


 「ひがみさん。私がひがみさんの事を好きだって知ってますよね」


 「…………そりゃあ」


 突然の話の流れに付いて行けなくなりそうになったが、過去の彼女の告白の仕方が記憶に鮮明かつ強力に刻まれていたので容易に思い出せた。


 「じゃあ、どうして好きになったかは?」


 「一目惚れだろ」


 「そうです」


 恥じることなく肯定するカナ。


 その告白騒動の時も彼女の態度は威風堂々としたものだった。とても女の子からの告白だと思えないシチュエーションと雰囲気だ。


 「私が高校に入学した頃、いつも一人だったひがみさんがとても心配だったんです」


 「え、俺ってお前に心配されてたの?」

 

 「はい」


 肯定された。


 「それで友達が一人できて、とても幸せそうにしてて、私も嬉しくなっちゃったんです」


 「……はぁ」


 自分がペット感覚で見られていたことに、俺は少しショックだった。


 「――――そこで気がついたんです。私って、もしかして日上先輩のことが好きなんじゃないか。だからこんなに心配なんじゃないかって」


 「………………」


 「それで次の休み時間に告白しに行きました」


 「えらぁく即決だなあ!?」


 せめてもう少し思い悩んでくれよ! 乙女という言葉が似合う女に少しでもいいからなってくれ!!


 「滲み出る青春の力です」


 「その結果が『パンツDE告白』!?」


 「はい」


 肯定した。


 「……でも気づいたんです」


 「何を」


 「ひがみさんが私に求めているのはそういう感情じゃないって事を」


 人気の無くなった夜の街道を歩いていた俺たちだったが、カナが唐突に止まったことで俺も慌てて立ち止まった。


 「ひがみさんが求めているのは心から許せる友人であって、恋愛感情じゃないんだって。だから、私はひがみさんのことが好きでしたけど、押し倒したくなる衝動を抑えてよき友人として関わってきました」


 「押し倒したくなる衝動って――――」


 「ひがみさん」


 おれはてっきり、まだ彼女は俺に突っ込まれるのを覚悟してボケたのだと思った。


 だが俺を見つめる彼女の眼はいつになく真剣だった。


 「私はひがみさんが好きです」


 真剣な眼差しで、青く光り輝いていた。


 「ひがみさんがとてもとてもとてもとてもとてもとても――――――ッだいすきです!」


 その眼はおそらくカラーコンタクトを入れたとしても、これほど鮮やかに青く染まらないだろうと思うぐらいに真っ青だった。


 ラピスラズリの様に群青色に染まる彼女の眼。


 「だから――――――」


 その眼が一度瞼によって遮られる、そしてもう一度、意を決したように開かれた。


 「――――わたしは、ひがみさんに殺されたいです」


 穏やかな笑顔を向ける彼女の眼は相変わらず青色で、真っ直ぐに俺を見つめたまま自らの死に様を求めてきた。


  



  


 


 


 

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