第3話
一五〇年前、この地獄が真の意味で加速した原因は、ある一人の「再生の加護」持ちが率いた犯罪集団だった。
彼らは単に略奪を行ったのではない。各国の主要な建築物、歴史的遺産、そして首都の心臓部を次々と爆破。人類が数千年の時間をかけて築き上げてきた**「文明とプライド」を、徹底的に、そして無機質に蹂躙した。**
これに対し、自国の誇りを踏みにじられた大国たちは激怒。もはや外交も交渉も存在しなかった。彼らはテロリスト一味を根絶やしにするため、統治能力を失い壊れた国と化した日本政府の反対意見など一蹴し、東京への大規模な軍出動を断行した。
だが、その「復讐心」こそが神の仕掛けた最大の罠だった。
主要国が大兵力を東京という一点に注ぎ込んでいる隙を、周辺の小国たちは見逃さなかった。彼らは即座に同盟を組み、手薄になった主要国へと宣戦布告。
大国がテロリストという「点」に執着している間に、世界全体が連鎖的に爆発したのだ。
報復が報復を呼び、紛争は瞬く間に全地球規模の世界大戦、そして核戦争へと発展した。神様はただ火種を一つ落としただけで、あとは人間が自分たちの手で効率よく世界を焼き払ったのだ。
――そして一五〇年。現在の東京は、その戦争を生き残った連合軍の完全なる管理下にある。
大陸側の廃墟で、俺は古い無線機から流れる軍の放送を聴いていた。
『――通告。東京全域における大規模治安維持作戦は最終段階へ移行。武装組織の拠点は全て制圧された。現在、東京都内は軍の暫定統治下にあり、許可なき立ち入りは敵対行為とみなす』
放送の内容はあくまで「テロリスト掃討」という建前だ。だが、裏では「神」を物理的に隔離し、独占しようとしているのは明白だった。
「……あーあ。これは完全に詰んだな」
俺は無線機を切り、煙草の代わりに不味い携帯食を齧った。
別に、世界を救うために東京へ行こうとしたわけじゃない。神の懐に入って、報酬や加護をがっぽり貰えれば、この先のゲームの進行も楽になる。そんな「ラッキー」を狙っていただけだ。
だが、現状は厳しい。日本へ渡るどころか、この大陸の沿岸部すら連合軍が目を光らせている。
「再生の加護持ちにあとはただの人間か……。考えてみればよくこの戦力で独立国家設立なんて宣言できたもんだ。」
伝説のテロリストも、最後は多勢に無勢。再生しきれないほどの弾丸を叩き込まれ、物理的に拘束されて終わったらしい。軍のやり方はシンプルだ。殺せないなら、コンクリート詰めにするか、脳に適当な棒でも突き刺しとけば人間だし何もできない。
二日後。
放送は、東京の「完全封鎖」を告げた。
これで強くなる為の最短ルートは消えた。
「ま、いいか。」
俺は手元の銃を確認し、地図を広げた。
神様を独占して文明を再建しようとする連合軍。その支配から外れたこの荒野で、物資を集まる方が俺には向いてる。
東京行きのチケットは、一旦ゴミ箱行きだ。
「……にしても、ゲームの終わりが見えねぇな。俺が生きてるうちは無理かもな」
空を見上げ、独り言が漏れる。




