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サクヤとイワナガ

ピーンポーン……

ケルベロス「グルルル……ガオーン! …………ワンワン! ……キャンキャン! ……クゥーンクゥーン」

???「おー、よしよしよしよし」

ピーンポーン……

???「ええ子やな〜。ハデスちゃん~! 居るか~?」

ピンポンピンポンピンポーン!

ハデス「あれ? もしかしてククリさんじゃない?」

ペルセポネ「あらあら、どうなさったんでしょう。今出ます」

ガチャリ

ククリ「ペルちゃん! 饅頭持ってきたで! この饅頭は美味いで~!」

ペルセポネ「まぁ、ククリさん。ついこの前、日本渡航のお手伝いをしてくださったのに。ありがとうございま………す? え? こ、このお饅頭は……!」

ククリ「ああ、この饅頭、実はイワヒメちゃんからの差し入れやねん。ん? お前も饅頭、食べたいんか?」

ケルベロス「ワォ~ン……」

ククリ「それとも飴ちゃん舐めるか? おかきもあるで?」

ペルセポネ「ま、まぁ上がってくださいな。あと、ケルちゃんは今ちょっとダイエット中なんです……。この前、日本旅行していた際に、またエサ(という名の冥界侵入者)を食べすぎちゃったみたいで……」

ククリ「そうなんか~。あんたも大変やなぁ! 犬はちょっとぽっちゃりくらいが可愛ええのになぁ! つってもあんたはデカすぎて太っとんのかぽっちゃりしとんのか、ようわからんけどな! 頭も三つあるから三倍、エサを食うてしまうんやろな! おかきやろかと思ったけど、ペルちゃんがダメっちゅうんならあげられへんな! ガッハッハッハ!」

バシバシ!

ケルベロス「キュ~ン……」

ハデス(世界広しと言えども、ウチの番犬ケルベロスを全く怖がらんないであんなバシバシ叩けるの、ククリさんくらいなものだよなぁ……。ケルベロスも『なんか勝てん』って顔してるし……)

ペルセポネ「あなた! これ見てくださいな!」

ハデス「ん? こ、これはっ!」

ペルセポネ「ええ! 浜松からこちら(冥界)に直帰してしまったので、買い忘れていた、栄昇堂の『みのぶまんじゅう』ですわ!」

ククリ「なんや、ようしらへんけど、イワヒメちゃんも忘れとったて言うてな! 持ってってくれんか言われたもんで持ってきたんや!」

ハデス&ペルセポネ「あ、あ、あ……ありがとうございますーっ!」

ハデス「とりあえず、客間にどうぞ!」

ペルセポネ「お茶入れますわ。ゆっくりしていってくださいな!」

ククリ「ほんなら上がらさしてもらおうかいな」

ハデス「どうぞどうぞ!」

ククリ「これ、割れせんべいな」

ペルセポネ「ありがとうございます~」

ケルベロス「クゥ~ン……」


ハデス邸 客間


ククリ「そういや、こないだはあんまり聞かんかったけど、どないやったんや? 今回の日本旅行は」

ハデス「とっても素晴らしい旅行でしたよ~! ククリさんとサクヤさんと、イワヒメ様のお陰で!」

ククリ「そら良かったわ! ん? 今、イワヒメちゃんの事を『様』で呼んだか?」

ペルセポネ「ククリさん、こちらキリマンジャロコーヒーですわ。そうなんです。ウチの旦那ったら、すっかりイワヒメさんのファンになっちゃいまして」

ククリ「おおきにな。イワヒメちゃんのふぁんかいな! そらペルちゃん的にはどないなんや?」

ペルセポネ「私もイワヒメさんにはお世話になりましたし、夫がそう呼びたくなるのも分からなくもないので……」

ククリ「まぁ、イワヒメちゃんの方が率先して案内してくれた言うんは聞いとるけどなぁ。サクヤちゃんは途中でどっか抜けとったんやろ! ワテも後からイワヒメちゃんに聞いたで! 鰻にありつこう思うて、浜松に来たてな! サクヤちゃんも昔とちごーて、最近はそういうとこ、ちゃっかりするようになったねんな。ガッハッハッハ!」

ハデス「それもありますけど、イワヒメ様は、見た目も性格もまるでアニメから抜け出たみたいで! もう神っすよ! 神」

ククリ「まぁ神やな?」

ペルセポネ「あなた、その言い方はククリさんが混乱してしまいますわ」

ハデス「はっ! そ、そっか。イワヒメ様はそもそも神様だったね……」

ククリ「神やで?」

ペルセポネ「そ、そういえば、あー……えっと」

ククリ「ん? ペルちゃん、どないしたんや?」

ペルセポネ「その、お聞きしていいものかどうか……」

ハデス「もしかしてあのことかな?」

ククリ「なんや? まぁまずは聞いてみいや」

ペルセポネ「えっと、イワヒメさんは、昔ニニギと言う方に嫁ぎに行ったのに返品されて帰ってきたとか……」

ククリ「そやで! ひっどい話やろ!」

ハデス「ひどすぎますよ! あんなにもお美しいじゃないですか!」

ククリ「そやろ、そやろ! あんたもそう思うか!」

ハデス「超! 同意っす!」

ペルセポネ(あ……聞いてよかったのかしら……。でもご本人の居ない場でお話しするのはどうなんでしょうか……?)

ククリ「それがな! 不思議な事にあん子らに聞くとな! 実は真逆の答えが返ってくんねん!」

ペルセポネ「真逆……ですか?」

ククリ「そやねん。あんたらは、どこまで知っとるのかわからんから、最初から話すけどな」

ハデス&ペルセポネ「ゴクリ……」

ククリ「むかーしな。アマちゃんの孫っちゅーことになっとるが、実際は世間一般で言う孫とは違うんやけどな。そこんところは面倒やから、まぁ端折らせてもらうわ。日本があの世とこの世と神の国とで分かれとった頃に、神の国からこの世を収めるために、三種の神器を持たされてこの世に放り出されたんが件の『ニニギノミコト』や。農業の勉強をがっつりやらされてな」

ペルセポネ「そこまでは、なんだか不憫なお方のように聞こえますね」

ククリ「そやな。そこまではまぁええんや。けどな、そのニニギがこの世に降り立って真っ先にやったんが『求婚』や」

ハデス「真っ先に……ですか……」

ククリ「そや。一目惚れしはってな。目的地に到着して、他のやる事もやらなあかんのに、それよりも女を口説く事からやり始めたんや。アホやろ?」

ペルセポネ「は、はぁ……。で、そのお相手が……」

ククリ「サクヤちゃんやな」

ハデス「サクヤさんも美人と言えば美人なんすけど……」

ペルセポネ「改造ゴシックメイクだったので、ちょっと素が分からないというか……」

ククリ「まぁ、女は化けるっちゅーくらいやからな。けど、すっぴんのサクヤちゃんも美人やで。なんで今はあんなおかしな化粧しとるんかしらんけどな。昔はうっすらしとるだけやったんや。それこそニニギに嫁ぐ前くらいはな」

ハデス「ガチゴスメイクって言うんだっけ、あれ」

ペルセポネ「そうですね。結構大変なんですよ、あのメイクするの。時間もかかりますし」

ククリ「すっぴんのサクヤちゃんとイワヒメちゃんを並べたら、見た目が大人っぽいか子供っぽいかくらいの違いでな。よう似とるで、あの姉妹は。まぁでも、あんまちっこいから、化粧しとらんサクヤちゃんは子供くらいに見えるかもしれへんけどな!」

ペルセポネ「ま、まぁ、大人っぽく見せる為にそういうメイクをしているのかもしれませんね。で、話を戻しますと、サクヤさんはその求婚を受け入れられたのですね」

ククリ「うーん、そこがなんともはっきりせーへんねんな。結果だけ見ると、そうなんやけど、今聞くとサクヤちゃんは『やっぱ間違った』って言うててな」

ハデス「その時に、イワヒメ様も一緒に嫁ごうとしたんですよね?」

ククリ「まぁ、そうやな。けど、詳しく言えば、サクヤちゃんがニニギに求婚された事を喜んだオオヤマツミが、サクヤちゃんだけでなくてイワヒメちゃんもセットにしたっちゅー訳や。本人の意思は無視してな! そういう意味じゃ、オオヤマツミが悪いんや! こないだもその事を説教したったわ!」

ペルセポネ「それはまた……」

ハデス(やらかしてから、ものすっごい時間経ってるだろうに未だに言われるのはちょっと不憫……)

ククリ「ほんで二人してニニギんとこに嫁入り道具持って嫁ぎに行くんやけど、ここや。ここでニニギはイワヒメちゃんを突き返したんや。『醜い』っちゅー暴言まで添え付けてな」

ハデス「で、でも実際はあんなにお美しいですよね!」

ククリ「そやろ? けど、今は『醜いっちゅー理由で返された』って伝わっとる。そのせいか、一時期は『山には醜いモンを供えろ』って事が流行ったんやで。オコゼとかひょっとこの面とかな。ワテんとこまでそういうモンが供えられたわ! ま、オコゼは美味いんやけどな!」

ペルセポネ「そんな事まで……」

ククリ「そやで。ほんで、結局はサクヤちゃんだけがニニギの嫁はんになったんや。けど、その後もサイアクでな」

ハデス「その後?」

ペルセポネ「あっ、それはもしかして、お子さんの件ですか?」

ククリ「ペルちゃんは知っとるみたいやな。サクヤちゃんが身籠った時の話なんやけどな」

ペルセポネ「『自分の子供じゃない、不倫してるだろ』って言われたんですよね? この前、配信動画で話されてましたわ」

ハデス「なにそれ。ひどいなぁ」

ククリ「そやろ。酷い話やろ。サクヤちゃんはそん事を今でも根に持っとるみたいでな。正直夫婦仲はあんたらみたいにようなくて、ま、ぶっちゃけ最悪やったかもしれんなぁ」

ペルセポネ「怒って、小屋を燃やしてその小屋でお子さんを生まれたんですよね」

ククリ「実際には、小屋を自分で燃やしたっちゅーよりは、ブチ切れたサクヤちゃんの怒りで、小屋が燃えてしもーたらしいで」

ハデス「なにそれ、怖い……」

ククリ「そやで。ハデスちゃんも女は怒らすもんやないで~」

ハデス「ぜ、善処します」

ペルセポネ「私は燃やしませんわよ。おほほほほほほ……」

ハデス「……あれ? でも、そうなると最初に言われていた『真逆の答えが返ってくる』っていうのは……?」

ククリ「ああ、そやねん。イワヒメちゃんに、わざわざ嫁入り道具一式持って嫁ぎにいったんに、突き返されて大変やったなぁ、っちゅーとな。『自分は全然大変じゃなかった』っちゅーねん。大変やったんはサクヤちゃんの方や、言うてな」

ハデス「え? じゃあサクヤさんはどう言ってるんですか?」

ククリ「サクヤちゃんにどう言う事や聞くとな『マジで大変だったんで聞かないでくれ』言うんや。そういや『姉様は上手くやった』ってこぼしとったなぁ。ほんで、イワヒメちゃんはまぁ、『サクヤには悪いことした』と言うててな。けど、二人ともそれ以上は話してくれへんねん」

ペルセポネ「それってもしかして……」

ククリ「ペルちゃん、なんかわかるんか?」

ペルセポネ「実は本心ではお二人とも、その方に嫁ぎたくなかった……とか?」

ハデス「お父さんに言われたから、仕方なく嫁ごうとした、って事かな?」

ペルセポネ「私も、過保護な親から逃げる理由もあって、狂言誘拐をしましたからなんとなく思うのですが……もし、そこでイワヒメさんが嫁がないような『何かの工夫』をしてたとしたら……」

ハデス「あっ。今の言葉の意図が通ってくるね」

ククリ「ほな、イワヒメちゃんは何をやったんや?」

ペルセポネ「いえ、それは私にもわかりかねますが……」

ハデス「うーん……。何をやったのか知らないけど、もし、今の仮定通りだとしたら、イワヒメ様は策士だね」

ペルセポネ「仮説の域を出ませんが、実際の所はご本人たちにお聞きしないとわかりませんね……。でも、デリケートな話題ですし……」

ククリ「そやなぁ。それこそ、神のみぞ知るっちゅー訳やな」

ペルセポネ「そう言えば先程、サクヤさんは『最近は昔と違ってちゃっかりするようになった』と仰られてましたね」

ククリ「そやなぁ。思えば昔はこう言っちゃなんやが、サクヤちゃんは要領悪いっちゅーか、なんや貧乏クジ引く所があった感じやったなぁ」

ペルセポネ「び、貧乏クジ……(きっと旦那様も……)」

ハデス「と、ところで、その旦那さんの『ニニギ』さんは、今はどうしてるんですか?」

ククリ「ニニギか。あいつはイワヒメちゃんを突き返した時にイワヒメちゃんとオオヤマツミに寿命を与えられてな。そんで普通に死んで今は黄泉におるで」

ペルセポネ「黄泉に、ですか? では、イザナミ様のように黄泉で重役か何かをやってるんでしょうか?」

ククリ「地獄の裁判所のどっかで働いとるみたいやで。何やっとるんかはしらへんけど」

ハデス「そ、そうなんすね……」

ケルベロス「ワォーン……」

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