ある日のアマテラス
アマちゃん「…………」
シナツヒコ「なんだ? 珍しく正座して参拝客見て。珍しい人間でも居たか?」
アマちゃん「今日、人が多い……」
シナツヒコ「連休だしなぁ。正月と、こういう大型連休じゃ、まぁ混むのは仕方ねぇって」
アマちゃん「うん……」
シナツヒコ(なんか知らんけど、珍しく主祭神モードじゃねぇか)
アマちゃん「…………」
シナツヒコ「んじゃ、俺も自分の宮に来る参拝者をちゃんと見ておくかねぇ」
アマちゃん「……うん」
シナツヒコ(うーん、こっちも見ないでなんか真剣だな……。これは何かあるか……、或いは……)
数時間後
トヨウケ「アマちゃんお昼ごはんですよ」
アマちゃん「……うん」
トヨウケ「あら、なんだか真剣ですね。誰か居ましたか?」
アマちゃん「……まだ……」
トヨウケ「……まだ?」
アマちゃん「……あー! 疲れちゃった! ごはん~」
トヨウケ「はい、山菜ごはんとお味噌汁と焼き魚とお茶です」
アマちゃん「今日人が多い~」
トヨウケ「連休のど真ん中で、しかもいい天気、日曜日で大安となれば、人も多いでしょう」
アマちゃん「そうなんだけど……」
シナツヒコ「あー、腹減った。俺もメシ」
トヨウケ「準備できてますよ」
シナツヒコ「サンキュー。……なぁ、トヨウケ」
トヨウケ「なんですか?」
シナツヒコ「(コソコソ)なんか今日のアマ姉、変じゃね?」
トヨウケ「(コソコソ)確かに。参拝客で誰か探しているような……」
シナツヒコ「(コソコソ)誰かって?」
トヨウケ「(コソコソ)さぁ? 聞いてみたらいかがです?」
シナツヒコ「(コソコソ)うーん……。なんか前にも似たような事があったような……」
アマちゃん「どしたの?」
シナツヒコ「あー、うん。その、今日のアマ姉は真面目だなぁ、と」
トヨウケ「誰かを探しているようにも見えますが」
アマちゃん「えーっと。それは~……」
シナツヒコ「(ん? この反応は……)なーんか、前にも見たことがある光景なんだよなぁ。あとから理由を知って、すげぇガックリ来たような」
トヨウケ「そうなんですか?」
シナツヒコ「いつだったかな~」
アマちゃん「ま、まぁ、たまにはそう言う時もあるんだよね~……」
シナツヒコ「……ああ、思い出した」
アマちゃん「わざわざ思い出さなくてもいいんじゃないかな~……?」
シナツヒコ「あの時も、こんな感じで、参拝客を真剣に見てたよな。一人一人の頭の中まで覗いてさ」
アマちゃん「そ、そんな事あったっけ~?」
トヨウケ「いつの事ですか?」
シナツヒコ「450年くらい前だったか」
アマちゃん「な、何のことかな~?」
シナツヒコ「あの時は、確か、カステラが初めて日本に来た時だったなぁ」
アマちゃん「……うっ」
シナツヒコ「日本でもいつでも食べられるようにしたいなぁ、とか言ってたっけ」
トヨウケ「ほほう」
シナツヒコ「やたら真剣でさ。これは近いうちに災害か、戦か、よくない事が起きるんじゃないかと疑ったんだが……」
アマちゃん「さ、山菜ごはんおいしーな~」
シナツヒコ「よもやの、ただ甘い菓子を定着してくれそうな人間を探してたんだよな」
トヨウケ「……ああ、なるほど。それなら何度か見た光景ですね。カヌレとか、タピオカとか」
シナツヒコ「で、こっそり日本にも店ができるように、バレないくらいに力を与えたり……」
トヨウケ「なるほど。分かりました」
アマちゃん「お、おさかな、おいしーなー」
シナツヒコ「なんか思い当たるもんがあるか」
トヨウケ「つい最近、ドバイチョコレートが人気らしい、と言うのと、それを食べたい、という言葉を聞いたので、おそらくは……」
アマちゃん「ギクギクッ……。おみそしるおいしーなー……」
シナツヒコ「そういや、ドバイからなんだったか。フィックス・デザート・ショコラティエ社って会社のお偉いさんが来日してんだったか」
トヨウケ「なるほど。その人に本場ドバイチョコレートを日本でも作るように仕向けようとしていると」
シナツヒコ「いや、おそらく、その人間に会えたり商談出来たりする人間を探してたんだと思う」
トヨウケ「なるほど。『商売繁盛』にかこつけて、あわよくば本場のドバイチョコレートを奉納させようと」
アマちゃん「さ、さて、参拝客を見てあげないと~」
トヨウケ「お待ちなさい」
アマちゃん「な、なんでしょ~?」
トヨウケ「ご自身の欲望を満たすために人間の『願い』を叶えるのはご法度なのは、よく知ってられますよね……?」
アマちゃん「も、もちろん~」
トヨウケ「では、今回の探し人をお教えいただきましょうか?」
アマちゃん「そ、それは~……その~……」
トヨウケ「いいですか!? アマちゃん! 前だって珍しいお菓子を売り出したからって、ご近所の駄菓子屋さんの『願い』を勝手に叶えて! アマちゃんはただでさえ莫大な神力を持っているのに、加減もうまく出来ないんですから! あの駄菓子屋さんが今どうなっていると――」
シナツヒコ「ごっそさん~。(あー、やっぱそんなとこだよな……)」




