級長戸辺命
伊勢
???「やっほー。たっだいまー!」
シナツヒコ「ん? おお、戻ってきやがったか、シナトベ」
シナトベ「いやー、ひっさびさのお伊勢さんはいいねぇ~。シナツん、元気してたかい?」
シナツヒコ「まぁまぁだな」
シナトベ「そうかい、まぁまぁかい」
アマちゃん「あー! シナトベちゃんだー! わー、久しぶり~!」
シナトベ「やぁやぁ、アマ姉ちゃん、元気してたかな?」
アマちゃん「まぁまぁ~」
シナトベ「こっちもまぁまぁかい。あたしもまぁまぁだけどね」
シナツヒコ「10年ぶりくらいか。お前もここに祀られてるんだから、もっと来いよな」
シナトベ「ちっちっち。風の神ともあろう者が、一つの所に縛られるなんて窮屈だね。あってはならない。シナツんも、もっと外を出歩かないといかんぞ」
シナツヒコ「俺はいいよ……。お前がその分出歩きまくってっから。んで、今度はどこ行ってたんだ?」
シナトベ「しばらくは奈良にいたんだけど、飽きたから九州と北海道をブラブラしてたよ。ほら、これ土産だ」
アマちゃん「わー! なんか色々、いっぱいあるー! ……これなぁに?」
シナトベ「こいつは『星砂のボトルアート』だね。あたしが作った」
シナツヒコ「それ、沖縄のやつだろ……」
アマちゃん「わ~、綺麗~」
シナトベ「九州をブラブラしてたって言ったじゃん。ま、航海の見張りがてらにちょいと寄ってみたんだよ。面白くて2年ほど滞在してたけど」
シナツヒコ「航海の見張り、あんまやってねぇだろ……」
シナトベ「んなこたないよ。そこから、北海道まで航海を見てやったさ」
シナツヒコ「……クルーズ船に乗りやがったな?」
シナトベ「そいつも航海に違いないっしょ?」
シナツヒコ「そうではあるんだが……」
シナトベ「こいつは、そこで買った土産だ」
アマちゃん「わー! ……がいこつのキーホルダー……」
シナトベ「なんでこいつはどこにでも売ってんだろうねぇ。誰が買うんだか」
シナツヒコ「お前が買ってるじゃねぇか」
シナトベ「確かにそうだ。こりゃ一本取られたね」
アマちゃん「……これ、シナっちにももらったよ?」
シナトベ「……え?」
アマちゃん「ハワイのお土産で」
シナトベ「…………」
シナツヒコ「…………」
シナトベ「あんたも買ってんじゃん……」
シナツヒコ「……かーちゃんの土産ついでに……」
シナトベ「まぁいい。次の土産はこいつだ」
アマちゃん「わー! ……木彫りのふくろう?」
シナトベ「そうさ。北海道と言えば、熊の置物を想像するが、フクロウも有名なのさ。こいつもあたしが作った」
アマちゃん「ふくろう可愛い~」
シナツヒコ「……で、北海道には何年くらい居たんだ?」
シナトベ「そうさね。せいぜい3年程度だよ。函館のイカも良いが、あたしには小樽の方が面白かったねぇ。ガラス作んのがさ」
シナツヒコ「しばらく工房に居やがったな?」
シナトベ「人間の苦労もちゃんと味わわなきゃねぇ」
シナツヒコ「函館でもイカ漁をやってやがったな?」
シナトベ「イカ漁は夜なのに明るいのなんのってのが面白いんだけどね。でも最近は松明じゃなくなってちょっとつまらなくなっちまったね。ガラス作る方が面白かったよ」
シナツヒコ「……まぁいいや。そのあとはどこ行ったんだ?」
シナトベ「そっから、また九州までの船の航海を見てやってね。ついこないだまでは九州をブラブラしてたよ」
シナツヒコ「またクルーズ船に乗りたくなっただけだろ」
シナトベ「そうとも言うねぇ。ま、いいじゃんか。こいつはその時の土産だ」
アマちゃん「…………がいこつのキーホルダー。……また」
シナトベ「さっきの骸骨とは柄違いだよ」
シナツヒコ「で、九州のどこら辺をブラブラしてたんだ?」
シナトベ「最初は桜島見てたんだけど、天草の地酒が美味いって聞いてね。いや、鹿児島の焼酎も美味いんだけどね。天草をブラブラしてたら、なんか軍艦島ってのが見えてね」
シナツヒコ「……それ長崎。天草は熊本だぞ」
シナトベ「天草にもちゃんと行ったさ。美味い酒だったんでね。こりゃ風呂に入りながら飲まなきゃと思って、杉乃井ホテルに行ってね」
シナツヒコ「杉乃井ホテルって別府だろ」
シナトベ「そうとも言うね。で、そこで見た映画のモチーフの場所に行ってみたくなってね。樹齢数千年の屋久杉を見てきたんだよ」
シナツヒコ「それ、鹿児島の屋久島だろ」
シナトベ「しばらくそこでのんびりしてたんだけどね、なんだか騒がしいのが恋しくなっちまってね。そんで精霊船を見てきたんだよ。爆竹が煩くて楽しかったねぇ」
シナツヒコ「それ、長崎……」
シナトベ「こいつはそこでの土産さ」
アマちゃん「……ばくちく……」
シナツヒコ「これはダメ。使う場所はここらにはない」
シナトベ「ダメかい。ならこいつは預かっておくかね。じゃあ代わりにこの土産だ」
アマちゃん「……黒糖?」
シナトベ「ついこないだまで居たとこの土産だ」
アマちゃん「は・て・る・ま・じ・まの黒糖」
シナツヒコ「日本最南端の島じゃねーか!」
シナトベ「そうとも言うねぇ」




