火野 真央
声「もしもし、比良坂那美さんのお電話でお間違え無いですか?」
イザナミ「どちらさまかしら?」
声「『平井ルーム』の担当の辻井と言う者です。ご注文頂いていたものが出来ました」
イザナミ「あらあら、そう言えばそうだったわね~。でも、担当は佐藤さんじゃなかったかしら?」
声「実は佐藤が病欠でございまして……。まだしばらく休みになると言う事で、急遽わたくしからご連絡させていただきました」
イザナミ「そうだったの~。それはお大事にとお伝え下さる~?」
声「はい。伝えさせていただきます。それでは、お受け渡しのご準備は出来ておりますので、ご来店お待ちしております」
イザナミ「ええ、ありがとうね~」
声「こちらこそありがとうございます。では失礼いたします」
火車「比良坂那美って何なのですにゃーん?」
イザナミ「あら、聞こえちゃったかしら。現世の私の偽名よ~」
火車「『平井ルーム』って何なんですにゃーん?」
イザナミ「オートクチュールの専門店よ~。現世で着る服を頼んでおいたのよ~。と言う訳で、今からちょっと名古屋に行くから連れて行ってくれる~?」
火車「了解ですにゃーん。ではお乗りくださいにゃーん」
イザナミ「せっかくだから、火車も現世での人間体の時の服を買っておくといいわよ~」
火車「わっちはしもむらの服で十分ですにゃーん」
イザナミ「あなた、安上りねぇ~」
火車「じゃあ名古屋に飛びますにゃーん」
名古屋
イザナミ「ここよ~」
火車「なんでわっちも来ているにゃーん? お届けするだけじゃないんですかにゃーん?」
イザナミ「いいじゃない~。折角だからあなたも見てみなさいよ~。人間体の時は可愛いんだから~」
火車「あんまし、人間の服には興味ないにゃーん」
イザナミ「いいから、いいから~」
平井ルーム店内
イザナミ「比良坂那美だけれど~、受け取りのお電話いただいたんだけれど~」
店員「お待ちしておりました。今回は担当の佐藤が急病でご連絡が遅くなって申し訳ございません」
イザナミ「いいわよいいわよ~。佐藤さんに、お大事にとお伝えくださいな~」
店員「そう言って頂けて幸いです。こちら、ご注文頂いていた品でございます。そちらで試着してみてください」
イザナミ「じゃあちょっと着させてもらうわね~。ほら、あなたはちょっと服でも見てなさいな」
火車「う~ん……。こんなのあるんだにゃー」
店員「ご家族様ですか? 比良坂様に負けず劣らずお綺麗ですね」
イザナミ「そうでしょ~。家族ではなくてただの連れね~。でもこの子、服にあんまり興味が無いみたいなのよ~。私が試着している間、ちょっと適当に見繕ってもらえるかしら~?」
火車「え? わっちは別に……」
イザナミ「それじゃ、お願いしますね~」
店員「わかりました。でも本当にお綺麗ですね。これは選びがいがありますねぇ」
数分後
イザナミ「いいわ~。ピッタリだわ~。綺麗に仕上げてくれたのね~。かしゃ……、どう思う~? ってあら?」
店員「これも良いですね~。わぁ、似合いますよお客様」
火車「うー……にゃー……」
店員「あっ、比良坂様、そちら良くお似合いですね。どうでしょう? 着心地の方は。何か気になる点などございますか?」
イザナミ「ええ~。私の方はピッタリよ~。特に問題も無いわ~。注文通りだわ~。ありがとうね~。それはそうと、か……いえ、その子にも色々似合いそうじゃない~」
店員「ありがとうございます。では、比良坂様の服はそれで問題なしと言う事で。お連れ様の方なのですが、色々と似合いそうで。比良坂様、こちらなんていかがでしょう?」
イザナミ「いいわね、いいわね~。可愛いわ~」
火車「フリフリだにゃー……」
店員「良くお似合いです。こちらを元に、お連れ様のご要望を取り入れた服など、とても良くお似合いになりそうなのですが」
イザナミ「そうね~。ほら~、似合うじゃない~。か……。えーと、ちょっとごめんなさいね~」
店員「はい?」
イザナミ「(コソコソ)ちょっと火車。あなた、現世用の名前はないの?」
火車「(コソコソ)そんなの無いですにゃー……。使う機会もないですにゃー……」
イザナミ「(コソコソ)ここ、名前とか登録しないといけないから、ささっと何か決めちゃいなさいよ~」
火車「(コソコソ)そんなこと言われましてもにゃー……。なんも思い浮かばないですにゃー……」
イザナミ「(コソコソ)じゃあ、もう私が勝手につけちゃうから。あなたは現世では『火野真央』って名乗りなさい」
火車「(コソコソ)なんですにゃ? それ」
イザナミ「(コソコソ)いいから。覚えやすいでしょ? 火野ちゃん」
店員「どうか、されましたか?」
イザナミ「いえ~、ごめんなさいね~。この子、火野って子なの~。登録手続きしてもらってもいいかしら~。で、その服で、あとはお任せで良いわ~」
店員「承りました。火野様、でございますね? 下のお名前もよろしいでしょうか?」
火車「『火野真央』ですにゃー……」
店員「では、登録の為にこちらにご記入を――」
数十分後
店員「では、またのお越しをお待ちしております」
イザナミ「ええ。じゃあ、火野ちゃんの服、お願いね~」
火車「……うー、にゃー……」
イザナミ「何むくれてるのよ~? 可愛かったじゃない、あの服」
火車「あんなフリフリ、わっちには似合わないにゃー……。着てくとこなんて無いにゃー……」
イザナミ「ならこれから街歩きしましょ。そういう時に着るものと思えばいいじゃない~」
火車「うー……疲れたにゃーん」
イザナミ「疲れたんなら、そこのカフェでお茶でも飲みましょうか~」
火車「もう帰りたいにゃー……」
その後 伊勢
アマちゃん「あ、おかーちゃんからトレインメッセージ来てる。あ、可愛い~」
トヨウケ「どうしました?」
アマちゃん「写真。これ見て~。可愛い~」
トヨウケ「これは……。フリフリですねぇ。と言うか、どなたですかこの子」
アマちゃん「え? この子、火車ちゃんだよ?」
トヨウケ「…………えっ!?」
アマちゃん「人間体になると、美人なんだよねぇ~」
トヨウケ「…………火車……さん?(か、可愛い!)」




