ツクヨミの愚痴
西照神社
ツクヨミ「………ふぅ」
リー……リー……
ツクヨミ「……ん……。このお酒、美味しいわね」
リー……リー……
ツクヨミ「やっぱりここから見る月は良いわねぇ」
シナツヒコ「…………なぁ」
ツクヨミ「……んー?」
シナツヒコ「なんで俺がここに居るんだ?」
ツクヨミ「いいじゃない。私が呼んだんだから」
シナツヒコ「……俺はここに祀られてないんだが……」
ツクヨミ「たまにはいいでしょ。こういう所でお酒飲むのも」
シナツヒコ「それは、まぁそうなんだけどよ……」
ツクヨミ「それに、こういう景色の良い場所で飲むお酒は格別でしょ?」
シナツヒコ「それもそうだが……」
ツクヨミ「満月の夜に高所でそれを眺めながら一杯。いいじゃない」
シナツヒコ「……満月じゃなかったけど、高所と言うなら、この前ここより高い場所で酒飲んだけどな……」
ツクヨミ「……あなたまさか、飛行機でお酒飲んでたの?」
シナツヒコ「俺ぁ、そん時は別に客として乗ってねぇからな」
ツクヨミ「じゃあ、あなた飛行機のどこにいたの? まさか荷物に紛れていたわけじゃないだろうし」
シナツヒコ「飛行機の上だ。眺めは最高に良かったぞ」
ツクヨミ「……で、そこで一杯やってた、と」
シナツヒコ「飛行時間が7時間だぞ。流石にやることがねぇから一杯やりたくもなる」
ツクヨミ「……それ、羨ましいわね……。今度は私も呼んでよ」
シナツヒコ「ツク姉がそれやるのはマズいんじゃねぇか?」
ツクヨミ「今度の新月にお願いするわ」
シナツヒコ「……そん時に新しい便でもできたらな」
ツクヨミ「別に既存の便でもいいでしょ? あなた『航空安全の神』として祀られているんだから」
シナツヒコ「だからって人間にベッタリになるってのはどうかと思うぜ。だから俺は新しい便にだけ付き添う事にしてんだ」
ツクヨミ「まさか二神も乗っている飛行機にトラブル起こさせるわけにもいかないしねぇ。でもたまになら良いでしょ」
シナツヒコ「……わかったよ。今度の新月の日だな?」
ツクヨミ「ええ。出来ればオーストラリア行きの便でお願いね」
シナツヒコ「マッドケーキ目当てかよ」
ツクヨミ「いいじゃない。あなたちょっと頭硬いわよ」
シナツヒコ「……ツク姉もしかして酔ってるか? ツク姉からそんな言葉が出るとは思わんかった」
ツクヨミ「まだまだ酔ってないわ。……ん、美味しいわよ、このお酒」
シナツヒコ「確かに酒も美味いし眺めも格別だ。けど、なんで今回、俺までここに連れてきた?」
ツクヨミ「……たまには良いでしょ? 私も度々ここには来るけれど、ここで一人でお酒を飲んでいると、たまに話し相手が欲しくもなるのよ。ほら、あなたもさっき言ってたじゃない。7時間も飛行機に乗っていたら流石にやることがないって」
シナツヒコ「まぁ、それもそうか……」
ツクヨミ「それに眺めは良いけれど、飛行機の上ほど眺めが変わるわけでもないし」
シナツヒコ「飛行機の上もそう眺めが変わるわけでも無いぞ。大体が雲の上だったりとかな」
ツクヨミ「それでも時々は全く違う景色も見れるのでしょう?」
シナツヒコ「確かに、着陸前とかに見える景色は面白くはあるな」
ツクヨミ「でしょう? けれど、それで言うと、私が眺められる場所って少ないのよ」
シナツヒコ「普段の伊勢と、この『西照神社』、鹿児島の神社に、京都だったか」
ツクヨミ「あとは長崎県の壱岐島ね。あそこは良い所よ」
シナツヒコ「ああ、そうだったな。その五か所か……」
ツクヨミ「姉さんみたいに色々な所には行けないから、ちょっと羨ましくなる時もあるわ」
シナツヒコ「ミステリアス女神のつらいところだわな。まぁ、でも、最近は名前だけは有名だけどな」
ツクヨミ「ソシャゲとかの影響ね。でもそれって祀られてるわけじゃないから……」
シナツヒコ「行ける場所が増えるわけでも無いってか」
ツクヨミ「そう言う事。だからたまには愚痴も言いたくなるわ」
シナツヒコ「……俺は愚痴のはけ口って訳か……」
ツクヨミ「そ。たまにはいいでしょ?」
シナツヒコ「しゃーねぇなぁ……」
ツクヨミ「ほら、もっとジャンジャン飲みなさいよ。ここに奉納されるお酒は美味しいわよ」
シナツヒコ「つまみが欲しい所だなぁ」
その頃 富士山頂
ククリ「ぷっはー!」
オオヤマツミ「……あのー、なんでまたここで一杯やってるんですか?」
ククリ「ええやん! 今は閉山中やろ?」
オオヤマツミ「だからって、なんでカップ酒なんですか……?」
ククリ「ワテは高い酒なんぞ合わんねん! こっちの方が美味いねん! あんたもやるか?」
オオヤマツミ「いえ、お構いなく……。あのー、そのおつまみ、何なんですか?」
ククリ「メギスの一夜干しや! 安いしうまいでー! あんたも食べるか?」
オオヤマツミ「……いえ、お構いなく……(なんでこのお方はどこにでも行けるんだろう……?)」




