アマテラスオオミカミ①
シナツヒコ「……こりゃあ、珍客だ」
菅原道真「これはこれは、シナツヒコノカミ様に至っては、ご機嫌麗しく」
シナツヒコ「おう。大宰府は良いのか?」
道真「受験シーズンも終わり申したので、少々余裕も出来まして……。あ、梅ヶ枝餅をお持ち致しました」
シナツヒコ「なるほど。しかしちょっと間が悪いかもしれんな」
道真「……間が悪い、と申されますか……。しかしそれは一体どのような……?」
シナツヒコ「んー、お前はまだ『若い』神だからなぁ。あの状態を直で見るのは初めてだろうからなぁ……」
道真「よく、わかりませぬが……。とりあえず、アマテラス様にもご挨拶を……」
シナツヒコ「驚くなよ」
道真「はぁ……」
ジャリ……ジャリ……
道真「ふむ、シナツヒコ様は一体何を申されていたのか……。はて? 本宮がいつもよりやたら神々しく見えますな……。これは一体……?」
???「誰ぞ、ある」
道真「菅原道真に御座いまする。アマテラスオオミカミ様に至ってはご機嫌麗しく。拝謁仕りまする」
アマテラス「許す」
道真「……はっ(……はて?)」
アマテラス「表を上げよ」
道真「ははっ(んん~~?)」
アマテラス「よく参られた」
道真「……恐悦至極に御座います(……アマテラス様?)」
アマテラス「…………」
道真「……(なんと、神々しい……。いやしかし、これでは私が普段知る君とまるで別の……)」
アマテラス「なんぞ、ある」
道真「い、いえ。我が君におかれましては、ご機嫌麗しう御座います……」
アマテラス「それは先に聞いた。そちはわらわに何用ぞ」
道真「はっ! だ、大宰府での勤めが一段落致しまして御座います……」
アマテラス「大儀である」
道真「……(なんと美しく神々しいのか……。い、いやしかし、これでは私の知るアマテラス様とまるで別の神……。一体何が……)」
アマテラス「他に、なんぞあるか」
道真「あ、その、えー、う、梅ヶ枝餅を持参いたしました」
アマテラス「……ほう」
道真「……(所作もなんと美しい……。ただ、梅ヶ枝餅をその手に取られる所作に、見惚れてしまう……)」
アマテラス「良きものじゃ」
道真「も、もったいなきお言葉……」
アマテラス「下がってよい」
道真「……失礼仕ります」
ジャリ……ジャリ……
道真「……う、うーむ。私は一体何を見せられていたのであろうか……。普段とはまるで違う……」
シナツヒコ「おう、お疲れ。」
道真「シナツヒコ様……。あのお方は一体……」
シナツヒコ「……あれが、『アマテラスオオミカミ』だ」
道真「は、はぁ……。………いやいやいやいやいや。私の知るアマテラス様は、もっと朗らかで、活発であらせられ……」
シナツヒコ「ああ。うん。まぁ、そうだな」
道真「こ、こう言っては何ですが、先のアマテラス様は、あまりに神々しく、そして美しく……」
シナツヒコ「見た目だけは、あんまり変わってないけどな」
道真「所作も美しく高貴で……。何より神気が溢れ出しており……。その、私の知るアマテラス様とまるで違うような……」
シナツヒコ「まぁ、そうだな。こっちにこい。今ならここからよく見えるぞ」
道真「そ、それでは、失礼いたしまして……。い、いや一体アマテラス様に何があったのですか!?」
シナツヒコ「だから。あれが『アマテラスオオミカミ』の本来の状態だ」
道真「……本来の状態……ですか」
シナツヒコ「ああ。まぁでも、確かに神気はとんでもない事になってるし、言葉遣いや所作も変わってるけど、中身はおんなじだぞ」
道真「……一体、どういうことなのでしょうか?」
シナツヒコ「別に、大したことじゃない。国中にバラまいてる自分の分祀を一旦集めて神気を注ぎつつ、様々な情報を得ているんだよ。今日はたまたまその日だったんだ」
道真「さ、左様でございますか……。私が神として祀られ、初めて拝見いたしましたが……。しかし、分祀は他の神々でもやられておることですが、性格まで変わるものなのでしょうか……」
シナツヒコ「普通は無いな。アマテラスオオミカミだけが特別なんだよ。でも、根は同じだ。ほら、よく見てな」
道真「のぞき見のようでバツが悪うございますが……」
シナツヒコ「いいからいいから」
道真「では、失礼をしまして……」
アマテラス「トヨウケ。茶をもて」
トヨウケ「失礼ながら、まもなく昼餉にございます。梅ヶ枝餅は3時までお待ちくださいませ」
アマテラス「わらわは今食べたい」
トヨウケ「ダメでございます」
アマテラス「……左様か」
トヨウケ「では、昼餉の準備を致します」
アマテラス「トヨウケ」
トヨウケ「ダメでございます」
アマテラス「……まだ、何も言っておらん」
トヨウケ「ニンジンもお食べくださいませ」
アマテラス「ニンジンは苦手じゃ……」
トヨウケ「お食べくださいませ」
シナツヒコ「な。面白いだろ」
道真「えーと、これは……」
シナツヒコ「だから、中身は同じなんだよ」
道真「はぁ……。しかし、何故に言葉なども変わられるのでしょうか?」
シナツヒコ「『アマテラスオオミカミ』は別格だからな。系譜なんかも含めたら祀られる社が遥かに多い。そして、そもそもの神力が桁違いだ。普段は地上に影響が出ないように力を抑えるためには、『アマテラスオオミカミ』だけは、性格にまで影響が出るほど、神力を分けないといけないんだよ」
道真「……なんと。そのような事が……」
シナツヒコ「けど、見ただろ? 中身はあんまり変わんねぇよ。ただ、今の状態はとんでもない力を集約している状態だから、あんまり下手な事すると、世界がヤバいけどな」
道真「……トヨウケ様は、普段とお変わりが無い様子ですが……」
シナツヒコ「取り扱いが上手いからな。問題ねぇよ」
道真「まるで精密機器か何かのように申されますな……」
アマテラス「ニンジンは……」
トヨウケ「残さずお食べください」




