姫出会
「それで,ヒカリノにも手伝ってほしくて,」
フィリアはルティーナのことを話した,
「悪いな,私はもう面倒事に足を入れない,」
「でも,あの犬に加えてボスに他の敵まで考えたら,この三人じゃ無理!なんで手伝ってくれないの!ルティーナの命が危ないのに……,」
アンリはフィリアの背中を撫でた,
「ヒカリノには関係ない一件だ,メラアが犬を,俺がボスを,残りの雑魚はフィリアがやればいい,」
と言え,敵の構成すら不明なわけだが,
「そうだよね,」
その瞬間,メラアがヒカリノに土下座をした,
「全て私の責任よ,私はどうなってもいいから,ルティーナは助けて!ヒカリノ!」
ヒカリノは変わった,昔のように,面倒事に好んで突っ込む性格でなくなった,仲間を失ったから?
「私はもう何にも関与しない,私は落ちた人間だ,ルティーナって子には気の毒だが,私は降りかかる火の粉を払うだけ,それより先の戦闘はしない,」
「行くぞ,俺らだけで始末すれば済む話だ,俺がいれば,何も問題はない,」
目立たず生きていく,もう表に立ち戦うのは終わりにした,私の生存が知れれば,天使共は真っ先に消しにくる,しかし,メラアをこのまま行かせれば,あの日と同じだ,
「鈍ったな,まともな判断もできない,」
フィリアはヒカリノの前に立つ,
「ジュース奢るから,手伝って,」
「フィリア,しつこい,一刻を争ってる中,もう話してる時間はないぞ?」
「そうだよね,早く行こ,」
メラアがドラゴンを出す,
「乗ってちょうだい,」
フィリアが乗り,アンリも乗ると,メラアが最後に乗る,
「悪いわね,私のせいで,」
「もういいよ!そんなの,謝って終わり,そっからは頑張って失敗した分を取り戻す,それで解決しないような,そんな生きにくい世界にしたくない,」
「フィリア……,」
メラアは前を向くと,心を切り替えドラゴンを飛ばせた,上空からその拠点を探していた,
私が見失った場所ね,
メラアはその足跡を辿る,
「足跡は……あれだ!」
フィリアの指さす方には,巨大なホテルがあった,
「私は二人を下で降ろして,上から行くわ,挟み込んで倒すわよ,」
「おーけ!アンリもいるし,余裕だね!」
二人を下に降ろすと,メラアは一人屋上へと行く,そして屋上階段から,降りる,ドラゴンのサイズを少し小さくし,先へと進む,フィリアが言う,
「よし,入るよ,絶対に救う!」
フィリアが扉を開くと,ホテルだった,受け付けが一人,客は一人もおらず,フィリアとアンリは先へ進む,
「ここにルティーナって女の子いるよね!」
フィリアは受け付けに訊いた,受け付けに立っているのは短い茶髪の女であり,その勢いに呆気とられていた,
「このホテルは合言葉を知ってる人しか入れないよ,君たちは知ってるの?」
「知るか,」
アンリは女を氷で固めた,
「さっさと行くぞ,」
その瞬間,氷が割れた,
「ちょっと待って,合言葉をお持ちでないなら,手を上げてでも止めろって命令だから,」
アンリの氷を,
俺の氷を,
『『割った』』
「ほう,門番ってわけか,」
「邪魔しないで!」
フィリアは女に向け蹴りを入れると,その足が掴まれた,
「フィリア!」
「黒炎っ!!」
ダメだ,出ない,
フィリアの足が砂のように壊れていく,
「断罪!」
アンリ作る巨大な氷壁が女を潰した,フィリアの足を掴むその手のみが,氷壁から逃れた,
「痛い!」
フィリアはその場に倒れ,足を抑える,足首より先が消えており,血も酷く出ていた,アンリは氷で足を作り,同時に出血を止めた,
「その冷たさは痛みを紛らわす,」
「ありがと……,」
被り物の男の元へ,ティアが來た,
「エングランさま,鼠が入りました,」
モニターを見せると,そこにはフィリアとアンリが上がる様子,そしてメラアが下ってくる様子が映っていた,
「メラア……,階層を教えてくれ,」
「はい,二人の方は現在二階へ,一人の方は,一階を越え,五階まで到達しています,」
「そうか,上の方は手薄にしてたけど,まさかそれが穴になるとは,全員通してくれ,」
少しすると,被り物の男,ネラー,ティア,そして男の座る部屋に,メラアが辿り着いた,辺りを見ると,ガラスに閉じ込められている気のないルティーナを見つけた,
「その女なら,もう血は抜いたよ,僕の能力一つで,ほんとにただの女の子になっちゃうなんて,これは傑作だったね,」
「ネラー,下がってくれ,俺が相手をする,」
被り物の男,エングランは立ち上がった,
「ボスが出るまでもない,僕がけりをつける,それとも,あいつが適合者だから傷つけずにってこと?なら,尚更僕が──,」
「静かにしてくれ,」
メラアはドラゴンを更に小さくさせた,
「貴方がボスね,貴方を殺せば全てが終わる,」
エングランは立ち上がる,
「俺が死んだら,奴隷制度も消え,国民は今より不幸にならずに済む,」
「全員死んでちょうだい!最大火力よ!」
ドラゴンが巨大な炎を吐く,エングランは片手を前に出すが,そのまま炎に焼かれ被り物含んだ上半身が,少し焦げた,
今の最大火力で少し焦げる程度?どんなバリアしてるのよ,それに,何か能力を使われた?いったい何を使ったの?
「ボス,何してるの?能力を使わないって,そりゃ新しい遊びか?」
ネラーはそう軽く笑っていた,エングランは一息つくと,手を下ろした,
「メラア,」
「っ……なんで知ってるのよ!」
「俺を殺して国を救ってみろ,俺は二つ目だ,それでいて,フュテュールの結成者だ,」
「──エングラン?え……うそ……,」
二つ目……誰も知らない一番目を除いて,フュテュール最初のメンバー,そして,私も昔属してた最強のチームフュテュールの結成者……,
「ほんとなの!」
「疑う余地はないだろ,俺は神に勝利をし,一の世界へ帰らなければならない,その為に初月の能力を解くエキスを作り,皆を復活させ,再び大天使,そして神を超える!」
「貴方は昔から神に固執していたわ,神に何があるのかは分からないけど,こんな酷いことが許されるわけないでしょ!何してるのよエングラン!」
「分かってる,しかし,人間の柔らかい肌を,最も柔らかい肉をエキスとしなければ,皆は復活しない,あの日,あの後に俺が神から得た物だ,俺が人間でなくなる引き換えに,復活手段をな,」
「神に会ったの!?」
「そうだ,あの日,俺は神に会った,復活手段を得た代償に,俺は人間でしか栄養を摂取できない身体になった,その呪いの形が,この被り物だ,しかし,俺は厭わない,目的の為ならば,多くの犠牲に目を瞑る!だから,あの日,お前らに生きてることを隠し,場を去った,」
「バカじゃないの!なんで相談しないのよ!バカエングラン!」
メラアは声を荒げた,
「しても解決しないからだ,それに,そこまで冷淡に人を殺せるのは俺くらいだ,生き残りの三人は把握してた,だからこそ去ったんだ,」
「エングラン……,」