戌対竜
その瞬間,アンリとフィリアを残した全ての人間が氷に固められた,
「黒炎出ないのか?」
「……うん,なんでだろう,」
「何か条件があるか,練度が必要なのか,何にせよ,それを出せるまでは俺が守ってやる,」
「そんなことしなくても自分で戦えるから!」
釣れない女だ,
金髪の男が氷を割った,
「やれやれ,私を置いて会話をするな,それより,黒炎と聞こえたが,いや,それは置いとくか,面倒な能力者がいるのなら仕方ない,私は引くとするよ,」
その瞬間,氷で場が囲われた,
「二つ,人間買取屋の位置,そして知るなら,メラアの居場所も教えてもらう,話しても,お前に不利益はないだろ?」
「もちろん問題はないが,メラアについては私も知らない,名くらいは知ってるが,奴隷屋は向こうに行けば,明らかに目立つ建物がある,大きいな,私はメテンス,仕事の都合でメラアと対面したことはあるが,化け物だった,アホみたいに長い赤髪をした女だ,見れば分かる,たしかに話した,」
全ての氷が溶けた,そして,メテンス含む全員は引いていった,
「アンリすごい!なんかきれいな手順!」
「ちょっと良く分からないが,奴隷屋って物騒な店名の場所と,メラアの特徴が訊けた,先に行くのは奴隷屋だ,」
メラアはルティーナを箱に入れ,道を歩いていた,ルティーナはメラアにされた話を思い出していた,
『攫った理由は別にもあるけれど,私的にも利用させてもらう,貴方を奴隷屋で売るわ,』
『う……いやだ……,』
『冗談よ,売るふりをして,奴隷屋のトップ,私が睨むに,そいつが国全ての権力,財力を動かしてる,そいつは大物が売られると顔を出すらしいのよ,方式は競りらしいけれど,おそらくルティーナレベルなら,そいつが客として参加してるはずよ,』
『そんな危険な役……,』
『大丈夫,信頼して,なんなら,向こうに買い取られて情報収集,なんてのもいいけれど,さすがに可哀想よね,』
奴隷屋にて,ルティーナは売られた,フィリア,アンリ,も到着をすると,人は既に物凄く集まっていた,売られた人間はすぐに競りに出され,それを待っている富裕層や他国人で溢れかえる,
「アンリ,お金ないけど,どうする?」
「競り落としたやつから奪い取る,手っ取り早いだろ?だから,そいつの顔は覚えておく必要がある,」
会話を終えると,二人は中へと入っていく,入ると受け付けがあり,奥に長い廊下,その奥が会場と看板に書かれていた,
「三十分後,ルティーナ,ジャストフィット,」
ルティーナも既に貼られており,人目は集まっていた,それだけ人気の証拠であり,落とすハードルも高い,
「ルティーナ!こんな酷いこと,許さない!」
ルティーナは風呂へ入っていた,
私の刀で壁切れば逃げれるけど,どうしよう,でも,これが成功すれば,奴隷制度,格差社会は全て崩れる,いいや,協力しよ,
フィリアとアンリは席へと着く,既に別の競りの最中であり,その時を待っていた,
「2473さんに決まりました!」
終わった,さて,あとはルティーナを誰が買うか,
ルティーナが舞台へと出された,
「こちら,今年一の美女,まるで静かな人形のようで,まさに理想の奴隷!値段上げてってください!」
「五億」
「五億!いきなり五億でました!」
その声がする方へ顔を向けると,そこには赤く長い髪をした女が足を組み座っていた,フィリアたちと席はそう離れてはいない,
「あれだよね?メラアって人,」
「おそらく,そして,そのメラアが何故にルティーナを欲しているか,いや,あいつが競り落とせば分かる話だ,」
「よし!メラアが落としたら,ルティーナを取り返すついでに,例の男を知れるかもしれない,」
「一石二鳥だ,」
「十億」
「十億でました!」
十億と札を上げていたのは,首辺りまで伸びる黒い髪に犬耳をつけ,褐色肌の青年だった,こちらも足を組んでおり,余裕そうにミルクを飲んでいた,目つきは鋭く,鋭い牙をしていた,
そろそろ出てきてくれないかしら,黒幕,
「三十よ,」
「三十きた!一気に上がったぞ!」
メラアがそう言い放つ瞬間,会場から人は多く去っていく,そして勝機のある者だけが残る,残りは二十人いるかどうか,
「三十五億」
老爺が話す,
「五十」
「五十!現在,今年三番目の金額です!」
すぐに青年が塗り替えた,それを聞くと,すぐに帰る者が出,残りは五人ほどになっていた,
「六十よ,」
「六十!今年二番目の金額が確定しました,」
出せるのは七十まで,
「六十三億じゃ,」
「七十」
老爺は立ち上がり,その場を去っていく,
あいつが黒だわね,いいえ,チェックは必要よ,
「千億,」
確実に上書きしてくるはずよ,
「三千億,」
確定,こんな若いのが黒だなんて,
「三千億ッ!!過去最高金額!さて,もういいですか?決まりますよ?」
進行の女は笛を吹いた,
「決まりです!そちらの青年が競り勝ちました!!三千ッ億ですっ!」
青年は帰路を歩いていた,箱にはルティーナが縛り詰められており,その後をフィリア,アンリ,そしてメラアが追っていた,
こうなれば,力で奪うまでよ,そりゃ,護送馬車なんて使わないわよね,手元に置かないのは,余計に危険だもの,
「アンリ!もう無理!私,あいつを倒してくる!」
「落ち着け,」
その時,青年の上空から物凄い勢いで何かが落ち,その場に大きく穴が開く,青年は横に避けていた,穴につっこんでいたのは生き物であり,その生き物は消えた,
「あら,少しは動けるらしいわね,」
メラアが青年と向き合っていた,メラアの背後には全長五メートル程のドラゴンがおり,羽で飛んでいた,
「そのドラゴン,噂に聞くメラアか,僕に何か用……,いや,愚問だったね,」
「理解しているのなら,渡したほうがいいわよ?それとも,知らないとは言わないわよね?私の実力を,」
青年は溜息を吐いた,
「僕は仕事中なわけ,それに,僕の仕事はこれをボスへ届けること,用はない,」
思い切り地を蹴ると,道が割れコンクリートが空を舞った,それを目眩ましに,青年は逃げようとするが,その目の前にフィリアがいた,
「それは置いていって,私から逃げるのは不可能だよ,」
「それは分からないよ?」
青年がフィリアを蹴ろうとする瞬間,間に氷が作られた,その間にフィリアは少し距離を取る,青年の後ろからはドラゴンの放つ炎が迫っていた,
「っと,危ない,」
それを上に避けると,下からは氷が尖り,物凄い速度で何本も生え,上からはドラゴンが向かってきていた,
三人はキツイね,
その氷の尖っていない部分を蹴り上げ,その勢いを使い下の方へと一瞬で移動する,その場所では,フィリアが待機しており,その拳をぶつけようとした,その瞬間,フィリアは止まった,
「賢明だ,その程度,通らないのは分かるだろ?」
能力が悟られた,
「それじゃ,さよなら,」
青年は物凄い速度で走っていく,メラアが追い,二人は全く追える速度でなかった,
「俺は足に自信がなくてな,」
「私は行くから!」
フィリアはその背中を追っていく,
なら俺も走るか,
アンリが走り出すと,フィリアはすぐに抜かされた,
「速い!」
少し進むと,メラアが立ち止まっていた,
「メラア!何があったの?」
名前を知ってる?有名になったものね,
「見失ったわ,あいつは,私じゃ追えない,これは私の責任よ,方向は向こう,必ず助けるわ,」
「メラアって,ルティーナと知り合いなの?」
「ええっと……そうね,」






