三人旅
三人は地下通路を進んでいた,
「ありがとう!助かったよ!」
「気にするな,それより,その子は俺が運んでやる,お前も死にそうなんだろ?」
フィリアの身体は少し焦げていた,
この人に任せていいの?ルティーナに変なことしないよね?いや,すると思う,
「ありがとね,でも大丈夫,」
「それは残念だ,」
残念って言った?言ったよね?え……,こいつ,
「名乗る,俺はアンリ,地下は今の家みたいなもんだ,それで,何処に向かうつもりだ?オススメは西門,近いから,追手に追いつかれず済む,」
「北門,」
「案内はするが,推奨はしない,北門の方には,他国との物流施設がある,人混みや隣国への馬車に上手く隠れれれば安泰だが,相手が余程のアホでない限り,北門は最も敵が配置されてるはずだ,」
「そんな……北に行きたいのに!」
「分かった,裏道を明かそう,」
「え,ほんとに?ありがとう!」
アンリはニヤけていた,
お礼を言われた,女の子に,幸せ,
「気が出てきた,最終目的地は何処だ?」
「北門を出て,一つ国を跨いだ場所,」
「了解,セーヌ国か,あれは人間を中心に回ってる国の反面,人身売買が盛んだ,」
「やっぱ,怖いね……,そういうの,」
長く進むと,外が見えた,
「外だ!」
「出ても何もないけどな,」
出ると,かなり汚れた川,その奥に森が見えた,アンリは能力を使い,そこに氷の橋を掛けた,
「道は氷で補って進む,この森を抜けると,国を一つも挟まずセーヌ国へ行ける,」
「え,なんで?」
フィリアは首を傾げた,
なんと可愛のいい,嫁決定だ,
「この森は長いからな,国一つ分くらいのサイズはある,しかし長い森で何日かを過ごすことになる,ま,問題ないだろ?」
「もちろん!」
勝利!この逃げられない森という空間に來たら,もう落とすまで帰さない!追い風だ,
進み森へと入っていく,暗い中目は慣れており,スムーズに進行をしていく,
「そうだ,知ってたか?」
「なにを?」
「大天使会議と言って,全四大天使が,四つの大陸,その中央に位置する施設で行われる会議だ,そこでは,大天使同士の情報共有や,神への報告内容が決められる,今後について,危険人物……そして,生贄の三大報告,」
「生贄ってのは……?」
「神に捧げる生贄だ,若い女限定で,生贄になり戻ってきた者はいない,その末路を知る者もいない,」
「そうなんだ……でも,急になんで,そんな話を?」
アンリは立ち止まった,合わせ,フィリアも立ち止まる,
「今年の生贄は,俺の幼馴染に決まった,」
フィリアは眉を顰め,息を呑んだ,
「アンリ……,」
「そんな顔をするな,本來ならデルタが国を出るとこ取り戻す予定だったが,話が変わった,北門の方向,それこそが会議へ行く道,ここまで來たら,直接倒しに行く,」
私の力が信用されてるからこそ話した,話すってことは手伝ってほしいんだよね,たぶん,一人で無理なことは分かってるんだよね,
「いいよ,その日が分からないけど,私も手伝う,」
「いや,いい,巻き込む訳にはいかない,」
こいつメンドッ!
「さっき助けてもらった恩もあるし,返させて,それに,大天使が集うなら好都合,私はあいつらを許さない!」
ルティーナをいいように利用したのは許せない,だけど,それ以上に何故か許せない怒りが存在してる,
「ほんとに悪いな,あいつは俺にとって,幻想なんだ,俺は凄くクズだから,こんな考えしか浮かばないが,あいつが生贄になって……,」
「アンリ?」
「なんでもない,」
それから夕方へと進んだ,ルティーナが目を覚ます,
「フィリア……?」
「ルティーナ!起きた!」
ルティーナは何かを思い出したよう,フィリアの手から慌てて降り,距離を取った,
「何してるの?私は裏切ったんだよ?フィリアの行動や作戦を漏らしてたんだよ……,あのまま,死にたかった,アイリアもいないし,もう私に生きる理由なんてない,」
「誰もあれを裏切りなんて思わない,生きる理由もなければ,死ぬ理由もない,なら生きてよ,死ぬのは簡単だけど,人間生き返れない,」
なんて私が言うのは変だよね,自害して,なんか転生した私が言うのは,
「それか,アンリの嫁になる?そしたら生きる理由になるでしょ?」
ここで俺に振るか,もちろん,可愛い子なら問題はない,可能なら年下で,そして胸のない……うーん,二人とも当てはまってる,結婚しよう,
「分かった,アンリが誰か分からないけど,いいよ,フィリアが言うなら,結婚する,」
「まじ?」
「あなたがアンリ?」
「そうだが,」
まずい,俺はあいつ一筋って誓ったのに,ふつう結婚なんてできると思わないし,冗談混じりだったが……,どうする,ここで結婚すれば素晴らしい未來は約束される,しかし,遠くに行った,あいつを……ずっと追いかけてきた幻想を……全ての俺を裏切ることになる,
「あれ,アンリってもしかして,ルティーナはタイプじゃないの?あんなに抱っこしたがってたのに,」
「え……だ,抱っこ?」
ルティーナは顔を赤くした,
まずい,幻想が壊れる,
「すまないが,無理だ,」
「なんで!!?」
フィリアは目が飛び出ていた,
「他に結婚したいやつがいるからだ,」
「アンリ……!」
「別に想い人がいようと,他の女の身体を隅々まで触るくらいは可能,ルティーナ,今夜頂くのは,お前だ,」
「キモい……,」
ルティーナがそう言うと,少し固まる,そして再び歩き出す,