犬日既
二人はその開かれていた門を越えた。その瞬間、物凄く重いオーラがのしかかる
「何よこれ……」
「まさか、私が圧倒される側になるとは」
アンリは一息つく。そして手には氷剣を持ち、構えた。アヌビスはその巨大な身体に合わせて、長い手も持ち合わせていた
「「和夜が理不尽を与える!」」
アヌビスはその十メートルほどの先の尖る長い腕を、アンリの方へと突いた
巨大になって動きも鈍くなったか。さっきより少し見やすい、いや、今の俺なら完全に見える
その瞬間、手の先端が消えた。それと同時に、アンリの首にその先端が刺さり、アンリの顔は前へと落ちた
空間と空間の間に間を作り、瞬間移動するよう見せたという話か。ここで死ぬか……マヨネーズと結婚したかったぜ、俺の青春、ラブメモリー
その場に広がる氷が一斉に割れた。フィリアが集中している中、その割れる氷を目にしたのは陰から見守るルティーナだけだった
アンリ……死んだの……死んだ?アンリが死ぬわけない……あのアンリが……死ぬなんてありえない。フィリアは気づいてない。アンリが死んだ?
ルティーナの目からは涙が溢れていた
アンリ……ありがとう。変なやつだったけど、やるときはやる、ちゃんとカッコいい人間だったよ
ミハネとサカツキは、あれからすぐに走り、アヌビスの元へ辿り着いた
「ミハネ、お前は囮だ」
「喜んで!元々、お姉ちゃんを隠すのが私の役目だし、任せて!」
「死ぬなよ」
「もちろん!」
アヌビスはその飛ばされた端の方から、終焉の中央へと向かっていた。中央にはフィリアたちがいる。それの前にミハネが立ち塞がる
「こんにちは、紙さま」
「「熟した時期だ。そうそう、和夜は種から作るんだけど、こう美しく熟してると嬉しい話だよね」」
「わるいけど、私お姉ちゃんの嫁にしかなれない!」
「「和夜たち神を前に、そんな話が通用するか?和夜たちが創造をし、和夜たちが設定もした」」
サカツキは気配を消しつつ瞬間移動をし、背後から近づいていく
「クロノスは自らで死を選んだらしい。ルールを守らず、この神の力を使っていれば……いや、奴は飽きたのか。この全てに」
「そうだ、紙さまくんさ、私と追いかけっこしようよ。私、足には自信があるからさ」
何か企み?しかし和夜には通用しない
ミハネは瞬間移動をし、全力で走る。アヌビスはその巨体で真後ろへ瞬間移動をし、追いついた瞬間、それは発動されていた。ここに来るまでミハネが仕掛けたトラップ
ゼウスのやつ……人間にこんな能力を?やりすぎだ。明らかに、人間の持っていい力じゃない
アヌビスは咄嗟に後ろへ下がると、既にサカツキが背に触れていた
「眠ってろ」
アヌビスはその場から消えた
神を再構築か。しない、破壊する
ここは……取り込まれた?動けない……こんな能力は知らないな。まさか、ゼウスのやつ……新しい能力を人間に与えていた?ふざけるな!なら和夜はあいつに殺されたようなものじゃないか!クロノスに和夜が消え、世界が崩壊……いや、それがゼウスの望みか?
アヌビスの身体は破壊されていく。身体が粉々に溶けてゆく
崩壊するのか……受け入れよう。和夜らの時代は終わりだと、そうゼウスのやつが言ったも同然。全て……全て終わり
六人組も神の地の門へ辿り着いた。メラア、ルミアは二人、その建物の中を歩き、最上階まで来ていた。大きな扉が一つ、周りは霧が立っており、足が冷えた
「寒いわね、ここ」
「空高い地にいますから」
メラアは扉を蹴り開けた。その先には一つ大きな部屋があり、一つの棺桶が置いてあった
「何よこれ」
メラアが開こうとすると、女の声が聞こえた
「その中に在るのは幻妖への片道だ」
気がつくと、部屋の壁が消えており、その雲の中に巨大な人型の光が座っていた。どこか黒いオーラも纏っており、二人の身体は酷く震えていた
「何……よアレは」
「化け物ですね」
声が二人の頭に響く
「名はゼウス」
「ゼウス……神じゃない……」
「けれど戦闘の意思はなさそうですね」
ゼウスは人型から、一つの巨大な光へ変わる
「その箱の先には、全てがある。他世界へも行ければ、生命を生成するレシピもある。それこそが全て。しかし入れば戻れなく、結末は保証しない。勇気あるなら進むといい」
「ええ、なら入るわよ!」
「待ってください、明らかに罠です」
「そんなこと……ありそうね」




