駒出陣
この命を枯らす,地獄に留まるのは嫌だ!
その日,少女は自害をした──,
視界は暗く,その男の声だけがした,
「炎を灯す,君を百の世界に誕生させ,その後に君を見届ける,最悪を打ち砕いて見せろ,」
目を開くと,その何人もの人間が働く地下,フィリアはスコップで穴を掘っていた,赤眼の少女であり,髪も先まで赤く首まで伸びる,
《ニュースです,今年は,我が国の姫に決定されました,ついに今年も,その日が迫っています,》
ラジオが切れた,フィリアの前には丸刈りの巨漢が立っており,背丈は二メートルを軽く持つ,
「フィリア!何休んでる!しっかりと掘らねえと,どうなるか分かってるだろ?」
知らないよ,そんなの……てか,急に何?此処は何処?なんで穴なんて掘ってるの?土まみれだし,ほんと最悪う,
「それで,どうなるの,掘らないと,」
男は驚いた表情だった,
「疲労で狂ったか?天使さまの指示に逆えば,殺され死体は一生晒しもの,中学で習ったことだ,」
「フィリア,大丈夫?」
そう声を掛け近づいた,濃い紫の目,同色の長い髪をツインテールにした少女,年齢はフィリアと同じ高校生くらいであるが,その雰囲気は何か落ち着かない様子だった,
「えっと……誰?」
少女は眉を顰め驚く様子を見せた,
「ルティーナ,ルティーナ,何かの冗談だよね?それとも,記憶をなくしたの?」
もしかして,転生した……だよね,私が歩けるなんておかしい話だよね,え,歩けてる?
フィリアは膝を上下に動かす,
「足が動く,ほんとに動かせる,」
「ねえ,フィリア,ほんとに──,」
「早く仕事に戻れ!天使さまが帰られる,」
「だから,仕事って──,」
「いいから穴を掘れ!早く!」
フィリア,ルティーナは穴をスコップを手に穴を掘る,フィリアは背中に,地下へと足を踏み入れる恐ろしい雰囲気を感じていた,男は冷や汗を酷く出し,後ろを向く,そこには──,
「かなり進みましたね,」
美しい女の声だった,
「はい,ありがとうございます,」
「しかし,デルタさまの予定だと,明日に開通を終えれるはずですが,かなり残ってるように見えます,」
「全力を尽くしましたが,人の手には,これが限界です,そもそも,この人数で,それも一週だけで三百メートルなど,不可能に近いです,一度,そのことをデルタさまに通しては頂けないでしょうか?」
その瞬間,女が男を蹴り飛ばした,十メートルほどの深い穴が男の背により開かれ,場はざわめいていた,
「少しの手伝いです,デルタさまに良い報告をできないのは,側近の私としても望まないことですから,」
何……あんなに人って飛ぶの?
フィリアは女の胸ぐらを掴んだ,
「おまえが天使,つまり,おまえら倒せば全て終わる!ってことでいいんだよね!」
その天使は首辺りまで伸びる美しい銀髪をしており,純白の瞳,この世界の人間とは雰囲気がまるで違った,その瞬間,ルティーナはフィリアの顔を殴った,フィリアはその掴む手が離れた,
「った,何するの?」
ルティーナは女に土下座をした,そして,震える声で話す,
「わ……私がフィリアには強く言っておきます,だから,命は助けてください,ごめんなさい,天使さま……,」
「ルティーナ,こんなやつ倒せばいい,天使なんているわけない,どうせただの人間だし,仮にいたとしても,恐怖に値しないようなクズ共だよ!」
「フィリア,逆らったら,殺されるんだよ?これ以上,友達が消えちゃうのは嫌だよ」
その目は震えながらも大きく開いており,本気だった,フィリアも,その目を見ていると,この人たちにとっての天使というものが,少し実感できた,
「なら,アホエンジェルの相手を私がする,人にこんな顔をさせる奴が,上に立ってのうのうと生きてていいわけがないからね,」
「フィリア……,」
女は軽く笑った,
「それでは,チェックしましょう,私はルミアと申します,いいですよ,なら,もし私に触れれたら,私が貴方の下僕になります,」
「何言ってるの?触れるって,舐めすぎだよ,」
フィリアは右手を前に出し,勢いよく走る,ルミアは避ける気配もない,
なんで動かないの?あの余裕のある表情は何?このまま触れたら,終わり,
フィリアが触れようとした瞬間,二人の間には何か壁のような透明の物があった,
「えっ……?」
フィリアは手を押し込むが,壁より奥に手は届かない,
「なんで!こんなもの,私なら……,」
フィリアの自信と,それから成る威勢は完全に消えた,後ろへ体勢を崩すとすぐ,尻もちをついた,そのルミアの恐怖から遠ざかるよう,後ろへと下がる,
なんで全く通用しなかったの……そんなことって,
「話になりません,それでは,中天使にすら勝てませんね,出直してきて下さい,弱い人間さん,」
「ふざけるなよ!私が弱いなんて……,」
フィリアは,その場に一人,動けずに固まっていた,ルミアの後ろ姿を見ながら,フィリアは地に手をついた時に作られた小さな傷を見ていると,すぐに治癒した,
「何……これ」
「大丈夫?フィリア」
ルティーナは心配そうに駆け寄った,
「ごめん,手も足も出なかった,」
「殺さないで貰えただけ,奇跡,ほんとに良かった,」