005 『カーディア古代遺跡』
翌日の早朝、私は伯爵家から支援された物資を馬車に運ぶ作業に、同じく騎士見習いのルークと他数名でいそしんでいた。
持っていた荷物を馬車に置き、頬に流れた汗を拭う。
現在、私達遠征部隊はバルバトス伯爵への挨拶が済み、伯爵が用意してくれた食料等の消耗品を馬車に運ぶ作業している。
伯爵への挨拶は慣習によるところが多いと思うが、伯爵家で物資を貰い道中の手間を省くという意味があるのかもしれない。
(まあそれなら直接運んでおいてくれって感じだけど)
心の中で不満を抱きながらも黙々と物資を運んで行く。ちらりと一緒に荷運びを任されていたルークのほうをみると、どうやら落としたらまずいものを運んでいるようだ。顔が真面目になっているから分かる。
ルークが運んでいるものが気になり、隣に駆け寄り中身を覗き見る。
中に入ったいたのは、青色の水が入った瓶と、緑色の水が入った水だった。
見たところ色味的に毒薬にしか見えないがそんなものを運んでいるわけないので、ルークに聞いてみる。
「ルーク、これ何?毒薬?ノイン団長でも毒殺するの?」
「違うわ!青いほうが魔力回復用ポーションで緑が怪我を直すようのポーションだ!というかお前緑の方は救護所の手伝いとかしてたんだから知ってんだろ!?」
「だって包帯とかの備品を運んだりとか、そういう雑用がメインだったし……」
「でもアリスって結構勉強してるから知ってそうだけど、なんで知らないんだよ?お前魔術についても調べてたじゃん」
「実際に見たことがなかったんだよ。挿絵とかもなかったし、というかよく知ってるな君。馬鹿なのに」
「最後の言葉はいらないだろ!?」
「はっはっはっ」
「笑ってごまかそうとするな!」
何かをわめいているルークを無視して、今疑問に思ったことについて考える。
(というかポーションとか魔術とか、前世でゴリゴリの機械いじりしてた身からすると本当に不思議現象だね。魔術は私まだ使えないから、魔力ってどういうものなのかも分からないし)
そうこの世界、魔術というものがあるのだ。
魔術というのは体内にある魔力という力を使い、様々な現状を起こすことができるものだ。
魔術にはおおまかなの分類があり、属性や特性ごとに分けられている。
基本属性の《火》・《水》・《風》・《土》・《雷》。これらは五大属性と呼ばれ、大体の人がこれらの属性が得意不得意を見つけ、一つを極めるらしい。雷と風が別なのは謎である。
だが魔術には特殊な分類があり、それが《光》・《闇》・《空間》の3属性だ。これらの四属性は適正があるものが非常に少なく、そして非常に有用な魔術が多く、貴重な存在らしい。
例えば、魔術にはと《火魔術》というものがある。これは文字通り《火》の属性を扱うことができる魔術だ。手から火で形成した矢を放ったり、火球を飛ばしたりできる。
私は始めた聞いたときは前世の経験の影響で「?????」と頭に浮かんだものの、実際みせてもらうとそのままだった。私は受け入れた。諦めたともいう。
もう一つ例を挙げるとすらなら《身体強化》だ。
これは厳密にいうと魔術ではないらしいが、体内にある魔力で体を強化する魔術らしい。身体強化の度合いによるが、団長の場合は酔った騎士が絡んできたときにデコピンで10mほど飛んで行った。酔った騎士はピンピンしてた。咄嗟に身体強化したらしい。人間って凄いなって思ったよ。
因みに私はまだ魔術を使えない。魔術を使うには10歳の時に、魔力を認識するために神殿に行く必要があるらしいが、その儀式が行われるのは半年に一回しかないので私はまだ受けられていない。
話を聞く限り魔術は結構自由が利くらしいので実験したい気持ちは山々なのだが……
ついでにいうと魔術を物に込めるという実験で生まれたのがポーションや、魔剣などの魔力のこもった武具らしい。
(っていま考えるの事じゃないね)
「おい!聞いてるのか!?」
といいながら顔を覗き込んできた。何故かイラっとしたので割と強めにチョップを脳天に叩きこむ。
「いってぇえ!?」
と言いながら悶絶するルークを放置し、備品を馬車に運び始めるのだった
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カーディア古代遺跡に到着すると団長が指示を出し始めた。
馬車から騎士たちが降り、それぞれが自分の役割を全うするため散り散りになる。
私もいつもと指示が変わらないことを確認し、移動しようとすると後ろから肩を捕まれ引き止められた。
振り返ると変なものを見る目で私の肩を掴むルークの姿があった。
「アリスはこっちだろ」
「あ、そうだった。いや長年の癖が……」
と腰を叩きながら答えるとすると「ゆうて4年くらいだろうが」と正論を言われた。
「ルークに正論を言われるとなんか納得いかないね?」
「なんでだよ!?」
とひと悶着があったが、予定通り間引きというなの掃討が始まった。
(さて、どんなところだろうな)
少しわくわくとした気持ちを抱きながら、私は地下遺跡であるカーディア古代遺跡に入ったのだった。
遺跡の雰囲気はマイクラの寺院。なお中身。