004 『遠征』
幼少期はホントに見せ場がないので、飛びます。
あれから5年たった。
あの後判明したことだが、イケメン君はノインというらしい。性は言ってくれなかった、あの顔は絶対何か企んでる。間違いない。
現在、私は王都にある三つある騎士団のうちの一つ、第三騎士団の宿舎の雑用係として雇ってもらっている。
どうやらこの世界は、子供は小さいうちから下積みをするらしい。どうやら貴族用の学校はあるようだが、そこに通うのも十五歳かららしく、貴族の子供たちは家に家庭教師を招いたりするらしい。
(まあ、この文化レベルならそのくらいなのかな。というか前世はで学校に通えたのが十五だしね……)
とこのような感じで騎士志望の私は、騎士団の雑用をこなしながら、その合間に勉学に励んだり訓練場で訓練している騎士に稽古を手伝ってもらうといったりという毎日になったりしている。
勿論、それだけをやっていたわけではない。
この国にはダンジョンと呼ばれる遥か昔に失われた古代遺跡や、魔境と呼ばれる危険地帯が六つ、存在する。国外を探せば他にもあるが今はその話ではないので割愛する。
問題は、この古代遺跡や魔境は、放置すると魔獣や魔物といったものや魔境から溢れ出してくることだ。
そのため、三つの騎士団で二つずつ遺跡や魔境を受け持ち、定期的に遺跡や魔境内の掃討を行い、魔物たちが溢れ出さないようにしている。
私が所属している第三騎士団は、国内にある遺跡二つと魔境4つの内、遺跡と魔境を一つずつ管理しており、その両方が王都から離れた場所にあるので半年に一回、交互に掃討を行っている。
私は毎回、遺跡や魔境の入り口に設置してある、怪我をして離脱した騎士たちを救護する場所を手伝っていたのだ。
(だが、今回は違う!)
そう、ついに、遺跡内に入る許可を騎士団長が出してくれたのだ。ちなみに騎士団長とは仮称イケメン君のことである。
名前はノインで、ついでのように騎士団長と言われたときは私は間抜けな顔をしていたと思う。笑ったノインの脛は蹴り飛ばした。脛当てがあったからこっちが痛めただけだったが。
「明日はいよいよ突入だ。早めにねよーっと」
私はいつもより勉強を早めに終え、ロウソクの火を消し、寝床についた。
++++++
翌日、予定通り遠征が始まった。
ノイン団長から許可を貰えた時から楽しみにしていた今回の遠征だが、私はとても不機嫌になっていた。何故かって?それは
「オイ大丈夫か?めっちゃほっぺた膨れてんぞ!」
「気遣うなら背中バシバシ叩くのやめて……」
このデリカシーのかけらも分かってないクソガキはルーク。私と同時期に入ってきた、同じ騎士見習いだ。私のの二つ上の十二歳。
こいつは私と違って普通の平民の出で、騎士に憧れて家族に後押しをうけてここに来たらしい。しかもこいつ中々にいい顔面をしているから腹が立つ。
成長したら絶対女の敵になるタイプのチャラい顔面だ、間違いない。まあ話してみるとただの年相応の性格だったが。おい肩を組もうとするなダルがらみやめろ!
肩を組もうとしてきた手を素早く払いのけ、右隣を歩いているルークをみて批判の念を込めて睨む。私もこの年にしては高いので年上のルークと目線はほとんど同じだ。
私が睨むとまずい思ったのか弁明し始める。まあ大方、自分がやりすぎたときに、私がお灸を据えた時のことでも思い出しているのだろう。
「いやさ、なんか「めんどくせー」っていう空気が溢れ出してから……」
頭を掻きながら言うルーク。
「……まあ当たってるけど」
(なんか癪だ)
という言葉は飲み込み押し黙る。
はぁーと息を吐き、面倒と感じながらも説明する。
「バルバトス伯爵の屋敷にわざわざ行って挨拶って、毎回思うがこれに丸一日かけるのってすごく無駄に感じちゃってね」
「あー確かに。でも昔からの慣習なんだろ?仕方ないんじゃないか?」
「そうだけどさ、この前から楽しみしてたからなんだかなと思ってね……」
そう、現在私達第三騎士団の遠征部隊は、東に位置するバルバトス伯爵領内にあるカーディア古代遺跡に向かっている。
というわけではなく、バルバトス伯爵に挨拶するためその屋敷に向かっているのだ。
まあまあと宥めてくるルークから、ふんっと鼻を鳴らしながら正面を向き目線をそらす。
今回遠征に行く人数は遺跡内に入り間引きをするのが約百五十人。入口付近で救護などをする役割の人間が約八十人の計二百三十人ほどの部隊だ。
王都にはもっと騎士がいるが、騎士団の仕事は王都内にもあることに加え、魔境であればこれの数倍は必要だが、遺跡内がいくら広いとはいえ、人数が多すぎると動きずらいのでこのくらいの人数となっている。
遠征は、数日をかけて目標地点に数日かけて向かい、遺跡や魔境内にて2日間の掃討を行い、また数日かけ王都に戻るというのが恒例である。勿論、今回も例に漏れることなく同じような日程になっている。
日を見ると、そろそろ真上に上がっていた。今は二日目なのでそろそろ街の陰が見えてくるころだろう。
ちらりとルークのほうを盗み見ると、先ほどあしらわれたの聞いたのか少ししょんぼりとしているようだ。
淡い赤の髪、子供の幼い顔立ちで誤魔化されているが鋭い顔立ち、身長はほとんど同じだがやつのほうが高い上にガタイもいい、おそらくだが近い将来背はの大きさもさらに突き放されるかも知れない。まあいまは何故か犬耳としっぽが垂れた姿が見えるが。
こんなんでも私の友達なのだ、あとついでに剣もうまいので元気を出してもらおう。
落ち込んでいるルークの肩を叩きこっちを向かせる。
「ほら、ついたらこっそりノイン団長からパクってきたお菓子あげるから元気出しなって」
「元気がなくなったのはアリスのせい……ってお前大丈夫なのかそれ!?」
「へーきなのだよ少年」
「そのニヤついた顔やめろ!あとお前昔から急に年上面し始めるよな!?」
「ナンノコトカワカラナイナー」
「急に棒読みになるなし……ってお前ポケットに菓子をねじ込むな!?さては罪を擦り付ける気だな!」
「いや共犯になってもらう」
「道連れかよ!?」
(なんかうるさいが、元気が出たからみたいだからよし!)
横で抗議の声を上げてるルークは無視しながら、私は満足そうな顔でノイン団長からパクった菓子をほおばるのだった。
後日、指導係の教官に説教を数時間永遠と説かれたのは言うまでもない。
ルークとの掛け合いもいつか書きたいですねぇ!!!(音圧