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幕間 『騎士見習い二人組』 下


「おい見習いどもぉ!起きて早く整列しやがれ!てめぇらは時間を守ることもできないのか!!」

「うわあっ!?」


 翌日、時刻は早朝の5時。第3騎士団の寮内に響き渡る怒声で俺は飛び起きた


 隣のベットのほうを見るとアリスは既に着替えていて、机に向かって昨日会った時と同じように、机の上に棒を走らせていた


 だが昨日とは違い、たまに手を止めて何かをブツブツと呟いている。はっきりいって怖い


 ――だけどあの棒がなんなのか凄く聞いてみたい


「ってなんで起こしてくれなかったんだよ!!」

「……」

「おーい」

「……」

「あーりーすー!!」

「……」

「また無視かよ!!」

「……」

「もういい!!」


 何回か声をかけても全く反応がないので、俺はアリスを放置して急いで着替えることにした


 部屋の角のほうに置いてある棚の引き出しを引き、中から服を乱暴に引っ張り出し、昨日から着ていた服を投げ捨てて、騎士団がくれた新しい服を着ていく


 初めて着る服だから少し大変だったが、なんとか着ることができた


 アリスがいうには、これは騎士見習い用のセイフクってやつらしい。アリスはこれが嫌いらしいが俺は気に入った。勿論かっこいいからだ!


 俺が鏡の前で色々なポーズをとったりして遊んでいると


「ルーク起きてたの?起きたんだったら声をかけてよ」


 アリスがジトっとした目をしながらそう声をかけてきた


「声をかけても反応しなかったのはお前だろ!!」


 俺は先ほどのことを思い出し叫んだ


 アリスは思い当たることがあったのか、「あ」と声を出した


 するとさっきまでとは打って変わって、目を細め「ふっ」と笑い、何故にキリっとした顔で話し始めた


「君の声は私に聞こえなかった。つまり!私に聞こえるように言わなかった君が悪い!!」

「ぐぬぬ……納得できねえ」

「おい貴様らぁ!!いつまで遊んでいるつもりだぁ!?」

「あれもうそんな時間?」


 俺が必死にこいつを言い負かす方法を考えていると、扉が勢いよく開き、俺達が着ている服と同じような服を着た、帽子を被った顔の怖いおっさんが怒鳴り込んできた

 

 部屋の中を見回しアリスに対して目線がいくと、さっきから怖かった顔が鬼人族(オーガ)みたいな恐ろしい顔になった。


「えっと教官。これには深いわけが……」


 部屋に入るなりそんなアリスに向かって一直線に歩いていくキョウカン


 そしてアリスの前に着くなり、その頭を片手で鷲掴みにした


「あいたたたたた!!!」


 涙目になりながら手足をバタつかせ抜け出そうとするアリス


「アリス、これで何回目だ?」

「8、8回目であります!!」

「違う!!16回目だ!!何度言わせれば分かるのだ貴様は!!」


 キョウカンは抵抗するアリスを逃がさないように、いっそうと力を入れながら睨みつけている


 するとアリスは何かを思い出したかのようにこちらを振り返りこういった


「いやこれはそこのルークが悪いんですぅ」

「む。ルーク、それは本当か?」


 そう言いながら首だけをこちらに向かせ睨むキョウカン。


 アリスは俺を見つめて何かを言おうとしていた。そして俺はアリスににやりとした笑顔を向けると、こう言い放った。


「俺はアリスに声をかけても無視されました!!」

「うえええええええ!?」

「そんなことだろうとだとは思っていたが……」


 俺がそう答えると、キョウカンはため息を吐く。アリスは完全に諦めてるみたいだ


「アリス、貴様の今日の訓練は2倍だ。有難く思えよ」

「分かりました……」


 そう言い、恨めしいといいた表情をするアリス。今がチャンスだと煽り始める俺


「ざまあみろ、俺を無視するからこうなるんだよ!!」

「連帯責任でルークもだ」

「なんで俺も!?」


 関係ないのに何故か俺も訓練を増やされた。


 ―—アリスが悪いのであって俺は悪くない!!


「やーいルークのあほー」

「てめえ!今度こそ殴ってやる!!」

「やめんか!!」




******




「ほ、本当に増やしやがったあのおっさん……」

「それ、聞かれたら明日も増えることになるから言わないでよ……」


 息も絶え絶えと言った様子で言葉を発するアリス。お前のせいだと声を大にして叫びたい気持ちになったルークだが、疲れによってその言葉が返されることはなかった


 あれから数時間が経ち、空が暗くなり明かりとして設置されている魔鉱石が光り始めた訓練場で、ルークとアリスは肩で息をしながら硬い地面に体を預けていた


 周りには同じように横たわっている騎士見習いや新兵がルーク達を同じように転がっており、事情を知らないものが見れば死体が転がっているようにも見えるだろう


「今日の訓練はこれで終了とする!!」


 そんな新兵と見習いを無視し、一方的に訓練の終わりを告げ教官は建物の奥に消えていく。それを皮切りに一人、また一人と起き上がり寮へ向かって歩いていく


 その様子を見ながらボーっとしていると、隣で転がっていたアリスが勢いよく飛び起き、俺に向けてこういった。


「ねえ、今から食堂まで競争しない?今日のおかずを賭けて」

「はあ?なんで俺がそんなこと……」


 俺がやらないと言おうすると、アリスはそれを鼻で笑い、煽るような口調で


「へぇ?威張ってるくせに逃げるんだ、ダサッ!」

「やってやらあ!!」


 ルークは単純だった


 先ほどのアリスと同じように俺は勢いよく立ち上がりアリスの横に並ぶ。


「じゃあ、よーい……どん!って言ったらはじ」

「うおおおおおお俺が勝つううううう!!」


 合図が出た瞬間、俺は寮に向かって全力で走り出した。


 一瞬だけ呆けるアリスだったが、すぐにルークを追って走り出した。

 

 何度も行き来され、均されている道を走り抜けるルークとそれを割と本気で追いかけるアリス。


 先に移動をしていた新兵達を抜きさり寮の中へ駈け込んでいく。


 そして、あともう少しで食堂にたどり着くといったタイミング。最初アリスは数週間の間で得たなけなしの知識を活用することで、なんとかルークに追いつき並走していた。

  

 だが世の中上手くないものである。


 最後の曲がり角を曲がり、「勝った!」とルークが思ったのも束の間


「おい」


 先ほど曲がった角部屋から声がし振り返ると、ぬっと太い腕が飛び出しルークとアリスの頭を鷲掴みにした


「あいたたたたた!!」

「いててええええ!!」

「貴様ら、寮内で走り回って何をしている?」


 飛び出してきた腕の正体は教官であった


「きょ、教官。えっとですねこれには深いわけが……」

「お、俺もわざとじゃなくて……」


 咄嗟に言い訳を始める見習い二人(大人一人ガキ一人)


 教官はその様子にあきれ果てたようで、大きくため息を吐き


「……貴様らにはまず常識というものを叩き込む必要があるようだ」


 その後、そのまま教官の部屋に二人は連行され、深夜遅くまで永遠と説教を受けたそうだ。




******




――余談だが、説教が終わったあと腹を空かせたアリスが団長の部屋に行こうとして、またまた教官に見つかるという一幕があったとか。


ややこしいですが

騎士見習い→騎士志望の15歳以下

新兵→半人前の騎士で正式に騎士にはなってない

15歳で成人で騎士見習いから新兵扱いになります。

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