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023 『過去の目覚め』

バハムートを見ていたら「うおっ」ってなるかもしれません。


 ラインハルト・フォールンドは凡人だ。


 侯爵家の長男というやんごとなき一族の一員として生まれ、次期侯爵として教育を施されそれに見合う努力を彼自身も重ねてきた。


 だが彼は凡人だった。


 いくら努力しても並み以上のことは出来ず、強大な魔力もなければキレる頭もない、特別な知識があるわけでもなく、常軌を逸した身体能力を持っているわけではない。


 天才と持て囃される姉と周りからは比べられ、よりその凡才は際立っていた。


 それでも彼は努力を辞めなかった。


 姉の影響も大きかっただろう。彼女は自分が天才だと言われても努力を怠ることしなかった。


 そんな姉を見て、周りから無理やり止めようとする者がでるほど、血のにじむ努力をしてきた。


 彼に天賦の才と言われるような才能はなかった。


 だが天才と持て囃された姉を見て落ち込むわけでもなく努力を重ねた。それに見合った知識と実力は身につけることもできた。神は彼を完全に見放したわけではなかった。


 だからこそ彼は絶望していた。


 上位竜(アークドラゴン)。その脅威を現すとするならば、国一つが下手すれば消し飛ぶほどの暴威と言われている。そんな存在が今、目の前にいる。


 全身から力が抜け、へたり込んでいしまいそうになる。


 動けない理由?それは恐怖だ。目の前の怪物に本能が逃げろと、そして無理だと絶叫しているからだ。


 頭がぼんやりとする。呼吸ができない。視界が揺れる。足が竦む。逃げたい。死にたくない。


 思わず膝から膝から落ちそうになるのを握っていた剣を地に突き刺すことで堪える。


 こちらを睨みつける怪物の瞳に、恐怖に染まり切った自分の顔が映し出されていた。


 そして思い出す、いつ()()()()()も分からない記憶を。


 痛みに悶え苦しんで、全てを失う覚悟で挑み守り通そうとしたあの笑顔を。


――ああ、忘れていた


 そして今、守らないといけない笑顔があることを。そして思い出す。自分が戦わなければ皆、死んでしまうことに。


――俺が戦わないとみんなが死ぬ


 覚悟は既に決めていた。


――そうだ、目の前の怪物になんかに負けている場合じゃない


――いつか視た未来(過去)を今度こそ終わらせないといけないのだ


 地面に突き刺していた剣を引き抜き、それをに目の前の上位竜(アークドラゴン)対して向ける。


 恐怖をねじ伏せ、(ヤツ)を睨みつける。

 

 頭が澄み渡る。息は十分に吸った。視界は晴れ、足の震えも止まった。なら守って見せる。何故なら


「誰も死なせたくないからだ」


 時計の針が動きだす(記憶が目覚める)


 脳内に大量の情報が溢れてくるが、邪魔だと念じ無理やり遮断する。


 これを今使えば暫く動けなくなる。そんな状態でこいつの前にいれば何もできず無様に死に体を晒すだろう。


「上等だよ怪物。大物狩り(ジャイアントキリング)と洒落込もうじゃないか!!」


 己の命を懸けてそれを実行しようと魔力を集中させる。


 だがそれは思わぬ人物によって止められることになった。


「ラインハルト!私がこいつの相手をする!カーラ達を安全な場所へ!」


 そう聞きなじみのある声が聞こえると、鈍い金属の輝きを放つ剣を携えた誰かが目の前の竜に向かって走っていくのが見えた。


「アリス!?なんで君がそれを!……いや今はそんな場合じゃない。君はどうする気なんだ!?」

 

 急速に頭が冷えるのを感じながらそう思わず声をかけると、アリスから何を言ってるんだといった風な声色で答えが返ってきた。


「私がこんなやつに負けるわけないでしょ!」


 アリスは竜がブレスを吐いてくると分かると、即座に分厚い土の壁を作り出しそれに身を隠す。ブレスと岩壁が衝突し、数秒の拮抗を経て決壊し壁は粉々に砕け散る。


 アリスはその破片を煙幕代わりに一瞬で相手の頭上にまで飛び上がり、やつの目を潰そうと剣を向けながら急降下する。


 だが相手も馬鹿じゃない。ブレスを吐いたまま真上を向き迎撃しようとする。だがアリスは想定していたらしく、空中に待機させておいた魔術を自分に当てることで無理やり避けた。


 アリスはそのまま地面に着地すると、すぐさま何かが飛んでいく音がしアリスは横に飛ぶ。すると先ほどまでいた場所には何かがえぐれたような跡が残っていた。


 あれが自分に当たっていたらと嫌な想像するが、アリスはさほど気にしている様子もなくすぐさま駆け出すとまたやつに向かって攻勢に出るかと思われたが、こちらに向かって方向展開すると大声で呼びかけてく来る。


「ラインハルト!!早く連れてって!!」


「っ!ごめん!」


 そこで俺は戦場のど真ん中だということを思い出す。


 呆けてる場合じゃない。おそらく俺の予想が正しければアリスはあいつを倒せる。


 そう考えながら、おそらくは気絶してしまっているのだろう。地面に倒れている3人を抱え、竜の暴威のせいで更地になり始めているこの場所から走り去る。


 森に入ると、アリスが本気を出したのかとんでもない爆音が後ろから響いてきた。


 森がこのまま消えないか心配になりながらも、俺は《身体強化》を全力で使い森を駆け抜ける。


「アリスがなんであれをどこで拾ってきたのかは知らないけど、もうちょっと隠すということをしてほしいよねっ!」


 横から飛び出てきた狼型の魔獣を片足で蹴り上げながらそう愚痴を叫ぶ。


 なんであれを持っているのか、帰ったら問い正さなければと心に刻む。


「うっ頭がいてぇ」


 先ほどせき止めていた情報が脳内を駆け巡り始めたせいで、脳の処理が追い付かないとそう呟くラインハルト。実際はまっすぐ走れてるだけで化け物である。


 そして愚痴を零しながら、残り少ない脳内メモリで考える。あの剣を持っているということはとんでもないものが呼び出される可能性があるということじゃないかと。


「もしかして、下手したら今って国が滅ぶ危機だったりするか?」

「ハル!そんなことよりあっちからもう一匹トカゲが来てる!」

「今すぐ戻ったほうがいいか……ってアル嬢!?」


 最悪な考えが過りあの場に戻ろうかと考えていると、突然背中から声が聞こえ思わず驚きの声上げる。


「というかハルって今呼び……まさか!?」

「なんのことか分からないけど今は《ヴィルパート》だよハル。とにかく君の剣は今召喚してあげるから!」


 そういいながら背中から飛び降りる《アル・ヴィルパート》。


「ってなんで泣いてるの?」

「いや久々にヴィルさんにハルって呼ばれてなんか涙が……」

「久々?なんで君も覚えてるの?」

「そっちこそ、なんで覚えてるんですか?」

「私は今目覚めたばっかりだよ?分かるわけないじゃない」

「俺もさっきはっきりと思い出したんですけど」


 暫し見つめ合い、お互いに首をかしげる二人。


「ってこんな話してる場合じゃなかった。竜が来てるんだよ!今対処できそうなの君しかいないんだよ!」

「え?でもヴィルさんなら余裕で倒せますよね?」

「この身体であんな動きしたらどうなるかわかるでしょ?」


 そう言われ記憶を掘り起こすと確かにそうであった。


「体がバラバラになりますね」

「ミンチになれたら奇跡だよ」

「分かりました。あまり気は進みませんが俺が行ってきます」

「よしっ!じゃあはいこれ剣」

「相変わらず扱いが雑!」


 神々しい魔法陣が展開され光の中から漆黒の剣が出てくると、光をしっしっと追い払い剣を片手で投げてくるヴィルパートに文句を言うラインハルト。


「いいよどうせ壊れても直せるし」

「俺が言ってるのは手心のほうで」

「そいつは死んだ」

「残念です」


 そういい肩を竦めるラインハルト。


「カーラ嬢とリーファ嬢は任せた。一応貴族だから丁重に扱ってくれ」

「なんか偉そうだから嫌」

「貴族としての話し方です文句言わないでください」

「はいはい、任されましたよっと」


 なんてことないかのように言うと、さっさと行けとばかりに視線を送ってくる。


「では、行ってきます」

「あーちょっとまって、どこに竜がいるかわかる?」

「森の中心ですよね?」

「あってるけどなんで知ってるの?ラインハルト感知苦手でしょ」

「アリスがここに入る前に森の中心が怪しいって言ってたんですよ」


 「え」と言葉を零し固まるヴィルパート。


「アリスちゃんもいるの?早くない?」

「でもアリスは多分覚えてません、剣は持ってたましたけど」

「ますます分からないね、今は何処なんだ……」

「それはあとで考えましょう、この結界の中にはまだ人が大勢いると思うので」

「そうだね……死なないでよハル。これ逃したら次のチャンスはないかもしれないし」

「流石にこの剣まで持って負けたら恥さらしにもほどがありますよ」


 そう言って笑うと、ラインハルトは森の中心に向けて走り出した。




アルちゃんの姓を書いたか全く覚えてない。

恨むぜ設定書くのをさぼった昔の自分……_(┐「ε:)_

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