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001 『リ・スタート』

序楽章『新たな人生の始まり』これより開幕します。


 深い闇の中だ。


 見えない、聞こえない、感じない。


 自分だけが認識できる。感じられる。


 五感が働かない、思考が空回りする。


 今、何か光った……?


 あれを掴みたい、手に入れたい、欲しい。


 欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい。


 ああダメだ、もう時間みたいだ。


 光が遠のいていく。


 はるか、はるか遠い所へ――――




******




 急激に五感が戻ってくる。


 ワタシは、わたしは、私は誰だ?


 そうだ、私はアリス・クレジーだ。



――――違う!私は私!



 頭がひどく痛む。確か転移装置を起動した。実験はどうなったんだ?成功したのか?



――――何を言ってるの?意味分かんない。



 焦げくさい臭いが鼻を激しく刺激する。くそ、頭が回らない。



――――そっか、私は貴方だったのね



 音も聞こえてくる。これは聞いたことある音だ。そう、確かこの音は何かが燃える音だ。



――――じゃあ、一つに戻ろう



 微睡みの中にあった意識が浮上する。


 目を見開き、脳が世界の情報を処理し始める。


「ここ……は?」


 どうやら私は、地面に横たわっているようだ。硬い土の感触と臭いも感じられる。


「実験は、成功、した……?」


 全身がひどく痛む。特に頭の痛みが酷い。何かにぶつけでもしたのだろうか。


 とりあえず立ち上がろうと腕を動かす。


「へ?」


――――手が小さい、まるで子供の手みたいな……


 そこからは早かった。


 この世界で生きた数年間の記憶が、そして()()の記憶が同時に脳内を埋め尽くしたからだ。


「うっ!?」


 数十年に及ぶ記憶とそれに比例する凄まじい痛みが、私の頭を駆け巡った。



――――痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいたたいいたいいたいいたいイタイイタイイアタイイタイイタイ……



 記憶と人格が混ざり合い、一つになっていくのを感じる。


 どれくらいたっただろうか、しばらく痛みに悶えていると徐々に痛みは引いていった。それに比例するように頭の回転も速くなっていくのを感じた。


 だからと言ってまだ混乱してるし、感情の整理もついていない。なんならここがどこかも、違う世界かもわからない。けれど一つ分かることがある。



――――どうやら私は転生したらしい


 


******




――――物理的な頭痛と、直面している問題のせいでとても頭を抱えたい気分だ。


 そう心の中で愚痴をこぼしながらも、渋々と言った様子で立ち上がるアリス。


「私、作ったの転移装置なんだけど……」



――――転生するなんかさらさらする気はなかったんだけど?



 そう憤慨しながらも転生したからにはしょうがないと、だらだらと呪詛を吐きそうになる思考を切り上げる。


「現地調査のための設備とか、お守りとして宙艦隊も揃えたんだけどな……」


 因みにその規模は大隊規模(500~600隻)である。こいつはどこの国に喧嘩を売りに行く気だったのだろうか。


「今まで積み上げてきたものが一瞬で消えるって、やっぱ悲しいな……。というかこれからどうしよう、研究を続けるにしても設備を揃えるのにも時間がかかるし、そもそもここが異世界なのか、それとも文明レベルの低い惑星かもわからないし……」


 思考がより深い場所へ行こうとする。


 だがそれは中断される。


「……なんか焦げくさいな?」


 今まで混乱してて気付かなかったが、辺りに焦げくさい臭いが漂っているに気づく。


 考えに耽ると周りが見えなくなるのは悪い癖だなと、前世から思い続けていることを考えながらも、慣れない体でゆっくりと立ち上がり、辺りを観察してみる。


 ここはどうやら前世でいう貧民街のようなところらしく、明らかに古い建物や素人が建てた家もどきが道に沿って並んでおり、清潔感を全く感じない。ついでに人の気配を微塵も感じない。


 まさか廃墟か何かなのかと一瞬考えるが、それはないとすぐに考えを振り払う。何故ならこの身体がここには人がいると覚えているからだ。


「とりあえず自分の家でも確認しに行ってみるか……」


 転生したことで体が自動的に幼くなっているせいで、はっきりとは見えないが黒い煙があちこちから上がっているが見える。


 割とどうなってもいいのだけど、一応は確認しに行ったほうがいいかなと、体に刻まれている記憶を頼りに私は歩き出した。




******




 何故か遠い場所にあった我が家(?)に向かうこと数十分。


 焦げ臭さと何かが腐ったような臭いがあちこちから漂ってくる。そのせいで目も痛んできたと感じ始めたころ。家のすぐ近くまでたどり着いていた。


「記憶だと、この角を曲がったら私の家があるはず……」


 さてどうなっているかと何故の緊張を感じながら角を曲がり、そこにあったのは――――


 炎に包まれ、半分炭になっている我が家だった


 その光景を見た瞬間、私は目の光が消えていくのを感じた。


「あー、空は綺麗だな」


 そんな戯言を垂れ流すアリス。


 なお実際は黒煙で視界は覆われており、全く見えていない上に今日は曇りであり、さらに夜である。


「なんというか前世でもこんな感じだったなあ」


 前世で幼少期に過ごしていた場所。そこの人たちは今思っても凄く汚かったし、実際ろくでなしも多かったけど、親がいない私を育ててくれたことを思い出す。


 そして同時に、あの悪夢も思い出す。


 コロニー内に敵国が攻め入ってきた時のことだ。


 居住区も火の海になり、勿論それは私が住んでいた場所も例外ではなかった。


 貧民だが子供の私は脱出艇に乗ることが出来たが、他の人たちは乗ることが出来ずそのまま帰らぬ人になってしまった。


 脱出艇からそれを眺めていたから、それはもう大泣きしたなと、思い出す。


 そんな()()()()()()()を思い出しながら、火が他の建物に燃え移る前に移動を始める。


 アリスは移動しながら周りを観察すると、目覚めたころに比べて結構な範囲に火の手は回っているようで、そこら中の家に炎が纏わりついているのが見える。


「火がこんなにも広がってるのに誰も対処しないんだ?もしかして貧民街はどうでもいいとかいう世紀末的思考な感じなのか?」


――――とりあえず、まずは人に会いたいな


 炎に焼かれた何かの臭いでむせ返りそうになるのを堪えて、アリスは燃える街を走り始めた。


あ、機械が出てくるのは結構先です_(┐「ε:)_

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