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019 『敗残兵、あるいは執行者』

旧題「嫌な予感」追加描写でエピソード名変更です


「うん。まあ奥に行かなきゃ大丈夫って話だし、騎士に任せてれば大丈夫だよ。なんたってうちの国の騎士は優秀だからね」

「分かりましたわ!」

「よろしい」


 カーラが元気よく返事したのを確認しアリスは満足そうに頷く。

 

(カーラがやらかしたら私の責任になるからね!しっかりと手綱は握らないとね!)


 そう私が若干の邪念を含んだ考えを巡らせた。こんなそうそうに国に目を付けられたくないと考えているのでこいつは捕まったほうがいいかもしれない。


 そうしているとちょうど担任の話も終わったらしい。各々が荷物を持ちグループごとに騎士が引率を務めるような形で森に入って行ってるの見える。


「わたくし達を担当している騎士様はどちらにおりますの?」

「お嬢様、おそらくあそこにいる方かと思われます」

「じゃあ、私達も早く合流して森に入ろっか」

 

 騎士のほうに向かって歩き始めるが、すぐに違和感に気づく。ラインハルトが来ていないのだ。後ろを振り返り彼の方を見ると、何かをぶつぶつと呟きながら俯いていた。


(この子、たまにこんな風になるから心配なんだよね。相談にでも乗ってあげてメンタルケアをしたほうがいいかもしれない)


 近所のおばちゃん―――概念だけ知っている―――のような気持ちでそう考えるアリス。こいつは前世と幼児退行した分を含めても精神年齢は20歳前後である。


 閑話休題


 カウンセリングは帰ってからだと意識を切り替え、私はカーラ達に「先に行ってて」と伝えて置き、ラインハルトのほうに走りだす。


 私が近づくと彼はこちらに気づいたようで、遅れているとことにも気づいたのかこちらに駆け寄ってくる。


「すまん、ちょっと考え事をしてただけだ。カーラ嬢を待たせたらまた何をするか分からないし、早く行こう」


 というと彼はそのままこちらを振り返ることなくそのまま走って行ってしまった。


 だが私は別のことが気になっていた。


「ラインハルトの表情。まるで何か覚悟を決めたような……」


 そこまで考えてはぁーと息を吐き、よしと勢いよく頷きラインハルトのことを追うことにする。


(考えるだけ無駄、かな。まあ大抵のことには対処できるでしょ)


―――あまり張り詰めるのもよくないしね


 そう考えながらも、一応は保険をかけておくことにする。


「ラジー、緊急時はいつでも出せる状態にしといて」

『了解です。マスター♪』


 謎に元気なラジーの回答を聞き満足そうに私は頷くと、少し早歩きでカーラ達の元へ向かう。


 私が合流するとは騎士はそのまま私達をつれて森へと向かった。ちらりとラインハルトの顔を見るが、いつも通りの若干頼りない顔だ。


(杞憂だったかな?何もないことに越したことはないからいいけど)


 私はそう思考を打ち切ると、初めて入る魔境の様子を観察することに専念するのだった。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ギラギラと光を放つシャンデリアの下にて。


「こちら準備整いました。いつでもいけます」

「ご苦労。貴様も配置につけ」

「はっ」


 俺の労いの言葉を受け取った後、陰に沈んでいった部下を見送ると俺はこれまで経緯を振り返る。


 (羽虫ども(天使の軍勢)に前の肉体を滅ばされ、早数千年……この身体に乗り移ってから数百年という長い年月をかけ、ここまで来た……!)


「ああ、今も思い出す!!!俺様を貫いた忌々しいあの光!!―――ああああ!!!頭が怒りでおかしくなりそうだああ!!!」


 怒りに身を任せ、壁に拳を叩きつける。


 するとその衝撃は彼自身に帰ってくる。が、彼は意にも介さず怒りの声をあげる。


羽虫どもの長(アスタルテ)よ、貴様が命懸けで守った蛆虫ども(人間ども)を、今!この手で!踏みつぶしてやる!!」


 彼はこれから起こるであろう大事件を前に、口を三日月型に開き、嗤った。


「いかんな、■■■■の力が逆流してきおる。頭を冷やさねば―――」


 そのとき、彼の脳内に■■■■の合図の声が流れる。


「来たか!こうも容易く成功させるとは!相変わらず規格外な!ああ任せておけ■■■■!代行権限(オルタナティブ)傲慢(▼▼)】!」


 彼は背中から生えているだろう黒き翼を広げ、そう叫ぶ。


 悪魔たる彼は、かつて()から与えられた使命を果たさんと、動き出した―――




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 時間は少しばかり巻き戻り、魔樹の森にて異変が起きていた。


「全く、こちらにまで怒りの波動が出てくるとは、私の【権能】の浸食は昔より進んでいるみたいですね」


―――少し、寂しいですね


 薄い金髪を短く切りそろえ、純白を主とし所々に黄金の装飾がされている軽鎧を着た、どこか神聖さを感じる少女が、そう呟いた。


―――彼女の頭には、所々が欠けたヘイロー(天使の輪)が浮かんでいた。


 昔の彼の様子を思い出し、少しばかりの懐かしさを感じると、彼女は思考する。


 そんな彼女は、魔樹の森の奥でとある術式を描いていた。


 それは《魔術》で構成された魔術陣ではなく、遥か古代に失われた《魔術》のオリジンである《魔法》で構成された魔法陣である。


(しゅ)がいた頃と違って神聖力が予想より薄い……仕方ない。ディー君から借りた分の呪力を使うしかないですか―――」


 そう言った直後、黄金の瞳だった彼女の右目が赤く染まっていく。そして同時に、欠けていたヘイローを埋め直すかのように、どす黒いナニカがヘイローを修復していく。


 それに伴い、神聖な光を放っていた魔法陣の一部が黒く浸食されていく。


「ああ、主から賜った美しい魔法陣が……でもこれはこれでいいですねぇ……」


 まるで庭の花に水をあげるかのような朗らかな表情で、そう呟く彼女。


 魔法陣が黒と白の魔力で満たされると、彼女は立ち上がる。


「準備は出来ました。さて―――」


 彼女の雰囲気が変わる。


 彼女がその手を魔法陣に向けると、森の中心に鎮座していた森の主(エルダートレント)を中心とした術式から、光が溢れ始める。


「これから始まるのは、貴方たち人間(主が愛した人形達)。その選定の儀式。その序章」


―――さあ、始めましょう


「我が主から賜ったこの名、《正義の天使(■■■■)》が命じる―――」


―――代行権限(オルタナティブ)正義(■■■■)


 かつての森の主が、()()()の形を取っていく。


「流石に親和性が足りませんでしたか。まあいいでしょう、この程度なら誤差の範囲です」


 竜の形を取ったそれを見つめながらそう呟く■■■■。


「あとは任せましたよ。ディー君」


 そう呟いた天使たる彼女は、自らの身体を白き翼で覆うと、その場から姿を消した。


 

―――最後の審判、その最初の一幕が今、幕を上げる


 今の地上ができる前にいた主人公的な活躍をした3名のせいで人間へのヘイトがヤバいです。霊長じゃないのに頑張りすぎなんよ君達……


 

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