018 『魔樹の森』
「カーラ、ラインハルト。今から説明するからちゃんと聞きなよ?」
「分かりましたわ!」
「分かった」
カーラは元気よく返事をし、ラインハルトははっきりと返事を返してくる。
そして簡単に二人に説明する。
「今日|《魔樹の森》《ここ》来たのは、夏休みの前に学期末テストを行うためにきたんだよ」
ふむふむと仲良く二人で頷いているのを確認し、さっさと説明することにする。
「まあやることは一つ、ここ魔樹の森の間引き、つまりは騎士団のお手伝いをするってことだね。」
私がそう説明するとカーラが突然を手を挙げ質問を投げかけてくる。
「安全面は大丈夫なのですわ?」
「大丈夫、騎士団と合同でやるからね。騎士がついていればこの魔境に出てくる魔物程度ならいくらいようが私達を守り切れるはずだからね。一つ例外はあるんだけど」
「例外ですの?」
私はうんと頷き、魔境の仕組みも交えながら教えることにする。
「魔境の仕組みは知ってるよね?」
「流石に知ってますわ、魔境は強力な魔物を中心に作られるか、魔力だまりがある場所がそう呼ばれますわ!!」
そう魔境は古代遺跡のように人工的作られたわけではなく、強力な魔物がそこを根城にすることで生まれたり、原因は謎だが空気中にある魔力が一定以上集まるとそこから魔物が発生するもののことを魔境と呼ぶのだ。
ここ魔樹の森は強力な魔物が生まれたことによって形成された魔境だ。だがここの魔境の主というべき強力な魔物は既に死んでいる。通常主と呼ばれる魔物が死ねば自然と魔境は崩壊していくが、この魔境は違った。
ここの主だった魔物という魔物は樹木のように動くことはなく、ほとんど空気中からの魔力で生きていく種類の魔物だったからだ。その影響でこの森の木はエルダートレントの下位種族というほとんど無害な魔物で形成されているのだ。
(まあ一応攻撃することはあるけど、トレントたちを攻撃しようとしたときだけだからね)
それならば問題ないのでは?と思うかもしれないがそうはいかないのだ。
トレントたち事態は無害なのだが、トレントが実らす果実を求めて草食動物がこの森に集まり、その草食動物を求めて大型の肉食動物が集まり、その大型の肉食動物を食べに魔物が集まってくるのだ。しかも草食動物がトレントの果実を食べることで魔物に変異することもあるというから性質が悪い
それならトレント達を滅ぼしたほうがいい気がするが、この森があることで周辺の魔物が集中することで周辺での魔物の被害が減っているらしく、むしろ率先して保護するべき対象だったりする。
このことを伝えると二人は驚いたようで大きく口を開いている。
「そうだったのですの。てっきりトレントを滅ぼすのにはこの森が広すぎるからだと思っていましたわ」
「それもあると思うけどね、でもね、今はそこが重要じゃないんだ」
「他に理由があるんですの?」
「実は最近、森の奥に魔物が集中し始めてるらしいんだ。だから奥に行かないでって話」
「そうなんですの」
(森での異変かあ。例の夢を見たってことは今回はそれ絡みの問題かな……)
そう考えてしまい、憂鬱な気分になってしまうアリスだった。