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第十六話同行者

「お兄ちゃん! あーそぼ!!」


 扉を勢いよく開けて、入ってきたのはエリザだ。

 どうやら一時的に屋敷に帰ってきたらしい。

 本来休息のための時間のはずだけど、エリザにとって休息は必要ないみたいだ。

 前に巡回から戻ってきていた騎士、バンプを見かけたけど、身体はボロボロだったし、目も虚で、歩くのがやっとみたいだったんだけどな。

 きっとエリザに言ったら、「訓練が足りないだけ」って言われるんだろうな。

 エリザは訓練が大好きだからね。


「おかえり。残念ながら遊べないんだ。これから出かけるんだよ」

「出かけるってどこに!? ずるい!! 私も行っていいんでしょう?」

 

 行っていいかどうかについては、僕の判断ではいいんだけれど。

 元々、付いてきてもらうつもりだったけど、会う機会が取れずに言えなかっただけだし。

 ただ、もうマリーを同行させるんだよね。

 二人も付き添いいるかな?

 いてもいいか。


「パーフェン伯爵のところだよ。来てもいいけど、すぐ準備できる?」

「げ! あのハゲ親父のところなんかいくの!? 遊びじゃないじゃん!!」

「うんうん。遊びじゃないね。あと、人の見た目で呼称しちゃダメだよ」


 パーフェン伯爵の見た目、全然思い出せなかったけど、ハゲているのか。

 これで会った時に、間違った人に挨拶し間違える危険性が減ってよかった、よかった。

 それにしても、エリザも将来僕の代わりに領主になるかもしれないんだから、そういうところはきちんと兄の僕が指導してあげないとね。

 ハゲと呼ばれて嬉しい人はいない……こともないけど、まぁ、だいたい悪口だからね。

 それに、好きでハゲてる人はいない……こともないけど、まぁ、だいたい不可抗力だからね。

 

「お兄ちゃんが、そういうなら……で? パーフェン伯爵のところなんかに何しに行くの?」

「理由行ったら断らない?」

「関係ないよ。私はお兄ちゃんと出かけられるだけで、色んな訓練ができて嬉しいもの!」


 エリザは本当に僕のことが好きだなぁ。

 僕と出かけると訓練ができる、ってところに関してはよく分からないけれど。


「実はね、用件はよく分かってないんだ。ひとまず、来い。ってことだね。パメラは、魔鉱石の鉱床の話をされるんじゃないかって言ってたけど」

「ふーん。まぁ、パーフェン伯爵との会話はお兄ちゃんに任せるし。それにしても初めての二人っきりの旅行じゃない!? わぁ! 楽しみだな!! どんな格好でいこう!」

「あ、いや。すでにマリーを連れていくことが決まっているから二人っきりじゃないよ。それと、格好はそのままでいいんじゃない?」

「え!? 誰!? マリー!? あ! あの時の気絶した人!!」

「そうそう。彼女も行くからね」

「え!? もし私が行くって言わなかったらマリーと二人っきりで行く予定だったってこと!?」

「うんうん。そうだね」


 エリザは何かを言いたそうにしたが、どうやら口にするのを止めたようだ。

 なんだろう、もしかして、マリーとエリザって仲悪いのかな?

 屋敷で働いている人たちの詳しい人間関係なんて気にしたことなかったからなぁ。

 でも、領主なんだからそういうのにもきちんと配慮しないといけないなぁ。


「えーと。エリザとマリーがそういう関係だってことは、僕も知らなかったよ。次から気を付けるので、今回は大丈夫かな?」

「……お兄ちゃん。ずるい……」

「うんうん。そうだね?」


 何がずるいんだろう。

 よく分からないけれど、ひとまず納得してくれたみたいだ。

 これで、道中たとえ魔物に襲われたとしても安心だし、記憶と記録も気にしなくていいし、問題ないね。


「あ、ところで。念のため聞くけど、エリザが抜けても大丈夫なの? 廃坑周りとビオーネ地帯方面の警戒は」

「うーん? まぁ大丈夫なんじゃないかな。徐々に目にする魔物が強くなってきてるとはいえ、せいぜいサンダーエイプくらいの強さだし。騎士団には死ぬ気で頑張れって言ってるしね。仮に守れ切れなくてもお兄ちゃんは私の隣にいるんだから安心だし」


 サンダーエイプくらいの強さってどのくらいなんだろう。

 ミスリルウルフよりも強いのかな?

 どうも、エリザやランディの強さの基準が分からないから、大丈夫なのかどうなのかは、分からないよね。

 念のため、パメラに書置きしておこうかな。

 念のため、ね。


「よし。じゃあ、準備してきてよ。えーと、たしか後一刻で出発じゃなかったかな?」

「わぁ! そんなに時間ないじゃない! 大変!! すぐ用意してくるから!! お兄ちゃん、また後でね!!」


 エリザは入ってきた時と同じくらいの勢いで部屋を出て行った。

 僕も念のため、自分の荷物に不備がないか、確認しておこう。

 パメラが用意してくれたものはもちろん触らない。


「うーん。そういえば、パーフェン伯爵に会うんだから、一応の贈答品くらい用意しておいた方がいいかなぁ。あ! この前エリザが仕留めたミスリルウルフの毛皮の敷物がこの前できたって言っていたよね。……あった、あった。これをあげたら、あんまり無茶な要求しないでくれないかな」


 床に敷いていたミスリルウルフの毛皮をくるくると丸めて、人を呼んで外に待機させている馬車に積むようお願いする。

 それと、パメラの書置きも書かなくちゃ。


『エリザもつれて、パーフェン伯爵に会いに行ってきます。異常があれば、無理せず逃げてください』

 

 えーと、これで何があったとしても大丈夫だろう。

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