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第十四話 その後の手配

「その後の手配はよろしく……って軽い感じで伝えていい話じゃないですよ……?」


 疲れ切ったパメラが、恨めしそうな顔で僕を見ながらそう言った。

 ちなみに僕は寝起きだ。

 彼女の目のクマの出来具合からみて、きっと徹夜してる気がする。


「おはよう。パメラ。なんかよく分からないけど、とりあえず……ごめんね?」

「いいですよ……現在の状況をお伝えしても?」

「うーん。ひとまず、ご飯食べてからでいいかな?」

「……かしこまりました。では後ほど」


 パメラはふらついた足取りで部屋を出ていった。


「うーん!」


 伸びをしながら、昨日のことを思い出す。

 エリザにミスリルウルフを駆除してもらった後、みんなで仲良く屋敷に戻ったら、パメラが待ち構えていたので軽く事情を説明したんだ。

 廃坑で魔鉱石の鉱床を見つけたことと、ミスリルウルフとかシルバーウルフが出たってことをね。

 そしたらパメラは青ざめた顔をして、色々と手配をしてくれたみたいだ。

 詳しいことはマリーに聞いてと言っておいた。

 マリーはいつのまにか気絶してたので、エリザに担いで運んでもらった。

 僕は疲れちゃったから、用意されていた夕食を食べて早々に寝てしまったわけだけど。

 パメラはマリーから詳細を聞けたのかな?


 ☆


「まずはミスリルウルフ他、領地内に多数の魔物が確認された件ですが――」


 ご飯を食べ終わったら早速パメラが状況説明をすると来たので、今度は大人しく聞くことにする。

 さっきは冗談でご飯の後って言ったらすぐに出て行っちゃったから、今回は言うのを我慢した。

 喉まで出かかっていたけどね。


「現在、騎士団に魔物が発見され次第駆除を目的とした巡回を指示しております。すでに複数の報告が上がっていまして、魔物は予想通り、ビオーネ地帯から南下しているようです」

「ビオーネ地帯ね。なるほどね」


 いくら僕でもビオーネ地帯くらいは知っている。

 むかーし昔、僕や近隣の領主たちのご先祖様の時代から魔物を駆逐して領土を広げていって、現在に至るまで開墾の目処が立っていない地域を総称する呼び名だ。

 端的にいえば魔物たちの巣窟ってことだね。

 とても残念なことにその境界はクライエ家の領地と一部隣接している。


「ビオーネ地帯への警戒態勢を強化する予定で進めていますが、問題ありませんか?」

「パメラが必要だと思うなら、その通りにしてよ」

「かしこまりました。続いて、魔鉱石の鉱床の件です。こちらはかなりややこしくなることが予想されます」

「というと?」


 嫌だなぁ。

 ややこしいことなんて正直勘弁願いたい。

 もしくはパメラやエリザやランディに全部投げ出したい。

 今もうすでにパメラに丸投げな訳だけど。

 それでも最終的に責任を取るのは領主だからね。

 ああ……胃が痛い。


「ご存知の通り魔鉱石はその多くが武具への加工に消費されます」

「うんうん。そうだね」


 あんまりご存知ないけれど、とりあえず頷いておけば威厳出るかな?

 出ないかな。


「新たな鉱床が発見された場合、まずは国にその所有権を認めてもらう必要がありますが、魔鉱石の鉱床となると、かなり手続きが複雑で、その間に様々な横槍が入るでしょう」

「なるほどね」

「もちろん正式な所有権を強く主張していきますが、魔鉱石の鉱床の特性上、十分な管理能力を見える形で示さないと、国庫没収、もしくは近隣の有力貴族に奪われかねません」

「え!? だってあの廃坑ってほぼ屋敷の側だし、取られたら凄く困らない!?」


 僕のお気に入りの散歩コースの一つがなくなってしまう。

 あ、でも魔物が出るみたいだから、しばらくは散歩できないのかな?

 エリザか誰かと一緒に散歩すれば問題ないか。

 うん、大丈夫そうだね。


「おっしゃる通り、あの廃坑はクライエ家以外のどの領地とも隣接していませんから、他の貴族の領地になるようなことがあれば、それ以上の領地を失う可能性が高いです」

「それは嫌だね。取られないようになんとかしないと」

「もちろんです。アーク様にも色々してもらわないといけないことが出てくると思いますので、ご対応よろしくお願いしますね」

「あ、はい」


 やっぱりエリザかランディに丸投げできないかなぁ?


 ☆☆☆


「それじゃあ、甲冑を脱げと領主に言われたんだね?」

「はい。エリザ様」


 バンプは、一日経って騎士団の訓練場に出向き次第、エリザに昨日のことを事細かに聞かれていた。

 昨日は疲労困憊(こんぱい)していて、左腕の治療を受けてすぐに床に着いてしまった。

 怪我は問題なく治してもらえたが、体力の回復は追いついていない。

 一騎士として、すぐに報告できなかったのは悔やまれるが、あの状況から生き残れただけでも奇跡なのだから、それ以上望むのは贅沢だろう。

 その奇跡を引き起こしたのは、目の前のエリザなのは言うまでもない。

 今日のエリザは、昨日が夢だったのではないかと思うくらい、様子が違う。

 どちらかといえば、昨日だけ特殊だったともいえる。

 にこりともせず、終始真顔で、口調も以前からの威厳を備えていた。

 元々どんなことを聞かれたとしても、可能な限り有益な情報を提供しようと思っていたら、聞かれるのは今のところ何故かアークに関わることだけだ。


「それじゃあ、君は今日からあの甲冑は禁止だね」

「え? あ、はい。それは問題ありませんが……」

「が、何?」

「いえ。以前、お聞きした時は、好きにすればいいと言われましたので」

「おに……領主が言ったことは絶対だ。是非はない」

「かしこまりました。口答えして申し訳ありませんでした!」

「いいよ。次は許さないけどね。それで。続きを聞かせてくれる?」


 結局、エリザの質問は全てアークに関わることで、バンプは昼頃まで延々と質問に答え続けていた。

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