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第9話 断絶の権能

 僕の意志に関係なく、近寄るものはすべて引き裂かれる。僕はただ、走るだけだ。向かうべき場所は解っている。最初から異常だと思っていた場所だ。


『あそこにはきっと………。』


 見当はついている。だからこそ、僕は走った。あの森で感じた優しさと、本能的に感じ取る敵意。その両方が、その場所にはあった。


『ハッ………来やがった。本命だ。』


 僕がその場所にたどり着くと、その言葉が待っていた。


『なるほど、並の奴じゃ近寄れねぇわけだ。権能を発現させちまってる。出来ればあのときのガキのままで良かったんだけどな。まあ、今じゃ無意味か。』


 普通のマルコシアスの2倍ほどの大きさ………言葉1つに至るまで重厚感が段違いだ。だがそんなことはどうだって良かった。


『お前………母さんを………。』


『よく解ったな。』


『そのツギハギの白い毛を見たらそりゃあ解る………魔力だってよく似てる………。』


『聡い奴は嫌われるぞ?俺みたいなやつからな………。』


『知ってるよ………とっくに嫌われてるんだから。』


 余裕ぶっているが、実のところ四肢がまともに動かない。かろうじてしゃべることができる程度だ。


『じゃあ、死んどけ。』


 その一言と共に駆け出す巨体。


『生憎と………まだ死にたくないよ。僕は。』


 奴の爪牙が僕を襲う。まだ僕には奴のような爪らしい爪もなく、牙と言える牙も生えてない。だが、僕の爪牙は確かに存在する。

 触れる寸前、その力はやつを弾く。


『けっ………厄介だな。()()()()()っていうのは。今の俺さえも弾くか………いや………切るの間違いだな。訂正しよう。』


 やつの頬からは赤い体液が流れている。だがそれ以上に………。


『がはぁ………。』


 血を吐き、僕はその場に伏せる。まるで立ち上がることができない。たった一撃なのに………僕は防ぐのさえも精一杯だった。


『だがまあ、未熟だ。権能があるからなんだ?お前はガキだ。』


『はぁ…はぁ………。』


『シロ………フェンリルの子と言えどこの程度かよ。』


『な………!?』


『なんだ、知らなかったのか?丁度いい、教えてやるよ。シロっていうのは4000年前の賢者がつけた名だ。その恩恵によってあいつは狼からフェンリルへと進化した。古の種族を根絶させ、そして神に背いた。それに伴って、俺達も産まれた。人には悪魔って呼ばれてるが役割はあるんだぜ?』


『約割………?』


『シロと同じさ。神殺しだよ。ある1柱を殺すことが目的………になるはずだった出来損ないだよ。』


『出来損ない………だと………?』


『あぁ、だからこそ腹が立つんだ。完成形のお前にな。』


『僕が………完成形………?』


『もういいだろう。お前の代わりはしっかり務めてやるよ。じゃあな。』


 ゆっくりと歩を進めるそれを前に立ち上がることさえできない。ただ、死を待つのみとなった………。


「はぁ、なんでこんなことになるかな。」


『あ?誰だ?』


「これだからマルコシアスっていうのは本当に………その子が居ないとマジで詰むんだから。」


 急に現れた………いや、いつから居た?そのフードを被った少年は悠長に話す。


「君がこの子に勝つ運命はないよ?僕が相手だからね。まぁ、出来損ない同士楽しもうよ。」


『人間が………ほざけ………!!』


 その巨体が大地を蹴る。疾風とともに襲いかかるも………攻撃は当たらない。いや、僕には端から当てる気など無いように見えた。やつが攻撃したのは何もない空間。


「解らずやですね………まぁ僕としてもあなたの言葉わからないんですけどね。」


 何を………しているんだ?まるで別のところを攻撃し続けるそいつ。フードの少年は一歩も動いてないというのに………。


『何故だ!?』


「まだ続けます?言っておきますけど、あの子に攻撃しようとしても同じことですよ?」


『くっ………。』


「さて………そろそろですかね。」


「よく耐えたわ、クルガ!」


 聞こえてきたのはノアの声だった。


『チッ………一番厄介なのが出てきたな。ここは引くしかねぇか………アレがその気になりゃあ余裕で群れもろとも潰されてたろうしな。』


「逃さないわよ………?」


『なっ!?』


「足枷………最早あなたは罪人同然。断頭を持って終幕とする。」


『!?』


 鎖が、やつを捉える。頭上には綺麗に研がれた刃が待機していた………。


―――――――――――――――


 力の差は歴然。俺にできることなどない。流石は全能………なるほど詰むわけだ。フェンリルを食った俺が動けないんだ。存在する事象はすべてアレのものってことかよ。

 んじゃああのガキは?あいつは存在しない事象だってのか?いや違うな………あのガキは切り札だ。ただの切り札でしかない存在なんだ。

 そこまで思考がいった途端、首筋を刃が撫でる。痛みを感じる暇も無く、俺の意識など落ちるだろう。


 最期の記憶。フードの少年は、不敵に笑っていた。

どうも夾竹桃です。こうして後書きを書くのはなんと言うか久々な気がします。モチベはありますが、なかなか時間がなくそこそこ期間が空いたりしてますが気長にお待ちください。私はこれを書き上げましょう。せめて現構想段階までは。ではでは、良ければブクマ登録、評価の方お願いします。

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