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第4話 空席

「お嬢様も年相応なんですね………。」


「いいえ、クルガはできる子よ?多分だけど。」


 もしかして………ノアは昨日の出来事を心の中でどこか信じてるんじゃないだろうか?だから、僕に今のような説明をした。結果的に僕は権能の使い方を理解した。


「では、私が的になりましょう。」


「………じゃあクルガ。使ってみなさい。あなたの権能を。」


 使い方は簡単だった。ただ、自分を信じるだけで良い。自分の力を信じるだけで………風が逆巻く。いつか見た疾風に包まれた狼のように、僕は立つ。


「これは………!?」


 飛び上がり、アレンに向けて襲いかかる。流石に予想外だったのか、槍を構えるアレン。だが、その程度が何だというのだ。今の僕はそんなものじゃ止められない。


『すべて………切る。』


 呟き、一筋斬撃が閃く。


「な………?」


 何が起きたのかわからないという顔をしたアレンとノア。槍の矛先は地面に落ち、もはやただの杖と化していた。


「何………今の権能は………。」


「私も………このような権能は存じ上げません。一見すると金の権能………ですが刃物によって切り裂かれたような感覚はなかったと………。」


「風の権能………なんてものは確かなかったわよね?」


「ええ、そんな権能は聞いたこともございません………風を司っているのは水の権能ですので………。」


「かと言って、あれは水の権能なんてものでもない。それに、私の造った槍をこうも簡単に………。」


「マルコシアスさえ貫いたというのに………クルガは一体………。」


 後ろでそんな話し声が聞こえる。何やら驚かれているようであるが、僕からしてみれば何がここまで驚かせているのかがそもそもわからない。権能とは何なのか………魔術学校というところに行けばそれもわかるかも知れない。もっとも、それは半月先の話であろうが。


「………考えても仕方ないことね。」


「はい………。」


「さて………クルガ。良くできたわね。」


 そう言うとノアは僕の近くまで歩み寄り、そして抱えあげる。


「そう言えば、私達の相性を確かめるのでしたわよね?」


「あぁ………先程のようなものを見せられては認めざるを得ませんね。相性云々どころの話ではなかったようですが………。」


「ええ。でもまあ、昨日の件と今回の事で確信しました。」


「何をです?」


「クルガは人の言葉を理解できるということです。」


「そ、そんなまた突拍子もないことを!?」


 ノアはどうやら解ってくれたようだ。僕は明確に人の言葉を理解することができる。その事実を。


「証拠を見せるわ………クルガ、2回頷いてみて?」


 その言葉に従い、僕は2回首を立てに振る。


「なんのサインも出さずに………つい先日まで野生下だったのにここまで躾けることができるとは到底………。」


「私も、昨日気がついたのよ。でもそのときは偶然だと思って考えないことにした………今回の事があったから私も確信したの。」


「やはり、クルガは特別な狼なのでしょう………マルコシアスともまた違う。まさか………フェンリルでは?」


「アレン、貴方にしては随分と早計ね。確かにクルガはフェンリルのように白銀であるけれど、フェンリルの幼体にしたってあまりにも小さすぎる。それに、最後にフェンリルが目撃された………というか伝承に残っているのは少なくとも4000年前。流石にフェンリルの子供はあり得ないわ。」


「え、ええ………すみません。」


「いいわ………私もクルガが何なのか解らない………でも、私とクルガは似たもの同士引かれ合った………それだけは確かだと思うわ。」


 そうして、また何事もないような日常に戻っていく。もっとも、ノアはどこか嬉しそうだった。いつものように時が流れ………日は沈み、夜。


「さてと、今日はこのくらいにしておきましょうか………。」


 何時もより早い時間帯にノアは勉強を切り上げ、僕のもとに向かう。そうしてしゃがみこんで、真面目な顔で僕に問う。


「魔術って興味ある?」


 そう聞かれた僕は一瞬固まるも、意味を理解し頷いた。


「そう。読み書き………は、できないわよね?」


 また頷くと、「解ったわ。」と言って僕を抱え勉強机に腰掛けた。


「少し、お勉強しましょうか。」


 それから一時間ほど、僕とノアの勉強会は始まった。内容として、権能と魔術の違い。魔術の使い方。様々だった。そして何より………19柱の神の話。

 この19柱の神の話を聞いて、ようやく昼間に騒がれていた理由がわかった。僕の権能は19柱の神のどれにも当てはまらないのだ。そしてそれは、ノアも同じことであった。


「だから言ったのよ。似たもの同士だって。それで………歴史上、こうした例外は既に1人現れていた。その権能はこう呼ばれたようよ。“空席の神”と。」

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