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転校してきた隣の席の天使様に毎日「好き」「かわいい」と言い続けた結果距離感が近過ぎる事が発覚したので遠慮して距離を置いていたら天使様から距離を縮めてきた



皆さんは一目惚れというものをしたことはあるだろうか?

俺は一目惚れというものがイマイチ理解できなかった。

だって、容姿だけでその人のことを好きになるってあり得るか?


好きっていうのは、相手の性格とか、いいところとか悪いところとか色々知って初めて生まれてくる感情だと俺は思う!!


だから、一目惚れの好きっていうのは紙のように薄っぺらいー



「今日からこの学校に転校してきました。園田雛そのだひなです……な、仲良くしてくれたら嬉しいです……皆さんよろしくお願いします」



その声はか弱く、か細く……どこか儚げだった。

その顔は高校2年生にしては幼なげで、髪は栗色のストレートロング。

簡単にいうとロリ可愛で守ってあげたくなるというやつだ。


雷に打たれたような衝撃が走った。

天使のような容姿に息をすることすら忘れてしまう。


そう。天使、天使だ……あ……す、好きだ。


俺、三ツ谷智樹はこの日、隣の席の園田雛に一目惚れをした。



『好きです!! 超好きです!! 完全に一目惚れしました!! 付き合ってください!!』



それで出会って早々人生初めて告白し、バッサリ断られた。

それはそうだ。出会ったばかりの男にいきなり告白されたらまぁ誰だって断るだろう。

でもこの思いだけは言っておきたかった。


しかし断られたからといってここでへこたれる俺ではない。



1ヶ月後



「雛ちゃん!! 俺のことどう思ってる? ちなみに俺は可愛くて大好きだと思ってます!! 付き合ってください!!」


「三ツ谷君のことはいい人だと思ってるけど、好きじゃないからごめんなさい」



3ヶ月後



「雛ちゃん!! 可愛い!! 絶対に幸せにして見せるから結婚しよう!! でもその前に付き合ってください!!」


「……結婚もしないし、付き合いもしません。ごめんなさい。……三ツ谷くん、このやりとりはいつまで続くんですか?」


「君の言葉からイエスが出るまでさ!!」


「それじゃ一生じゃないですか」



6ヶ月後



「雛ちゃん!! えっと……す、好きです!! 超好き! あと可愛い!! 大好きだから付き合ってください!」


「智樹くん……もう言葉のバリエーションなくなってきたのバレてますよ? もうそろそろ終わりにしたらどうですか?」


「ふ、甘いな。俺にとっては雛ちゃんへ愛を伝えることは挨拶するのと同じなのさ」


「はいはい、挨拶くらい軽いものなのなんですね」


「違うよ。挨拶くらい当たり前で大切なことなんだ」


「……はいはい」



告白を断られ続けて半年が経とうとしていた。


だが、この気持ちは一切曇ることなく日に日に増していく勢いである。

日を重ねるほどに雛ちゃんのことを知っていった。


笑った顔も。

甘いものが好きだということも。

人見知りなところも。

頭がいいところも。

朝の寝起きは頭が寝癖がすごいところも。


今は欠点ですら愛嬌だと思える。


半年前までは正直、一目惚れなんて薄っぺらな好きだと思っていたけど、それは違う。


ただの入り口なんだ。


一目惚れして、その人のことをもっと知りたくなって、知ろうとしてどんどん好きになっていく。

もしもその逆で、その人のことを知ることによって好きが無くなったらそれはそれでいいと思う。

でも俺はそうならなかった。


そんなことをしみじみ考えて登校していると見慣れた栗色のストレートロングが見えてきた。



「雛ちゃーん!!」



大声を上げ、手を振りながら雛ちゃんの元へと全力ダッシュする。



「……智樹くん」



明らかに『げ、朝からめんどくさい奴と出会ってしまった』という顔をされてしまったがいつものことだから気にはしない。



「ゼェ、ゼェ……ひ、雛ちゃんおはよう!! き、今日も可愛いね!!」


「まずは息を整えてから言ったらどうですか?」


こちらを見ずに呆れながらため息をつく雛ちゃんは可愛かった。

ひとまず、息を整える。


……よし!



「雛ちゃんおはよう!! 今日も可愛いね!!」


「はぁ、今日も相変わらずですね。智樹くんは」



俺の言葉をいつもの通り軽く受け流しながら雛ちゃんと登校する。

まぁ、このやりとりは俺と雛ちゃんにとっては挨拶みたいなものだ。


そんなことよりも朝から一緒に登校できるなんてなんたる幸運! 神様に感謝……!!



「あ、そういえばさ。最近できた和カフェ知ってる? 園庭があってすごくスイーツも美味しいって評判なんだよ」


雛ちゃんはスイーツが大好物で特に和菓子や抹茶系スーツが好きだ。

意外と一人でカフェ巡りとかしているらしく、俺もついていきたい!!とお願いしているが断られ続けている。



「あ、知ってます。結構有名ですよね。でも休日とかだと人が多くて待ち時間が多いとか」


「そうそう。でも平日の夕方は空いてるらしいんだよ! だから一緒にー」


「なるほど、今度あかねちゃん達と一緒に行ってみようかな?」


「あの……お、俺と行くという選択肢は……」


「ないですね」


「ぐへぇ」



あまりにもキッパリというので心に傷を負ってしまった。

そうこうしているうちに学校へと着いてしまった。


は、はやすぎる。

体感1分だぞこれ……

推しのアイドルの握手会とかってこんな感覚なんだろうか?

くっ……この至福が永遠に続けばいいのにっ!!


そんなことを思いながら校舎に入り、靴を履き変えた。

校舎を二人で歩いているといろんな奴らから声をかけられる。



「お、朝から仲が良いな!!」


「はは……!! だろう? なんたって俺たちはー」


「やめてください。たまたまですよ」



とか



「おはようー三ツ谷くんと園田さんー! やっぱり二人でいるとしっくりくるね!!やっぱり」


「付き合ってませんから。もう! これ何回目ですかっ」


「あははーごめんごめん。可愛い顔してプリプリ怒らないでよー」


とか


まぁこんな感じで結構声をかけられる。


雛ちゃんが転校してきたその日に俺が告白したのは学校中に広まっていた。

あ、ついでにいうと半年以上告白を断られていることもだ。

それでも雛ちゃんにアプローチを続けていくうちに学校内でも俺と雛ちゃんはいつも一緒にいるみたいな感じに思われていた。

まぁ、俺が雛ちゃんにくっついてるだけなんだけどね。


だから俺が雛ちゃんに好き好きって言っている光景はみんなにとってはいつもの光景だ。


またやってるよあの二人みたいな感じ。



「はぁ……こうなるから一緒に登校したくなかったのに……」



そう雛ちゃんは口を尖らしながら呟き、教室の扉を開ける。


するとクラスのみんなは雛ちゃんにおはようと声をかけ始める。

雛ちゃんは可愛いからな。クラスでも人気ものでアイドル……とまでは言わないが小動物的な可愛らしさから愛でる存在として認知されている。



「お、ひなちゃん今日も三ツ谷くんと一緒じゃん〜」


「今日もじゃなくて今日は、です。いつも一緒にいるみたいに言うのはやめて下さい」



ムッとした感じでクラスの女の子に注意するように言った。

女の子はごめんごめんと軽い感じで受け流す。



「あ、そうだ。ちょっと宿題教えてよ〜わからないところあってさー」



雛ちゃんはクラスの女の子に呼ばれ、勉強を教えてあげていた。


雛ちゃんは頭がよく教え方がとてもうまいとクラス内でも有名でみんなに頼られている。


ふ、さすが雛ちゃんだぜ。


とまるで自身のことのように遠くからドヤ顔で雛ちゃんが教えている姿を見守っていた。




昼休み



「ひなちゃーん。ほっぺぷにぷにで良い匂い〜」


「わ、も、もう茜ちゃん抱きつかないで下さいってば〜ま、真奈ちゃん!!」


「まぁまぁ……雛ちゃん。茜ちゃんもあんまりほっぺぷにぷにしちゃだめだよ?」



雛ちゃんはクラスの仲が良い女の子達と仲睦まじそうに絡んでいた。

も〜と言いながらもとても嬉しそうに微笑んでいる。

まるで天使のような笑顔を見ながら俺はため息を吐いた。


はぁ、今日も雛ちゃんは可愛いなぁ。


でも……あんな笑顔、俺には向けてくれない。


というか、笑顔以前に結構雑に扱われている気がする。

でも……雑に扱う雛ちゃんも可愛いのも事実だ……



「はぁ……雛ちゃん……ううぅ……ほんと好き……」


「出たよ……いつものやつが」



やれやれと言った感じで小学生からの友人である岸田幸樹がため息を吐いた。



「つーかまだ諦めてなかったんだな……昨日とかデートに誘ってもバッサリ断られてたじゃん」


「は? デートなんか毎日誘ってるんだが?」



まぁ、学校が休みの土日除くだけど……

あ、ちなみに今日も断られた。


「マジかよ……ちなみにいままでOK貰ったことは?」


「ない」


「お、おう……」


「はぁ……俺って雛ちゃんにどう思われてるんだろ……」


「え、どうって……変態不審者?」


「くそっ!! 雛ちゃんと仲良くなりたいっ!! どうすればっ! いいんだよ!」


「聞けよこいつ……都合の悪い言葉は聞こえないふりしやがって……なぁ、これ見てみ」


すると岸田が自分のスマホを俺に見せてきた。

これは……猫ちゃんの動画だろうか?



『あ〜っ!! タマちゃん可愛いいいいいいいっ!! ちゅちゅちゅっちゅ!!しゅき! しゅき! しゅき〜!!』


『ニ、ニャ〜……』



飼い主の女の子が飼い猫のタマに対して顔を頬ずって何回もキスをしている様子が流れている。

本人は幸せそうにしているが、猫はなんというか……嫌がっているように見える。

ていうかめちゃくちゃ前足で飼い主の顔を抑えて抵抗してるし。



「どう思うよ?」


「どうって……まぁ、猫ちゃんへの愛は伝わるけどさ、これはダメだろ? 猫ちゃん嫌がってるじゃん……なんて言うかさーこう……相手の気持ちを考えず一方的にこういうのするのはよくないと思うな。周りが見えてないというか、こんなことしてたら好かれるどころか嫌われるんじゃないかな?」



「側から見たらお前もこの飼い主と同じだぞ」


「えっっッッッッッッッッ!!!!!!!!????????」



胸に釘が打たれたような衝撃が俺を襲った。



「あ……なっ……? え、えぇ……?」


「受け入れろ……これが事実だ」



瀕死の俺にとどめを刺すかのように岸田の言葉が突き刺さった。



「う……雛ちゃんー!!」



思わず俺は雛ちゃんの元へと駆けていた。

考える前に体が動いていた。

なんというか、心が……体が雛ちゃんを求めていたんだ……



「な、なんですか。智樹くん……」



怪訝そうな顔で俺を見つめる雛ちゃん。



「ひ、雛ちゃんって……その……俺のことどう思ってる?」


「え…………………百歩譲って赤の他人でしょうか?」


「百歩譲っても!?」



随分考え込んで出た答えがそれなのかっ!!



「まぁ、率直にいえば変態不審者さんですかね……?」



ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!



「あ、あの……変態不審者から……く、クラスメイトにランク上げするにはどうしたらいいのでしょうか?」


半べそかきながら聞くと


「え……とりあえず空気だけを吸って黙っておくとか?」


「ひ、雛ちゃぁん」


俺の様子に何を思ったのか雛ちゃんは「うっ……」とたじろいで「そうですね……」と真剣に考え込み



「かわいいかわいい言い過ぎです。正直、聞き飽きてます。あと好きもですかね。毎日聞いていたら軽く感じます。例えるならチャラ男のかわいいと好きと同じくらい軽いです」



「っぐ!?」



こ、言葉の刃がっ!!



「あと、出会うたびに大きな声で名前を呼びながらこっちに走って来るのも鬱陶しいですかね?」


「ギィぃん!!」



突き刺さる。



「というかそもそも智樹くんは距離が近すぎるんですよ。いつもついてくるし。正直、私以外の女の子ならとっくの昔に拒絶されてもおかしくありません。私だからいいものの……私以外の女の子には絶対にしない方がいいですよ」


「あ、あ、あ」



俺の心はもうボロボロだった。

こ、こんな思いをするのなら草や木に生まれたかった……



「……お、俺っ!! 決めたよっ!! これから雛ちゃんに好印象を持ってもらうために正しい距離で雛ちゃんと接するようにするよ!!名付けてプラマイゼロ大作戦だ!!」



「今の時点でかなりのマイナスなんですが……」


「雛ちゃん!! 明日からの俺を見ていてくれよなっ!!」


「……それじゃあ明日から雛ちゃんとかわいいと好きは禁止でお願いしますね」


「…………え……ごめん前言撤回させてもらって……ごめんなさいごめんなさい。そんな冷たい目しないでください」



こうして自分自身との戦いが始まった。



翌日


〜園田雛視点〜



朝、いつものように登校していると目の前に見慣れた背中を見つけた。


クラスメイトの三ツ谷智樹くんだ。


……今日も朝から智樹くんと遭遇してしまった。


これが仲の良い友達だったら走って声をかけるんだけど、智樹くんなのでそれはしない。

朝から疲れたくないし。


私は小学生の時から転校が多く、友達作りが苦手だった。

人見知りで誰にも話しかけられずにいた私にいつも明るく話しかけてくれた。


私より勉強が出来るくせに宿題とか授業のこと教わりにきてくれたりして。

それで私の教え方は上手なんてみんなに言って……そうやってクラスとの橋渡しをしてくれていた。


私が今、みんなと話せているのは智樹くんのおかげなのだ。


それに関しては今でも感謝はしている。


だから良い人ではあるんだけど、距離感がおかしい人。


毎日好きとかかわいいとか言ってくるし……テンション高いし……デリカシーはないし、馴れ馴れしいし、遠慮というものがないのだ。


だからついつい彼に対しては本音が出てしまう。

幸い向こうはこっちに気づいていないみたいだし、このまま距離を取ったままー


そう思った瞬間、前を歩いていた智樹くんがいきなり振り返った。


あ、目と目が合っちゃった。

しまったーと思わず身構えると智樹くんはふいと前を向きそのまま歩き出した。


……あれ? おかしい。


いつもの智樹くんなら大きな声で名前を呼びながらわざわざこっちまで走ってくるはずだ。

なのに、何事もなかったように振る舞う智樹くんに違和感を覚えた。



「……距離があったから私だって気づかなかったかな?」



誰もいないのにそう呟きながら学校へと向かった。


学校に着いて教室に入るとみんなからおはようの挨拶が飛んでくる。


……あれ?


いつもの真っ先に来る無駄に明るくて、大きな声が聞こえてこない。

教室を見渡すと確かにいた。

智樹くんは友達の岸田くんと喋っていたようだったが、ふと私に気がつくと手を軽く振った。



……え? それだけ?


いつもなら大きな声をあげて



『雛ちゃん!! おはよう!! 今日も可愛いね!!』



なんてそんなこと言いながらこっちまで走って来るはずだ。


なのに……


その光景を見て驚いていたのは私だけではなかった。

岸田くんも、教室に茜ちゃんも真奈ちゃんも驚いている。


教室内が少しざわついた。


ここに来て私は昨日智樹くんが言っていた事を思い出した。



『……お、俺っ!! 決めたよっ!! これから雛ちゃんに好印象を持ってもらうために正しい距離で雛ちゃんと接するようにするよ!!名付けてプラマイゼロ大作戦だ!!』



まさか、本気だったとは……まぁ、静かなのはいいことだと思いながら私は席についた。




昼休み、お弁当をカバンから取り出していると智樹くんが私の席に来た。



「な、なんですかっ」



朝の事があったせいかついつい声が変に高くなった。



「え……なんですかって……園田ちゃん消しごむ落としたから拾っただけだよ?」



え……なんで名前……えっ……え?



はいと言いながら消しゴムを渡し、智樹くんは教室を出て行った。



「雛ちゃん……三ツ谷くんと何かあったんですか?」



弁当を食べながら真奈ちゃんが心配そうに聞いてきた。

何かあったというか……なんと言うか。



「別になにもないですよ」


「えーでもでも今日の三ッ谷っちなんか変じゃない?」



私の言葉に突っ込むように茜ちゃんが反論した。



「昨日言っていた作戦なんじゃないですか?」


そういうと二人は思い出したかのようにああと声をあげる。


そうだ。

さっきも苗字で呼ばれて動揺してしまったけれどそもそも私が名前で呼ばないでと言ったからだ。


だから驚くことはなかった。



「……せいぜいもって3日と見たね。でもその間ひなちゃん的には寂しいんじゃないの〜?」


「別に……寂しくなんてありません。逆に静かになって落ち着くくらいです」


「あはは……」



からかう茜ちゃんの言葉に反論する私を見て真奈ちゃんは苦笑いをしていた。




しかし、茜ちゃんの予測が外れ、智樹くんの様子は変わらず日が経っていき、とうとう1週間が経った。


放課後、帰る準備をする。

今日は茜ちゃんも真奈ちゃんも部活とか委員会とかで居ない。


いつもなら、ここで智樹くんがどこからか現れて



『雛ちゃん!! 今日は一人で帰るのかい!? なら俺と一緒に帰ろうよ!!』



なんて言ってついて来るのに姿すら見せない。


久々に……一人だ。


誰もいない夕焼け色に染まる教室。

どこか寂しさと儚さを感じる。


ふと窓際にある智樹くんの席に座り、机に突っ伏して寝た。

机にべったりと顔をつけ、夕焼け色の空を見る。



別に仲が悪くなったわけじゃない。

朝学校であったら普通に挨拶するし、用件があれば普通に話す。


それに私に対する話し方も素っ気ない事もなく今まで通り優しい声色と口調で話す。


でもそこには私に対する遠慮があって……いやむしろこれが普通の距離感というやつなのだろう。


だけど


なんだろうこの見えない壁のような距離感は。


少し智樹くんが遠くに感じる。


これじゃあ……ただのクラスメイトじゃないか。


そうじゃないだろうと思った。


私と智樹くんの関係は実際はそんな綺麗なものじゃなくて、もっと雑で、だけど鬱陶しいほど距離が近くて、気軽で言いたいことが言えて、一緒にいるのが当たり前なー



「いや、なに考えてるんだろう……私は」



そもそも私が言い出したことだし……というかなんで智樹くんのことなんかでこんな悶々としなくちゃいけないのだと心の中で愚痴った。


それでも……心の奥がチクリと痛む。


もしかしたら、作戦とか関係なく、普通に距離を置かれてしまったのではないか?


ふと、そんな事を考えてしまう。


それは……いやだなぁ。


認めたくない。

認めたくないけど……私、智樹くんに距離を取られて寂しいんだ。


私にとって智樹くんはに大きな存在だったのかもしれない。


「……よし」




翌日


〜三ツ谷智樹視点〜



……今日でプラマイゼロ作戦を実行して9日間が経ち、俺の心は限界に達していた。


おおっ……雛ちゃんに話しかけたいっ! かわいいって言いたいっ!! 好きと伝えたいっ!!


秘めることによって俺の雛ちゃんに対する想いは爆発寸前だった。


風船でいうと空気を入れすぎて破裂しそうなくらいだ……

今日も遠くから雛ちゃんを見守りながら後方彼氏面ごっこでもして気を紛らわせるか。


そう思いながら登校していると



「おはようございます。智樹くん」


「ああ、おはよう! 雛ちゃんってええええええええええ!?」



後ろから雛ちゃんに声をかけられた!!


なっ!? え!? こ、声をかけられた!? 雛ちゃんから!? な、なにが起こっているんだ!?



「もう……そんなに驚くことないじゃないですか」


「あ、ご、ごめん……え、えとどうかしたの? な、何か俺に用かな?」


「? いえ、特にないですよ。用がないと話かけちゃダメですか?」


「いや!! そんなことないよ!! むしろ光栄なことだと思っていますよ!!」


「そうですか……」


少し安心したように微笑む雛ちゃんはべらぼうに可愛かった。


どうなっているんだ? え? 俺今日死ぬのかな?


動揺していると雛ちゃんと手が当たってしまった。


「あ、ご、ごめん!!」


あれ? 動揺して気がつかなかったけど、めちゃくちゃ距離が近くないか?


「あ、えと……このままだとまた手が当たっちゃうからちょっと離れるよー」


「なら、いっそのこと手でも繋いじゃいますか?」


エッ!?


「えええええええっ!? あ、あ? エ、お、おう?」


手をこちらに差し出す雛ちゃんを見て驚きのあまり吃ってしまった。



「何を驚いているんですか? 冗談に決まってるじゃないですか」


「え!? あ、じ、冗談か!! だよね!? あはは!!」


「もう……」


雛ちゃんは呆れていたが手が触れ合うような近さは変えず学校まで一緒に歩いた…


その後、学校に着き、教室に入って早々



「お、なんか久しぶりに2人で揃ってるの見た気がする〜」


まぁ……確かにここ1週間あまりは距離を取っていたからな。



「やっぱり雛ちゃんは三ツ谷と一緒がしっくりくるな〜ってあれ? いつもより距離近くない?」



ですよね。僕もそう思います。



「そうですか? 私はこのくらいの距離がちょうど良いですが。智樹くんの隣は安心感がありますし」


「「「「!!??」」」」



ひ、ひ、ひ、雛ちゃん!?


おいおいおいもしかしてドッキリか!? ドッキリなのか!?


クラスの奴らを見ても全員が俺と同じように驚いていた。

友人の茜ちゃんと真奈ちゃんですら明らかに動揺している。



「あ、そうだ。確認したいことがあるんですけど」


「は、はい!! なんでしょうか!?」



思わず敬語を使ってしまう。



「最近……どうして私のことかわいいって、好きって言ってくれなくなったんですか?」


「えっ!?」



それはプラマイゼロ作戦でひなちゃんへの印象を変えるために……



「……もしかして、私のこともう好きでなくなっちゃいましたか? 私、可愛くなくなっちゃいましたか?」



「滅相もございません!! 今この瞬間もわたくし! 三ツ谷智樹は園田雛の事を愛しております!! かわいいと思っております!!」



背筋をピンと伸ばし、魂の叫びが教室中に広まった。



「……そうですか。ほっとしました。もし前言っていた作戦をしているのなら、もうやめてください。私……寂しいです」


「なっ? かっはっ!!」



い、いかん……ありとあらゆる液体が全身から噴射しそうだ……

違う意味で破裂する。


こ、こんなのし、死んでしまう……尊死する……


「ひ、ひなちゃん!? ど、どうしたの!?」


友達の茜ちゃんが動揺しながら聞いた。

隣にいる真奈ちゃんも驚きを隠せないようだ。


「さっき言った通りです。智樹くんの私に対する距離感が変わって寂しいと思ったんです。そしてだからこそ気づいたんです」


「きづいたって……何に?」


思わずといった感じで岸田が雛ちゃんに聞いた。


「私は鬱陶しいほど近いこの距離感が気に入ってたんだなぁって」


「っ!! 雛ちゃん!! 好き!!」


思わずそう叫んでしまった。



「はいはい……」



俺の叫びはいつものように受け流されてしまったが、その声は、その表情は前より柔らかくなっていた…


俺はやっぱり……いや、より一層雛ちゃんのことが好きになった。










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[良い点] この2人の、この2人の続きは見れないんでしょうかー!? 僕は非常に見たいですぞー!
[良い点] シンプルにヒロインが可愛い
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