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牢の中の僕は愛を知っている  作者: 楠木 茉白
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その後、騒ぎを聞きつけた近隣住民が警察を呼んでいた様で駆けつけた警察官に事情を説明し僕らは警察署まで訪れていた。


「萩原先生!どういうつもりですか!あなたが行った事がどういうことか!」

「わかっています」

「いえ、分かっていません!」


水上先生もこんな風に激高して怒るのかと観察できるくらいその時の僕は自分でも驚くくらい冷静だった。


「では、あのまま彼女をおいていった方が良かったですか?結果的に良かったからいいじゃないですか」

「良くありません!今回はたまたま運が良かっただけです!もしあなたの判断が間違っていたら、ただの不法侵入です!」

「じゃあ、いつまで待っていたら良かったですか?あの状況で児童相談所が出す結論なんて分かっていたはずです、要観察、注意して観るなんてそんな流暢な事でどれだけ時間をおいてもただのイタチごっこでしょ」

「そんな事分かってる!あなたなんかにそんな風に言われなくたって!無力なことなんて分かってる!」


失敗した……僕は何をしているのだろう、水上先生を言い負かしたってしょうがないことなのに水上先生は勤務を真面目に定められた規定に沿っていることなんて分かっている。


規則、規定を守っていて全てが救える訳でもない、僕が行った無謀な行動で必ずしも良い結果ばかりになる訳でもない、ただの結果論なことも。


でも、あの子を見捨てていたら、僕は昔の僕を見捨てている様に思えて、自分を抑えられなかった。


「水上先生、萩原先生、二人とも落ち着いてください、今するべき事はお互いを責め合う事ではないですよ、今すべき事は保護した傷付いた児童をどうケアしていくか、皆で話し合っていくことが最優先です」

「宮沢課長……すみません、取り乱してしまって、そうですね、私は児童と面談してきます」


水上先生は少し潤んだ瞳を拭って、星空が待つ、警察署の会議室まで向かって行った。


僕自身、事情があるとはいえ、行った行為は不法侵入にあたるため、警察の事情聴取を受けて終えた後の水上先生とのやり取りで苛立ってしまっていた事に反省した。


「すみません、宮沢課長ご迷惑をお掛けしました……」


宮沢課長も流石に今回の僕がやらかしてしまった事には怒っているだろうと叱責を受けること覚悟した。


「いいえ、萩原先生の行った事は間違っていませんよ」

「えっ?」

「確かに、水上先生の言う様に児童相談所の職員としては萩原先生の行った行為は処分の対象になるでしょう、ですが、あなたの行った彼女を助けたいと行った行動は児童相談員としてはあるべき姿だと私は思います」

「僕は……」

「あなたの行動であの子は救われた、萩原先生、あなたは決して間違ってはいませんよ」


予想外の宮沢課長の優しい声に僕は嬉しい半面、なんとも言えない罪悪感に苛まれた。


僕は星空を本当に助けたかったのか、冷静になってみると分からなかった。なぜあそこまで大胆な事ができたのか、本当は過去の大人たちへの当てつけなのか、西山係長への贖罪なのか。


どっちにしろ、僕自身の為に他ならなかった。


それでも、星空が彩奈を求めた事に対して僕は理解ができないし、裏切られた気分になった。


「僕は本当に間違っていなかったのでしょうか……」

「どうかしましたか?」

「あの子は……藤原星空さんは母親に虐待を受けていたにも関わらず、母親と居ることを望んでいるようでした、僕には理解ができません、虐待を受けているのにどうして……」

「子供にとって、藤原星空さんの様な、まだ幼い子にとっては、どれだけ虐げられようと頼れるのは親だけなんです」


なんだよそれ……じゃあ、僕はどうなるのさ、僕には親なんていなかったじゃないか。


「それは、どうでしょうか……」

「萩原先生……あの、萩原先生、あなたは」


宮沢課長が突然、それまで穏やかだった表情が神妙な顔つきへと変わり何か僕に話そうとした時、僕の後方から大きな声が聞こえた。


「おお!やっぱりお宝じゃねぇか!」


その聞き覚えのある大きな声が僕に近づいてくる。


「萩原宝が連行されて来たって聞いたから、まさかと思ったけど!やっぱり宝じゃん!」

「あっああ、久しぶりだね一輝君」

「なんだなんだ、何やらかしたんだよ」

「それは……」

「冗談だよ、知ってるよ、いつの間にコスモ商事辞めて児童相談員に?せっかくコスモ商事の受付の子との合コンお願いしようと思ってたのにな」

「ごめん……」

「いや、美人の児童相談員でも問題ないぜ、さっきの女性なかなかの美人だったな」


清水一輝とは小学校からの同級生で同じ道場の同期でもあって社会人になるまでは竹刀を交えた中だ。


「萩原先生、お知り合いですか?」

「はい、彼は小学校からの同級生で清水一輝君です」

「そうなのですか」

「清水一輝巡査です、東署で刑事してます、宝の上司の方ですか、宝は良い奴なんでよろしくお願いします」

「ええ、宮沢と申します」

「ご丁寧にどうも、すみません、名刺きらしてて」

「いえいえ」

「課長さんなんですね」


東署には剣道の稽古で何度か訪れていたので知人に会うのではないのかと懸念していたが、このタイミングで声を掛けてくれたのは助かった気持ちになった。


「おい、それにしてもさっきの人も美人だったけど、課長さん美魔女だな」

「ぅ、うん……そうだね」


助けられたけど、流石に今は一輝と楽しく話をする様な雰囲気でも気分にもなれなかった。


「おい!一輝!何やってんだ!」


後方から野太い声が聞こえてくると、一輝の背筋がピンッと伸びるのがわかったが、僕もこの幼い頃から聞き慣れた野太い声に緊張し、背筋が伸びた。


「山名警部補、お疲れ様です!」「お疲れ様です!」

「一輝、油売ってんじゃねぇぞ」

「あっ、山名警部補、宝です」

「そんなの分かってんだよ」

「お久しぶりです、山名先生」


山名太蔵警部補、山名先生は僕の小学生の頃からの剣道の師範で稽古では厳しく厳格に指導を受けていたため社会人になった今でも山名先生に会うと背筋が伸びる様な想いになってしまう。


「宝、お前児童相談員になったんだってな、お前の伯父さんから聞いたぞ」

「はい、山名先生に報告が遅くなりました」

「そんな事はどうでもいいんだが、お前が宮沢さんの部下か、まぁお前は商社マンより今の方が合ってるよ」

「警部補、宮沢課長とお知り合いなんですか?」

「ああ、そりゃあ児童相談員と警察は良くも悪くも顔を会わせるからな」

「ええ、でも山名さんが萩原先生のお師匠でしたのは以外ですけど」

「宮沢さん、すみませんね、こいつらの指導はしっかりしてきたんですけど、宝は引っ込み思案な割に正義感の強いヤツなんで許せなかったんでしょう」

「そうですね」

「まぁ、今回の件に関しては、向こうさんもバツが悪いんで不法侵入については訴えることはないので、こちらについては終了です」

「そうですか、どうもありがとうございます」

「あとの娘さんのことはお任せしてもよろしいですか?」

「ええ、あとはお任せください」

「あ、あと、宝を少し借りさしてもらってもよろしいですか?まだ聞きたいことがありまして、あとでパトカーで送っていきますんで」

「えっ、ええ、まだ何か?」

「すみません」

「分かりました、よろしくお願いします、では萩原先生後ほど」


僕は山名先生に残る様に言われてドキッとしたが、内心すぐに水上先生と顔を会わせるには心の準備が出来ずにいたから助かった。


「あの……お話しって?何かあるのでしょうか?」

「そんなもん、ない」

「えっ」

「強いて言うなら、仕事辞めたんだったら警察に呼んだんだがな、丁度次の大会にお前を出したかったんだが」

「すみません……」

「冗談だ、半分な、本当はお前若い先生と言い合いしてただろ、今すぐには気まずいだろ」

「あ、はい……」


流石山名先生だと敬服させられた、昔から山名先生は見ていない様で良く人のことを見ている。


「ありがとうございます」

「そう思うんだったら道場にたまには顔を出せ」

「そうだぞ、少しは顔出せよ、腕がなまるぞ」

「一輝、お前は少しは腕を上げろ」

「はい……」

「なんだったら、今からでも稽古つけてやろうか?」

「今からですか!流石に……」


今からは流石に冗談だろが、稽古という気分ではない。


「今のは本気だ」

「ええ!」

「冗談だ、宝、お前が児童相談員とはな」

「やっぱり、おかしいですか?」

「いや、俺は商社マンをやってるお前の方が想像出来なかったよ、今のお前の方が俺の知ってるお前らしいよ」

「そうですか……自分では分からないですけど」

「子供の頃から見てきた俺からしたら、真面目で表には出さないがお前の正義感の強さは商社マンよりよっぽど児童相談員が宝には合ってる」

「正義感ですか……?」


僕自身に正義感があると言われても、ピンとくるものはないが山名先生にそう言っていただくと素直に嬉しくなった。


「まぁ、今回の件に関してはお前は良くやったよ、どれだけ心の中で思ってても行動ってのはできるものじゃねぇんだよ、お前がどんなつもりであってもあの子を助けた事には変わりはねぇよ、職員としての何たらかんたらってのはあとは上のもんに任せりゃいいんだよ」

「山名先生……ありがとうございます」

「煮詰め過ぎんなよ、一輝、送ってやれ」

「うっす」


山名先生には申し訳ないが、やっぱり僕には先生の思う様な正義感はあるとは思えなかった。児童相談員になったのもたまたまで仕事は生活のため、それ以上でもそれ以下でもない僕の心は冷めきっていた。





その後、僕は相談所に戻り、気持ちを落ち着かせて水上先生に非礼を謝罪した。


僕は心がこもっていない事を悟れないようにいつも通りに接したが水上先生には見透かされている様な気がしたが、もうそれでも構わないと自暴自棄になっていた。


それからの僕は淡々と勤務に勤しんだ、自分自身の感情を出すことなく、ただ淡々と、半ばやけになっていたのかもしれない。


僕がどう感じどう思おうとも、それは僕自身の自己満足にしかならない、それなら僕は児童相談所の職員としてマニュアル通りに上司の指示通りにしていた方が賢い。今までもそうやって生きてきた、今更抵抗なんてない、僕はただの駒なのだから、そう自分に言い聞かせた。


そんな風に淡々と勤務を毎日同じ様に行っていると時間が過ぎるのはあっという間で、いつの間に夏も終わろうとしていた。


「萩原先生なんか、元気ないね?」

「そうですか?普通ですよ」

「そうかな……なんだかさ、ここの所ってか、ずっと元気がない気がしてさ」

「そんな事ないですよ、僕は普通ですよ」

「そういうところ!全然元気ないじゃん」

「元気……ではないかもしれませんね、でもいつも通りですよ」

「言われてみたら初めからそうだけど、何か変だよ」

「そ……そうですか?」


打田先生にはそう見えているのか、僕からしたら初めと何が変わったというつもりはない、確かに水上先生と一悶着あったが社会人としてはそんなの日常茶飯事な事で別に引きずることでもない。でも僕の中で何か変わったかと言われたら、それは変化というよりは悟ったという気持ちだろう。


「打田先生、来週の研究発表の設営についての支出の資料を上げてください、それと西中学校から講習会の打ち合わせの連絡がありましたので、折り返し連絡してください」

「あはい、まぁ、とにかく変てこと!」

「はぁ……」


水上先生もあの後から今までと変わらない様子だったが、内心は僕の行動を許せなく思っているのかもしれない、教育期間が終わった事で話す機会が減るものだが、それを差し引いても水上先生との会話は目に見えて減った。


でも僕にとってはこの児童相談員という仕事はどんな仕事とも変わらない、ただ生活していくための手段に過ぎない。


ここは居場所なんかじゃない、僕の居場所はあの小さな1LDKのアパートくらいなものだ。


「萩原先生、ちょっとよろしいですか?」


デスクで事務仕事に勤でいると宮沢課長が唐突に僕を呼んだ。


「はい」

「萩原先生、面談室までお願いします」

「はい、すぐに行きます」


なんだろうか、気になりはするが、わざわざ面談室で話すことなんてない訳ではないが、とりあえず周りを片付け宮沢課長の元へ向かった。


「失礼します」

「どうぞ、座って下さい」


面談室のテーブルの上にはいくつかの資料が置かれていた。


「これは藤原星空さんですか……」

「はい、来週、藤原星空さんを親元に戻すことが決まりました、その後の担当を萩原先生にお願いしようと思いまして」

「えっ!僕にですか?」

「はい」

「ですがこれは水上先生が担当されていたもので、僕には……それに星空さんをあの親に戻しても大丈夫なんですか!?」

「それについては確実な事は言えませんが、面談や指導を行ってきた中で彩奈さんの心が変わっている事を感じました、星空さんと生きる事を心の底から望んでいることも。それでも悲しい事ですが、どれだけ指導を行ってもそれが確実な効果がでるとは言えません、ですから私たち児童相談員が親元での健全な生育環境をサポートしていくのです」

「そんな事、僕でなくて慣れてらっしゃる水上先生がやった方がいいのでは?今の僕でまともなサポートが出来るかは分かりません、それにあの母親は僕にいい印象は抱いていないと思いますが、それでも上司の指示ですからやりますけど」

「萩原先生……」

「では分かりました、勤務に戻ります」


なぜだろう、自分でも分からない、どうしてこうも反感を買う様な態度をとってしまうのか、僕自身、自分が嫌になる。


「青山宝くん」


僕は突然その名で呼ばれ、ドアノブに触れていた手が止まった。まるで背骨を掴まれた様に体中が痺れた気がした。


「青山宝くん、よね」

「……どうしてその名前で」


青山は父方の名前だ、宮沢課長がその名前で僕を呼ぶという事は僕の過去を知っているという事だ、牢の中にいた僕の事を知っている。


「萩原先生、私は二十年前、あなたを担当していたの」

「そうですか、でも、もう僕はあの頃とは違います、ちゃんとした里親の元で育てられ、大学まで卒業させてもらっています、今の僕は何も知らない哀れな子供ではないんです」

「哀れだなんて……、そうね、今の萩原先生を見ていたら分かります、ご両親に大切に育てられた事が」

「はい、ですので、青山とは僕はもう何の関わりはありませんので」

「萩原先生」

「では、失礼します」


嘘だ、青山と、青山宝との関係を断つことなんて出来る訳もない、どんな時だっていつも付いて回る、宝という名前を聞くたびに僕を支配する。


宮沢課長はその事に気付いているのか、それとも哀れんでいるのか。


面談室を出てすぐに扉の前に打田先生と水上先生が立っている事に気がついた。


「ごめん……萩原先生、立ち聞きするつもりはなかったんだ」


二人に聞かれてしまったが、もう今更隠すのもバカバカしく感じた。今更どう思われようと構わない、どうせ仕事は生活の為の手段、それ以上でもそれ以下でもないから、もう心なんて持つ必要なんてない。


「いえ、大した事ではないので」

「えっ、萩原先生」


もう構わないさ、働いて、お金をもらって、家に帰る。それだけで十分だ、僕には贅沢なくらいだ。


この職場での居づらさは否めないが、仕事を淡々とするだけだ、デスクで仕事をし、休憩中は自動販売機の前のベンチでコーヒーを片手にぼーと時間を潰すだけ、何も変わらない。


「萩原先生、どうぞ」

「えっ……ありがとうございます」

「まぁ、もう一杯コーヒー付き合ってよ」


そう言って、打田先生はアイスコーヒーをくれたが、僕はホットコーヒー派なのだが、流石に奢ってもらってそれは言えない。


「もしかして、ブラックじゃなかった?」

「あっいえ、大丈夫です、ありがとうございます」

「そっか……牢の中のお宝くん……水上先生が子供の頃に一時期話題になってたって言っててね、俺も意味は分からなかっけど、確かに小学生の頃にそんな話を聞いた記憶があってね、それが萩原先生の事だったんだね」

「そうです、僕の事です、可笑しいですよね、こんな奴が児童相談員だなんて」

「いいや、そんな事はないよ」

「僕の本当の親は僕を動物の様に扱い、教育とは程遠い仕打ちをして、挙句の果てには父は逮捕されて、両親はどこかへと消えた」

「そっか……こんな言い方して悪いけど、この仕事をしているとね、萩原先生みたいな子って珍しくないんだ、だからって訳でもないけど、驚きはしたけど、先生の事を可笑しいなんて思わないよ」

「そうですか……」

「水上先生だってそうさ。萩原先生、水上先生と揉めたんだってね」

「え、ええ」

「水上先生ってあんな感でお堅い人って感じじゃない、でもね、新人の頃はああじゃなかったらしい、仕事に熱意を持ってて正義感の強い人だったってね」

「そうなんですか?」

「ああ、でも、新人の頃に担当した児童が自殺したんだ」

「えっ……」

「その子は自傷癖があって、ほうっておいたらすぐに自傷行為をしてしまうくらい重症でね、水上先生はその子を助ける為に熱心に相談にのっていて、休日も返上して、でもそんな事いつまでも続けらる訳なんてなかった、その子が相談があって水上先生に連絡を入れたらしいんだ、でもその時水上先生はその子の連絡を気付く事が出来なかったんだって、気付いた時にはもうその子は自殺してしまっていて、先生は凄く責任を感じて辞表を提出する程だったって」

「でも、それは水上先生の責任なんですか?」

「いいや、死人を悪く言いたくはないが、遅かれ早かれ自殺は免れなかった事だと思う、どれだけ頑張ったって成果がでるとも限らないし、その子の自殺を止める方法があったかなんて、今となっては分からないしね、それでも水上先生は自分を責めた、あの時電話に出られたら、もっと上手くやっていたら、自分じゃなくベテランの先生や上司に相談していたら、タラレバを言えばきりはないけどそれでも自分を責めるしかなかったと思う、だからこそ、規則や上司の指示を遵守するんだと思うよ」

「そうだったんですね」

「こんな事言って萩原先生の気が晴れる事はないだろうけどね」

「すみません……僕には、何と言っていいか」

「いや、難しいよね」

「でも、打田先生はとても良い人ですね、それに僕なんかと違って児童相談員としても人としても、ちゃんとしていますね」

「そうかな……俺は、これは自分自身の為でもあるから」

「えっ?」

「いやなんでもないよ、俺がこんな事言ってたのは、水上先生には内緒にしてね。萩原先生あんまり抱え込まないで、大した力にはならないかもしれないけど、せっかく同い歳の同僚なんだから、俺でよかったらなんでも相談にのるよ」

「ありがとうございます……」


打田先生の優しさには理由があるみたいだが、今の僕にはそれでも救いにはなった。苦いコーヒーはいつもよりも苦く、アイスコーヒーは少し歯に染みた。










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