プロローグ
始めての執筆です。
拙作ですがよろしくお願いします。
『人間』であるための条件とは何だろうか
そんな質問をすると彼女はただ一言「死ぬこと」と答えた。
その答には彼女自身が今まで老いることも死ぬこともないが故に、≪人非ざる者≫として扱われてきた経験からのものであることは想像に難くない。
僕がそんな風に思っていると彼女は同じ質問を聞き返してきた。
その問いに対して僕は「感情かな」と答えた。
無論、他の動物にも感情はある。
しかし、人間の感情ほど複雑で奇妙なものは他にないだろう。
「そもそもどうして私にこんな質問をした」
「いや、大した理由じゃないんだけどさ。フレアは自分自身は人間ではないというけど、僕から見たら普通の女の子にしか見えないから」
「その理由はなんだ」
「フレアはいつだって誰かのために動いているからかな」
僕はこれまで他人の悪意をこの身で感じてきた。
自分の勝手な物差しで人を蔑む者、それに同調する者、他人事だと見て見ぬふりをする者。
皆、自分の利益だけを考えて他人を鑑みない。
今まで見てきたのはそんなものばかりだった。
僕から見れば彼らこそが≪人非ざる者≫であり、逆に言えば他人のために動けるフレアは強い人間だと言える。
「長い間生きてきたが、そんなことを言われたのは初めてだよ」
理由を聞いた彼女は少し間をおいてはにかみながらそう答えた。
これは人に成りたいと願う不老不死と、人を信用できない男子高校生の話。