表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: TM

「ん…ここ、どこ?」

目を覚ました私の前に広がっていたのは、どこかの教会のようだった。記憶がぼんやりとしていて、自分のことも分からない。後ろにある入り口は閉まっていた。

「人、探すか…」

人を見つけて、開けてもらおうと、廊下を歩き出した時、一つの写真が目に止まった。棚の上にのった写真たてに飾られている写真は、小6くらいの私の写真だった。写真の中の私は、友達と話しながら、笑っていた。

「あれ、なんでこんな写真が…?」

もう一度私が写真を見ようとした時、私は眩い光に包まれた。

「え?」

私は気を失った。


目を覚ますと、そこは教室だった。なんだろう、浮遊感がある。そう思うと、私は天井の隅から、教室を見ていた。そして、その先に目をやると、昔の私が立っていた。

「え?」

訳が分からなくなりながらも、様子を伺う。昔の私の元へ、一人の女の子が近づいていく。あぁ、そうだ。この時、親友が転校したんだっけ。確か、あの女の子は、私に「私のグループ入りなよ」なんて、いってきて。でも、私はそのグループのギスギスした感じが嫌いで……。そんなことを思っていると、女の子は私に話しかけ、誰かの悪口を言っていた。昔の私は、その言葉を聞いて、少し作り笑いをして、言葉を濁していた。ふと、自らの目から涙が出ていることに気がついた。

「あれ、なんで…」

それとともに、私は意識を失った。


目を覚ます。変わらずそこは廊下だった。写真は無くなっている。目元に触れると少し濡れていた。

「疲れてるのかな…」

そう思いつつ、再び廊下を歩いていると、再び写真があった。また同じことなのか、と思いつつも好奇心を止められなかった。その写真に手を伸ばすと、再び眩い光に包まれ、意識を失った。


今度も教室だった。でもさっきまでとは違う教室。これは中学生の時の教室だったっけ。私の姿を探すと、机で突っ伏していた。この記憶はもしかして……

「ねー、佐藤さん寝てるよー、みんなうるさくしよーぜ!」

なんて言っている男子がいた。

「なんで寝てんの?」

そう聞かれた過去の私は机に突っ伏し続けていた。

「ねえ、なんで?」

しつこく聞いてくる男子に痺れを切らしたか、か細い声で

「お腹痛い」

とだけ言う。

「頭痛いの?じゃあ、うるさくしよー」

と言われ、何か言おうとした私だが、気力もなく、そのまま突っ伏してしまった。教室の空気は少し凍っていた。確か、この時、生理痛がひどくて、言葉を発する気力もなくて、諦めたんだっけ。すると、そこに、友達がきて、私に話しかけた。

「大丈夫?」

いや、大丈夫じゃないだろ…どう見ても。

「大丈夫だよ」

昔の私は体を起こし、笑ってこたえた。そっか、この時も、無理してたんだ。…あれ、なんで、この時「も」なんだろ…。そう思っていると現実に引き戻された。


目を覚ませば、もちろんそこは廊下だった。顔を上げると前に人影が見えた。

「あ!あの」

そういうと人影は走り出してしまった。

「あ、ちょ、ちょっと待ってください!!」

追いかけたが、もう角に人はいなかった。

「なんだったんだろ…」

すると

「あの…」

「はい!?」

後ろから話しかけられ反射的に返事をする。

「え?」

そこにいたのは幼い私だった。

「え、え、あなたは」

「一つだけ助言があって」

私の言葉なんて無視して、少女は話を進める。

「もしこの先に進むなら、この先の写真を見るつもりなら」

少女はそこで言葉を切った。重い沈黙。

「絶対に自分を信じ続けてください」

そう言って少女は駆け出した。

「え?ちょ、待ってよ、どう言うこと?」

そう言っても少女は止まってくれなかった。こんなところで止まっていてもしょうがない。先に進んでいくと、扉があった。その扉を開けるとその壁には大きな絵がかかっていた。なぜか見たことのあるように感じる、黒を背景にし、泣いている少女の絵。何も考えず、その絵に近づいていくと、再び、光に包まれた。でも、すぐに意識を失わなかった。心の中でこれはやばいのではないか、と思い戻ろうとするが、戻り方も分からずなされるがままになる。その光が弾けた時、目の前に広がったのは、自室で泣いている私の姿だった。ドアの外から喧嘩の声が響く。これは…と思い出す前に光が弾ける。

「どうせ自分が偉いと思ってるんでしょ?」

リビングでそう言われ、俯く自分がいた。違う、違う、そんなこと思ってない、という心の声が聞こえる。母親がその場を離れると、すぐに自室に戻り、再び泣いていた。ああ、これ…すぐに光が弾ける。

教室だった。

「里穂ちゃんは天才だもんね!!」

「そんなことないよ」

友達にそう言われる私がいた。私は努力してるから、できてるだけなのに。心の声が聞こえる。私は辛そうに笑っていた。そんな私を見ているうちに、脳が混乱を起こし始める。あれ、私、なんでこんな無理してんの?なんで、こんな頑張ってんの?光が弾ける。

「生理痛とか言うけどそんなたいしたことないんでしょ。めんどくさいからサボらないでくれる?」

机で突っ伏している私にクラスメートが話しかける。私は、無理に体を起こし、ごめん、とつぶやく。よろよろと歩き箒をとり、掃除をする。それを見て、満足したのかクラスメートが立ち去る。私は何ども箒を支えに痛みに耐える。なんで、なんで、こんな頑張ってるの?なんで、なんで、なんで。混乱を起こす。頭の中に声が流れる。

「死ねば楽になれるよ」

分からない。本当に死んだら楽なの?

「そうだよ、だから死んじゃいなよ」

そうなの、かな。でも、私は残してきたものがたくさんある。

「そんなものないよ。誰も君を待ってない。ほら君の手元にあるだろ?君の自殺のためのものが」

それを手に取り恐る恐る、首に当てようとする。そこに誰かの声が聞こえる。ああ、この声、知ってる。私が一番大事に思ってる人。

「…ほ、り…、里穂、里穂!だめだよ!!帰ってきてよ!!」

だめだ、こんなところじゃ死ねない。手に持ったものを床に叩きつけ、声の方に走り出す。

「戻るな!そんなものは幻聴だ!」

そんな訳ない。私はまだ必要とされてる、死んでる場合じゃない!

ふっと光が途切れる。気を失う。


薄く目を開けると、そこは病院の天井だった。目の前にいたのは、私の一番大切な人。そして一番の親友だった。

「ゆい…」

「何してんのよ!ばか!!誰からも必要とされない、なんて言わないで!!」

「ゆい、ごめん…」

おそらく私の遺書を読んだんだろう。すごく怒っていた。

「ばか…」

起き上がった私に抱きついて、ゆいは泣いた。不意に少女を思い出す。あの子は私に警告をしてくれてたのかな?安心した私は、眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ