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36  作者: 川之一
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99. 兄貴と積年の恨み


 暗いトンネルの中を壁に伝いながら進んで行く。


 入り口に向かってかなりの距離を戻ってきたが、未だにザンツィルの姿は見えてこない。もし、ザンツィルがいるのならばライトの光が見える筈なのだが……審判のコインに怨みを持つ念に襲われてしまったのではと不安が押し寄せる。

「ザン兄貴ーー⁉︎ どこにいるんすかぁああ⁉︎」

暗いトンネルの中で何度も叫んでいるが返事は返ってこない。


 「まさか……」

思い出した自分の勘。


 ──『ザン兄貴を一人にさせると……何処かで死んでしまうような気がするんす』


 アネアに言った言葉を思い出していた。変なところで当たる自分の勘は恐ろしさすら感じる。力が抜け歩いていた足を止めると、壁に凭れ掛かった。

「ありえねぇっすよ……兄貴は簡単に死ぬような人じゃねぇっす」


 まだ、希望を捨ててはいけない。壁から左手を離し大きく息を吸う。

「ザン兄貴ぃいいいいい!!!!」

枯れている声で精一杯叫ぶと、トンネル内に大きく反響していった。


 トンネル内にいると信じ、耳を澄ましながら返事を待つ。


 ──「奥へ」


 「⁉︎」



 トンネルの奥の方から風を感じる……?



 急いでトンネルの奥へと戻り始めた。先程まで風はトンネル内に吹いていなかった。もしかしたら、誰かがトンネルの奥にいるのかもしれない。


 トンネルの奥の方へと戻ると出口を塞いでいた筈のコンクリートの壁は壊れており、光が差し込んでいた。ハンディライトを持っていないので地面に何があるかは分からないが、走らずにはいられなかった。


 「すっ⁉︎」


 壊れた壁の付近に座りながら壁に凭れ掛かったままのザンツィルがいた。

「ザン兄貴‼︎」

慌ててザンツィルの元へ駆け寄る。目を瞑ったまま返事がない……どうやら気を失っているようだ。


 「兄貴、しっかりするっす‼︎ 兄貴‼︎」

何度呼びかけても起きる気配がない。顔に血の痕がある……やはり念に襲われたのだろう。念との戦いによって壁が壊れてしまったのだろうか。ぶつかったような大きな岩も壊れた壁の付近に転がっていた。

〈あの岩で、まさかザン兄貴が?〉

だとしたら相当な番力を使ったのかもしれない。疲れの所為で気を失っているのだろうか。


 何度も揺さぶりながら呼びかける。

「目を覚ますっす‼︎ ザン兄貴‼︎」




 ─────



 夢の筈なのに、何故か苦しく感じる……。


 〈こ、この離せって‼︎〉

落ち着いていられない状況だ。早く自分の左足を掴んでいるこの左手を離さなければ水上に戻れなくなる。

〈夢……だろ、これ……? どうなってるんだよ……⁉︎〉

沈んだまま意識が遠のいていく。



 「こうなったら、すまねえっす兄貴‼︎ うぉらぁあああ‼︎ 積年の恨みぃいいいっすぅう‼︎」


 ──パァァアン!


 左頬に激痛が走る。


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