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36  作者: 川之一
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95. 引っ張る手(旧五野八編13)


 ──ゴゴゴゴゴゴッ


 坂から轟音と共に大きな岩が転がってくる。


 急いで自分も後方へ下がらなければ危険だ。


 慌てて来た道を戻る。だが、36番力を使い過ぎた所為か眩暈が酷くなってきていた。目を何度も瞑って首を横に振るが、全く治まる気配がない。


 もし、倒れてしまったら……。


 〈や、やべぇって‼︎ しっかり前を見ろ、オレ‼︎〉

持っているハンディライトの光が左右に何度も回転しているように見える。しっかり走っているつもりなのだが前に進んでいるのだろうか。


 〈そういえば、旧五野八(ごのや)トンネルに来る前にも眩暈があったな。36番力を使った後だったか〉

番力を使い過ぎてはいけないという話は聞いたことがない。だが、何度も起こる眩暈の原因は何なのだろう。車を運転するので、眩暈が何度も起こるのはとても困るのだが……。

「いったいどうなってるんだよ‼︎ くそっ‼︎」


 ふらふらとしながらも走り続ける。


 だが、トンネルの奥の壁からまだあまり離れていなかった。走っているつもりでいたが、両足はしっかり動いていなかったようだ。


 ──ゴォオオオオオオッ


 轟音が更に近付いてくる。

「足ぃいい、進んでくれぇえええ‼︎」

ハンディライトを掴んだまま、地面に這い蹲って必死に少しでも進もうとしていた。


 この距離だと、岩と壁がぶつかって崩れてきた瓦礫に自分も巻き込まれるだろう。


 大量の汗が出てくると同時に両手の震えが酷くなってくる。恐怖で両手が震えているわけではなく、眩暈からくる気持ち悪さで倒れそうになっていた。止まったまま眉間に皺を寄せながら目を瞑ってしまう。


 「……」

もう、先に進めそうにない。


 両手足が全く動けなくなっていた。



 何者かの気配を感じ、瞑っていた目を開ける。



 ──「ザンツィル‼︎」


 シュサヌが自分の左手を引っ張ってくれたようだ。


 「す、すまねぇ……」

引っ張ってくれた勢いで地面から立ち上がり、シュサヌの肩を借りながら急いで後方へと下がった。


 その数秒後。


 ──ドォオオオオンッ‼︎


 勢いよく転がってきた岩と壁はぶつかり、薄いコンクリートの壁は大きな亀裂が入ると崩れていった。




 旧五野八(ごのや)トンネル内に外からの日差しが差し込む。




 

 壁に凭れ掛かったまま目を細めながら外を見ていた。シュサヌも隣で外を見ている。


 外の明るさからすると、今は午後の時間帯だろう。

「まだ、そんなに……時間は経ってなかったのか。こりゃあ、たぶ……ん、今は……十四時ぐらいだな」

「フフ、当たってるのかい? ザンツィル、本当にありがとう」

光に照らされているシュサヌの笑顔を見ると、自分も自然と笑みがこぼれていた。


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