86. 過去の5番と8番(旧五野八編4)
だが、ふと疑問に思った事がある……念達が言っている言葉の意味が分かる本なんてあるのだろうかと。シュサヌは何の本を読んで勉強したのだろう。当時の五野八トンネル内で起きていた不可解な出来事が書かれている古びた三枚の紙しか自分は読んでいない。
〈ん? 待てよ。オレは確か……〉
二枚程見たら、すぐに机の上に置いていたような気がする。
もしかしたら、三枚目に旧五野八トンネルの長さについてなどの細かい情報が書かれていたのではないだろうか。
〈だとしたら……やっちまったぁぁあ〉
今回の依頼を少し甘く見ていた自分が馬鹿だったと反省する。
「なぁ、何ていう書名の本にこのトンネルのことが書かれているんだ?」
どんな事が書かれているのか気になっていた。書名を聞いたら、自分もレェーン図書館に行き少しだけ読もうと思っていた。
「アハハ! まさか、読みたいのかい? 書名はねぇ……秘密」
「秘密って、教えてくれてもいいだろ⁉︎ オレだって過去の5番と8番の戦いがどんなのか気になるんだよ!」
そう言うと、シュサヌの顔から笑みが消える。
「ザンツィルが知る必要はないし、もういいんだよ。戦いは終わったのだから、彼らは眠るべきなんだ」
「……」
何故か自分は黙ってしまった。シュサヌの表情を見て悲惨な戦いだったのだろうと思ったからだ。戦いで命を落とし、未だに審判のコインを持つ者を敵として怨み続けている。
「眠れないまま、ずっとか……」
審判のコインを持ちながら見つめていた。
念達がトンネル内で不可解な出来事を起こしていたのも、想元山にまだいると思っている5番と8番を想い、静かにしてほしかったからなのだろう。
怖がらせれば、誰も通らなくなるかもしれないと。
「何か……重いな。オレはあんまりお化けとかホラーとか信じねぇからさ。まだどこかで嘘なんじゃねぇかって思うんだ」
「本当、嘘だったらいいのにね。あんたもこのトンネルに入る前に審判のコインは置いてくるべきだったよ。ここの地面に審判のコインを置いて行くのはどう?」
危険だということは分かったが、審判のコインを手放す気は全くない。
審判のコインを持ったまま自分と一緒にいると、シュサヌも危険な目に遭ってしまうかもしれないのでここで別れるべきだろう。また、一人になると思うとげんなりしてしまうが。
「悪りぃけど、置いていかない。命より大事な物だからな! シュサヌ、オレといると危ないからここで別れ……」
「……命より?」
──パァン!
「いってぇえええ‼︎」
左頬を強く平手で叩かれたようだ。叩かれた衝撃でかけていた色眼鏡が落ちてしまった。
「ふざけた事言うんじゃないよ‼︎ こんな物が命より大事⁉︎ ふざけないで‼︎」
何故かシュサヌは物凄く怒っている。何かマズい事でも言ったのだろうか?
何が何だかよく分からないまま、左頬をすりすりと摩りながら呆然としていた。




