85. 過去の5番と8番(旧五野八編3)
「そうかい、最後の番号だね」
首にかけているコインを見てすぐに審判のコインと分かったようだ。ラグファミリーにも審判のコインの情報があるのだろうか。自慢げに少し胸を張ってコインをシュサヌに見せていた。
「いやぁ、何か選ばれちゃったみたいでぇ〜。オレの素晴らしさに女神が気付いたっていうかぁ〜」
照れながら話していると、シュサヌは突然審判のコインを右手で掴んできた。
「へ?」
驚いて思わず後退りをするが、シュサヌは離そうとしない。審判のコインを睨んでいるようだが……。
まさか、審判のコインを狙っているのでは。
「今すぐ審判のコインを外しな、36」
何故か自分のことをザンツィルではなく、36と呼んでいる。
首を心配してくれていた先程までの穏やかな表情はなく怒っているように見える。やはりラグファミリーも盗賊の組織なのだろう。世界財産である審判のコインを狙う者は少なくない……シュサヌもその一人なのだろうか。
慌ててコインを掴んでいたシュサヌの右手を振り払う。
「外すわけないだろ! もしかして、審判のコインを狙っているのか⁉︎ ラグファミリーのボスに頼まれたのか⁉︎」
シュサヌは再び小さなため息をつくと、こちらをジッと見ていた。奥へ行くために共に行動しようと考えていたが、シュサヌが審判のコインを狙っているとなると話は別である。
審判のコインを奪われないよう守らなければ。
「早く外しな、死にたくなければね」
渡さなければ殺すということなのだろうか。女性に攻撃はできない……トンネルの奥へ逃げるしか手はない。
「絶対に渡さねぇからな‼︎」
シュサヌは何故か唖然とした表情に変わっていた。
「渡す? 何言ってるんだい? あんたを襲った念達は審判のコインを持っている限り、ずっと襲いかかってくるよ? いいのかい?」
「えっ」
「えっ?」
……とてつもなく恥ずかしい勘違いだ。てっきり、シュサヌが欲しいのかと思っていたが違ったようだ。
"審判のコインを持っていると襲いかかる"ということは、やはり黒い布の人物と蒼白い右手は想元山で戦い亡くなった者達で間違いない。
ふと、黒い布の人物がよく言っていた言葉を思い出す。
「"まだ"って黒い布の奴はよく言っていた」
「"まだ、戦いは終わっていない"」
シュサヌは静かに呟やくと目を閉じた。
「えっ、そういう意味なのか⁉︎ 何で分かるんだよ⁉︎」
「ちょいと勉強してきたのさ」
過去の想元山の戦いを知っているのだろうか。旧五野八トンネルに入る前に自分もしっかり勉強しておくべきだった。トンネルの長さも分からないまま入ってしまったことを今更後悔している。




