84. 過去の5番と8番(旧五野八編2)
「本当に大丈夫かい? ちょっと額に触れていいかな? 熱があるか確認を……」
これ以上近付かれたら間違いなく抑え込んでいた鼻血が出てしまう。銀色の髪の女性が着ている服は首元が大きく開いてる。僅かに下を向くだけで胸元が見えそうなのに、本人は気付いていないのだろうか。
急いで地面から立ち上がった。
「大丈夫! た、助けてくれてありがとう! あなたは……そ、その、誰なんだ?」
動揺しているのがバレてしまいそうだ……急いで記憶の中から先程の出来事を忘れて冷静になろうとする。
「んっ? そう、ならいいんだけど。あんまり無茶するんじゃないよ」
銀色の髪の女性も地面に置いていたハンディライトを持つと立ち上がった。
「あたしは"シュサヌ"だ。このトンネルの奥を目指している。さんは付けなくてもいいからね、堅苦しいから」
シュサヌ……初めて聞いた名前だ。スールイティ団に自分が所属していた頃はシュサヌという名前の人物はいなかった。新しくスールイティ団に入団した者なのか、それともラグファミリーの一員なのだろうか。
「シュサヌの所属はスールイティ団か? それとも、ラグファミリーなのか? ロキョウさんの依頼で来てるんだろ?」
シュサヌは自分が落としたハンディライトを拾って持って来てくれた。ハンディライトをこちらに手渡してきたので受け取る。
「あっ、悪りぃ、悪りぃ! ありがとう!」
「いいって。そうだねぇ、あたしはラグ……ファミリーかなぁ」
かなぁ? の意味がよく分からないが、どうやらラグファミリーの一員のようだ。
そういえば、何故シュサヌが来てから突然蒼白い右手は消えたのだろうか。
「ラグファミリーか、初めて会うな! オレはザンツィル。オレもさん付けは無しで頼む」
「ザンツィルだね」
トンネルの奥へ行く目的が一緒なら、シュサヌと行動を共にした方がよさそうだ。一人でいるより二人の方がまだ安心できる。
……ふと、気になった事をシュサヌに聞いてみる。もしかしたら、黒い布の人物や蒼白い右手について何か知っているかもしれない。
「なぁ、さっき全身を黒い布で被った変な人に襲われたんだ! 首を絞めてきた蒼白い右手も消えている……このトンネルはどうなってるんだ⁉︎」
シュサヌは小さなため息をつく。自分は何かマズい質問でもしたのだろうか。シュサヌはこちらを振り向くとジッと首にかけている審判のコインを見つめていた。
「あんた、審判のコインに選ばれているんだね。番号は何番なんだい?」
「36だけど?」




