83. 過去の5番と8番(旧五野八編1)
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「受付長、お電話が……」
ミリが神妙な面持ちで部屋へと入って来る。ミリの表情を見ると、何となく誰から電話がかかってきたかは予想ができていた。
「ありがとう、代わります」
きっと、ザンツィルの詫び金についての問い合わせの電話だろう。
「はい、中央依頼店受付長のロキョウです」
笑顔で電話対応をする。
「あー、ロキョウさん? あのさぁ、まだ詫び金無理なのかなぁ? 依頼主が、もう待てねぇって言うんだけど。ザンツィルって奴ちょっと遅すぎねぇか?」
電話の相手は依頼主ではないようだ。詫び金について知っているということは、依頼主から話を聞いているのだろう。少し嫌な予感がする……。
もしかしたら、依頼主は痺れを切らし"奪略商"に詫び金の件を頼んだのではないだろうか。
奪略商は、ロウシティにアジトがあるといわれている組織。破格の金額で依頼を受ければ、誰であろうと容赦なく力で目的物を奪い取る非人道的な事をする人達の集まりである。
〈困りましたね……待ってほしいと何回言っても聞かないですし、どうしましょうか〉
声や言葉遣いからして、今電話をかけている人物は暴力的な人物だろう。下手な言い訳をすればザンツィルを捜しに行くかもしれない。
〈あまり刺激しない方がよさそうですね〉
「ああ! 彼は今、高額な報酬金の依頼を受けていますよ。まだ、報告がないのでどこまで行けているかは分かりませんが……詫び金を払う為に頑張っているところです」
電話だと6番力で相手の心を読むことができない。何を考えているのか予想しながら話をしていかなければ。
怒らせないように。
内心は依頼主に対して少し呆れていた。頼むのならば、まだ保安雇人の方が話が通じるからだ。破格な依頼金が必要な奪略商に頼むとは思ってもいなかったが……。
「あっ、そう。んじゃあ、もう少し待つわ。あんまりにもまだ遅いようだったら、悪りぃけどザンツィルって奴を捜しに行くからよろしくぅ〜」
やはりそう言うと思っていた。笑顔だった表情の目つきが鋭くなっていく。
「……彼が詫び金を払えれば捜しにいく必要もなくなりますね。まだ、分からない事は言わない方がいいですよ。無駄な喧嘩を買うだけですから」
ニコニコと表情を再び笑顔に戻す。
「ハハッ! 確かに! そんじゃ、ザンツィルに期待してますよー!」
──プープー
電話を切られたようだ。受話器を置くとミリが受付カウンターからこちらに向かって歩いて来た。いつもと様子が違うことに気が付いたようだ。
「受付長、やはりザンツィルさんの?」
「ええ、ちょっと困りましたね。少し厄介な相手からの電話だったので、どうしようかと考えているんです。ザンツィルがトンネルの奥を見れているといいのですが」
ライトフォンにザンツィルからの着信履歴はなかった。
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