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36  作者: 川之一
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80. 旧五野八(ザンツィル編9)


 〈ヤ、ヤバいって……早く立たないと……〉

右側の頭部に激痛が走る。壁に手をつけて何とか地面から立ち上がることはできたが、この状態で走るのは厳しそうだ。殴られた所為で少し眩暈がしている。


 ふと、右手に持っているハンディライトに視線を向けた。

〈もしかしたら……やってみるか!〉

ハンディライトを右手で鷲掴みにして斜め上に向ける。

「うぉらぁぁあああ‼︎」

持っていたハンディライトを黒い布の人物の背後に向けて放り投げると、ぶつかることなく落ちていった。


 すると、黒い布の人物は動きを止め後ろを振り向き始める。


 36番力を使い、ハンディライトの"光"で黒い布の人物を後方へ誘導させることができるのではと考えていた。急いで36番力でハンディライトを自分が進んでいる道とは逆の方へと動かす。ハンディライトはガタガタと音を立てて地面を進みながら通ってきた道を戻り始める。

「アアアァァ」

黒い布の人物もハンディライトを追いかけ始めた。今なら背中をこちらに向けている……背後から剣鉈を奪うか、落とさせればもう恐れることはない筈だ。


 〈チャンスは一回だな。これでダメだったら終わりか、オレは〉

背後からゆっくりと黒い布の人物に近付いていく。剣鉈を持っている腕を強く殴るか叩けば一回は落とす筈だ。

〈奪えれば、逃げられるかもしれない〉

ゆっくりゆっくりと更に距離を縮めていく。今思えば、強力な明るさのハンディライトを買っておいて正解だったかもしれない。


 距離は僅かとなった。これ以上近付けば間違いなく黒い布の人物に気付かれてしまうだろう。


 ……奪い取るなら今しかない。


 「今だ‼︎」


 ──ガッ!


 黒い布の人物の腕を背後から掴んだ。

「シシシシシシシシシシ」

「ふざけやがって、よくも殴りやがったな‼︎ てめえの腕もこうだぁああ‼︎」

肘で本気で強く叩いた。すると、痛みを感じたのか手から剣鉈を離してくれたようだ。急いで地面に落ちた剣鉈を拾い上げた。

「よっしゃぁあ‼︎」

「マダァアマダァナンンスス」

「これで攻撃はできないな! さぁて、お前は何者だ⁉︎ 急に攻撃してきやがって!」

剣鉈を黒い布の人物に向ける。


 「シンパンノノコインンニシヲヲ」


 「さっきから審判のコイン審判のコインって。まさか……5番と8番の戦いで亡くなった人とかなのか?」


 ──スッ


 「!」

黒い布の人物が突然消えたと同時に持っていた剣鉈も消えてしまった。慌てて辺りを見回すがハンディライトを少し離している為、薄暗い状況で周りがしっかり見えない。

「いっ‼︎」

暗闇の中から突然、蒼白い右手が自分の首を掴んできた。先程の黒い布の人物の姿はなく、右手だけが暗闇の中から出てきている。


 ──ミシミシ


 物凄い力で絞められ首の骨の音が鳴り始めていた。

〈な、何だ、この力……握り潰される……!〉


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