72. 旧五野八(ダラメット編18)
『ザン兄貴、今から何処に行くんすか?』
『中央依頼店。金が無いから、裏依頼を受けに行く』
任務が失敗した後ということもあり、中央依頼店は本部を出入りする人達を警戒している筈だ。もし、盗みに入ったことがバレてしまったら……。
『あわわわわわ』
考えただけで恐怖である。
間違いなく保安雇人を呼ばれて連行されるだろう。
『ア、兄貴、暫くは近付かない方がいいんじゃないんすか? 警戒してるだろうし、危険っすよ』
ザンツィルは車の運転席のドアを開けた。
『オレは早く"世界財産"を探したいんだ。探す旅には金が必要なんだよ。警戒しなくなるまで待ってられるか』
世界財産を探したいという話は初めて聞いた。確かに、見つけるのはとても困難と言われている世界財産を探しに行くとなると膨大な金が必要になりそうだ。
『それに、36番力で警備カメラの向きを変えていたからオレ達の顔は映っていない筈だ』
『そういえば、そうだったすね』
自分は審判のコインに選ばれていないので番力は使えないが、番力というのはとても便利そうだとつくづく思っていた。手も使わず遠くの物を動かせるのは羨ましく思う。
ザンツィルが運転席に座ると、勝手に自分も慌てて助手席に座った。
『……』
『?』
……お互いを見たまま、謎の沈黙が続く。
『本気か?』
『本気っす! 俺はスールイティ団を抜けてザン兄貴について行くっすよ! 世界財産、見つけやしょうっす!』
『……兄貴はやめろって』
ザンツィルはため息をつくとエンジンをかけた。断ればまたトランクの上に乗ってついて来るのではと考えたのか、ザンツィルはどこか諦めたような表情をしている。
『レッツゴーすっぅううう‼︎ 旅の始まりっすね‼︎』
『あー、面倒くさいなぁ……ほんと』
サングラスをかけなおすとザンツィルは中央依頼店へ車を走らせた。
─────
──あれから、五年。ずっと勝手にザンツィルについて来ている。
「ダラメット……もし、あなたがよければ、またスールイティ団に戻って来てほしい。リーダーも戻って来てくれたら嬉しいと思うの」
アネアは自分に戻って来てほしいのだろうか。確かに自分はライメゼに追い出されてはいない。本当に戻って来てほしいと思われているのならばとても嬉しいことだ。
スールイティ団に戻れば、また夢のような生活に戻れる。
だが、ザンツィルを一人にさせる気も全くない。それは……いつもの自分の勘。
「ザン兄貴を一人にさせちゃいけない気がするんす」
アネアは自分の服を掴んできた。思わず驚いて顔が赤くなり始める。
「ザンツィルなら審判のコインがあるんだから大丈夫でしょ⁉︎ 何をそんなにあんな奴を心配しているの?」
"審判のコインを持っているからこそ"なのだろう。この勘が不気味に感じるのは……。
「ザン兄貴を一人にさせると……何処かで死んでしまうような気がするんすよ」




