70. 旧五野八(ダラメット編16)
このままだと、ザンツィルが車に乗ってしまい追いつけなくなってしまう。
急いで後を追いかけなければと焦り出す。まさか、36番力を使ってくるとは思わず油断していた。
『くそっすぅうう‼︎』
掴まれていない右手で慌てて服の内側ポケットから紙とペンを取り出し手紙を書く。
『これをリーダーに渡してほしいっす! 俺は行かなきゃならないんす!』
団員の手を振り払うと出口に向かって走り出した。
ザンツィルは駐車場に着くと車のドアの鍵を開けて運転席に座っていた。
『本当、馬鹿な奴。いやぁ〜、いなくなって良かった良かった!』
安堵しながらエンジンをかけて車を走らせる。
『とりあえず、中央依頼店に行くか。先ずは金を少しでも稼がないとな』
─────
ライメゼにダラメットが書いた手紙が渡された。
──"ザン兄ついて行く、壺は俺違う、ザン犯人"
慌てて書いたのだろう……殴り書きでギリギリ読める文字だ。
『まぁ、ついて行くだろうとは思っていたけど……壺を割ったのはザンツィルだな、全く』
小さなため息をついて窓からジッと外を見つめる。
『さて、どうなるやらだな』
─────
アスグ平地に入る前に自動販売機で飲み物を買いたいと思い、ザンツィルは運転していた車を道路の端に停めていた。
ズボンの後ろポケットから財布を取り出して中を確認する。
『おいおい、全財産3000ゴルドって何の冗談だよ。はぁぁ、あの野郎が中央依頼店での任務を失敗しなければなぁ』
──ポチッ
自動販売機のボタンを押した。
『あっ、やっべ! 間違えた、お茶じゃなくてコーヒーが飲みたかったんだ!』
自動販売機から緑茶の缶が出てきた。考え事をしていた所為で押し間違えてしまったようだ。もう所持金も少ない……我慢して飲むしかなさそうだ。ここで金を使ってしまうと、受けた依頼が終了するまで持たないだろう。
『あーあ……本当ついてねぇな』
緑茶の缶を持ち蓋を開けて飲み始めた。
『ザン兄貴、よければ俺が奢るっすよ』
『ああ、悪りぃな。誰だか知ら……』
こちらを向くと、ザンツィルは鼻の穴を広げ大きく口を開けていた。
『のぉおおぁあああああああああああ‼︎』
辺りにザンツィルの叫び声が響くと同時に、驚いたのか緑茶の缶を投げてしまっていた。
『ザン兄貴、どうかしたんすか⁉︎ そんなに驚いて、何か困った事でも⁉︎』
ザンツィルは震えた指でこちらを差している。
『お、お前だよ、お前‼︎ 何でここにいるんだよ‼︎』
『ザン兄貴、俺達は仲間っす‼︎』
『いやいやいや、意味分かんねぇよ‼︎ な、何? てか、どうやってついて来た⁉︎』
『ザン兄貴の車にしがみついてたっす!』
満面の笑みで答える。




