7. 付いて来るダラ
ライトフォンに表示されていた名前。
──"ダラメット"
そう、彼こそ中央依頼店の認証印を盗む任務を失敗させた張本人である。自分と共にスールイティ団を追い出された後、何故かずっと自分についてきていた。何度も離れようと試みるが、必ず自分の居場所を見つけて戻って来るとんでもない奴だ。危険な依頼でいつか利用してやろうと考えている。
ライトフォンの通話ボタンを押した。
「あっ、ザン兄貴! やっと繋がったっすねー! 何度電話しても兄貴出ないから困ってたっす! いや〜、よかったっすよ!」
ダラメットと会話出来るほど平常心ではなくなっている為、イライラもあり無言で切ってやろうと思っていた。
「ザン兄貴、見つかったんすよ! 世界財産の在り処の情報を知っている人物を!」
目を大きく見開く。
「なんだ……と⁉︎」
世界財産を一つでも売れば、詫び金なんて簡単に払えるのではないだろうか。
頭の中で邪悪な思考が次から次へと浮かび上がる。
「世界財産を持っている奴から奪えば……オレは億万長者にもなり、更には詫び金も簡単に払える。一括で払えたオレをミリちゃんは好きになる……良いこと尽くめじゃないかぁああ‼︎」
「ア、兄貴? 大丈夫っすか?」
暫く無言のまま立ち尽くしていた。
審判のコインに視線がいく。
「そうだ……36人の行動で世界がどうなるか決まるんだったよな。過去ではお互いが殺し合いを始めたが為に、アミトレアは滅びかけたと」
「兄貴? さっきから何ブツブツ言ってるんす?」
──もし、"女神が予想もしていなかった事をすれば"どうするつもりなのだろうか。
「ダラ、オレは35人から審判のコインを奪おうと思う」
ダラメットがライトフォンを落とす音が聞こえた。無理もない……驚いているのだろう。だが、いつかは言おうと思っていた。自分の夢は全ての世界財産を手に入れることであり、審判のコイン36枚もその内の一つだからだ。ちなみに、自分は審判のコインを売るつもりは全くない。
「ザ、ザン兄貴、何言ってるんすか⁉︎ ザン兄貴には36番の審判のコインがあるじゃないすか⁉︎ 奪うのは難しいと思うっす‼︎ 他の35人も兄貴のように番力が使えるんすよ⁉︎」
確かに番力が問題である。他の35人が使う力がどんなものかは分からない。ただ、15番に関してはキラーアームという機械を操る力だと予想していた。
女神が何故36人に力を与えたか……考えた答えが出ていた。36人に土地を治めさせる為に、番力を与えたというのは作り話なのかもしれない。
女神自身が選んだ36人が殺し合う……"女神は争いを楽しみながら見ていた"のではないだろうか。
ネックレスの審判のコインを空に向けて指ではじいた。
「だったら尚更、殺し合いなんて絶対にしないし、させねぇ。止めてやる……36枚の審判のコインは全てオレが頂く」