67. 旧五野八(ダラメット編13)
『兄貴……?』
ライメゼは唖然とした表情でこちらを見ている。
今日からザンツィルを兄貴分として尊敬し、本当の仲間になろうと考えていた。急がなければ、ザンツィルは何処かへ行って二度と会えなくなってしまうかもしれない。
『それじゃ、呼んでくるっすよ! ライメゼ、また!』
『待て、ダラメット‼︎』
──バタンッ
─────
息を切らしながら必死に走る。スールイティ団のアジトは三階建ての洋館で一階の出口へ向かう廊下がかなり長い。一階まで本気で走れば追いつく筈だ。
『ったく、どいつもこいつも』
ぶつぶつと何か言いながら出口へ向かうザンツィルの後ろ姿が見えてきた。
『ま、待ってくれっすー‼︎』
声が届いたのか、ザンツィルはこちらを振り向いた。いつの間にかサングラスをかけている……左目を気にしているという噂は本当のようだ。
『……』
こちらを少し見てからザンツィルは再び歩き出す。待って、と言った筈なのに無視されたようだ。よく見ると右手に車のキーを持っていた。車に乗られてしまったら呼び戻すのは困難になる。
『ちょ、ちょっとー‼︎ "ザン兄貴"ー‼︎』
ザン兄貴と呼ぶと、ザンツィルの歩いていた足が止まった。
『おっ! やった、止まったす!』
再びザンツィルがこちらを振り向く。サングラスをかけていて表情は分からないが……鋭い目つきでこちらを睨んでいるような気がする。
そして、やっとザンツィルに追い着く。
『はぁはぁ……酷いじゃないっすかぁ! 待ってって言ったのに行くなんて』
疲れている自分を見て、ザンツィルは鼻で笑っていた。
『これはこれは、使えないダラメット君。何か用かなぁ?』
酷い言われような上に、馬鹿にしているような言い方だ。
だが、自分は気にしない。命の恩人だからだ。
『ザン兄貴、スールイティ団をやめないでほしいっす‼︎ 兄貴の腕前と36番力はスールイティ団には必要なんす‼︎』
ザンツィルはこちらをジッと見ている……いや、睨んでいるのだろう。
『おい、誰が兄貴だ? 気持ち悪い呼び方するな! 戻るつもりはないんで、ダラメット君さようなら』
右手を振りながら歩き出そうとしている。慌ててザンツィルの左肩を右手で掴んだ。
『行かないでほしいっす、ザン兄貴! 俺はザン兄貴の仲間になりた……』
──ダァン!
突然、ザンツィルは自分の胸倉を掴むと壁に背中を叩きつけてきた。
『いったーいすぅうう‼︎』
『てめえ、いい加減にしろよ。兄貴とか呼んでんじゃねぇよ‼︎ 使えない奴と仲間になるわけねぇだろうがぁ‼︎』
自分を叩きつけた衝撃で、かけていたサングラスが落ちてしまったようだ。
ザンツィルの目は本気で怒っている……。




