65. 旧五野八(ダラメット編11)
『過去に勤めていた会社の物を持ち出す人が仲間だなんて信頼できないっすねぇ』
スールイティ団に入団してから、ブラッストロ社の元社員はライメゼに会社証明書を渡したのだろう。スールイティ団の内部情報も外部に持ち出していないといいが……。
『どーだろうね〜。まぁ、別にいいよ。特に重要な情報もないし』
『いやいや、あんたの……リーダーのこととか外部に話してたらどうするんすか?』
ライメゼは歩いていた足を止め、微笑んだままこちらに目を向ける。
『俺に何かあったら、とかそんな事は絶対にないから大丈夫』
『……』
何故か一瞬身体に悪寒が走った。
何に悪寒を感じたのかは分からない。だが、ライメゼを敵に回すのはやめておいた方がよさそうだ。
──自分の勘。
少しぼーっとしながら歩いているとライメゼは顔を覗き込んできた。
『大丈夫? 急にぼーっとしてないか? 入団するんだし、名前教えてよ』
『ダラメットっす』
『んじゃあ、ダラメット君、"今日から"よろしくぅー‼︎』
スールイティ団に所属するのは今日からということになったらしい。まだ何も詳細を聞いていないのだが。
『随分と勝手なリーダーっす……』
だが、ライメゼには借りができてしまった。
スールイティ団に所属したら少しでも力になって借りを返していこう。
ライメゼは満面の笑みで右手で左肩を軽く叩いてきた。
──『期待しているよ! ダラメット』
─────
光が動いたことに気付き顔を上げる。昔の事を思い出すと、自分も少し落ち着いていた。自分の持っているハンディライトは小さな石だらけの地面を明るく照らしていた。
アネアは小さな声で話し始める。
「リーダーはダラメット……あなたのことは追い出そうとはしていなかった。ザンツィルは反省もしなかったから追い出されたのよ?」
─────
中央依頼店の盗みの任務が失敗した後、自分とザンツィルはライメゼに呼び出されていた。全く反省しないザンツィルに、滅多に怒らないライメゼも怒りを隠せていなかった。
『オレは悪くない! 失敗したのはこいつだ!』
『ザンツィル、お前は仲間を何だと……』
慌てて二人を止めようとする。ザンツィルとライメゼが喧嘩なんてしたらとんでもない事になりそうな気がして恐怖を感じていた。
『喧嘩はやめようっす! リーダーすまねぇっす、俺がミスした所為なんす……三人が……俺の所為なんす』
ザンツィルはこちらを左手の人差し指で差したまま怒鳴り始める。
『そうだよ、お前が罠がある床を踏まなければ失敗しなかったかもしれないだろうがぁ‼︎ 使えない奴なんかと任務なんかできるか‼︎』
『ザンツィル!!!!』
ライメゼは思いっきり強く両手で机上を叩くと、右手の人差し指でドアを指差した。
『もういい。お前は……スールイティ団から今すぐ出て行け』