62. 旧五野八(ダラメット編8)
怒りが頂点に達しようとしていた。スールイティ団に入らなければ助けてはくれないようだ。ライメゼはとても卑怯な人物である……こんな人物に従わなければいけないと思うとげんなりしていた。
『ああ……いいっす。俺、捕まるんで』
自分がそう言うと、突然ライメゼは持っていた大きな封筒から札束を取り出してきた。驚いた表情で札束に目を向ける。
『まぁ、逃げ出す方法を聞いてよ。これ、500万ゴルドぴったりあるから眠っている彼に渡そう』
『はぁ? 渡してどうするんすか? 事務所から出た瞬間に捕まって終わりっすよ?』
渡したところで男性は眠っているので助けてはくれない。お茶の中に入れた眠り薬は強力な効き目なので暫くは何をしても起きないだろう。
変な事を言ったわけでもないのに何故かライメゼは両手を叩いて笑い始めていた。
『アハハハ! うんうん、すぐに逃げようとすれば捕まるだろうね。だからさ"話していたら急に眠ってしまった"ということにしようか』
……何を言っているのだろうか。話していて急に眠る人なんかいないだろう。冷めた目でライメゼを見ていた。
『だから、とことん惚ければいいんだよ。俺は知りませんって、とりあえず当たった番号カードのプレゼントである500万ゴルドは置いておきました、って! 意味分かる?』
惚けながら保安雇人達から逃げることなんてできるのだろうか。どうやらライメゼは自分を助けようとしてくれているようだ。気に食わない人物だが、ここは従うしかないだろう。もし無事に逃げ出せたら、スールイティ団への入団も少しは考えてもいいかもしれない。
『……スールイティ団に入っても、俺は役に立つか分からないっすよ? いいんすか?』
『おおお! 大丈夫、大丈夫、入ったら世界財産の写真を見て細かい模様を覚えてほしいんだ。で、盗む時に合っているかどうかしっかり見ていてほしいのさ』
ライメゼの瞳は輝いていた。
こんなにも期待されるのは初めてかもしれない。
記憶力がいいと見抜くのは、さすがリーダーと言うべきだろうか。凄腕の盗賊が多く所属していると聞いていたが、彼らの盗みを見て誘ったのもライメゼなのだろう。ライメゼを馬鹿にしていたが、リーダーとしての素質は本当にあるのかもしれない。
『分かったす……やってみるっす。入るっすよ、スールイティ団に』
『よっしゃ! じゃあ、さっさとここから出ようか』
500万ゴルドは置いていく、と言っていたが戻ってこない可能性もある……ライメゼはいいのだろうか。
『ご、500万ゴルドはどうするんすか⁉︎』
『ああ、彼にプレゼントしよう』
ライメゼはニコニコと微笑んだまま答えた。




