59. 旧五野八(ダラメット編5)
『どこ行ったっすか⁉︎ そんなに早く出口から出れない筈っすけど……と、とりあえず、当たった客を何とかしないとっす!』
客の男性がこちらに向かって歩いて来る。満面の笑みでこちらを見ているが、自分は鼻で笑っていた。500万ゴルドを渡すつもりはないからだ。
『当たれば、気絶させて、番号カードを奪い取れ、という命令だったすよねぇ。簡単じゃないっすか』
男性が来たので、建物裏の事務所へと案内する。
『あ、あの、初めて当たったんです! これでやっと彼女にブレスレットを買ってあげられます!』
当たった男性はどうでもいい事ばかり話してくる。ブレスレットを当たった金で買わずに、働いて買えばいいだろうと思っていた。この後、何が起こるのかも分からずにのうのうとついてくる男性を笑顔で睨み付ける。
『それは良かったすねぇ〜! 500万ゴルドのブレスレットはやべえっすよ! ヒューヒュー‼︎』
『あ、ありがとうございます!』
笑顔で笑った後、前を向いて再び鼻で笑っていた。
『番号が当たってしまったのが運の尽きなんすよね〜』
しかし、気になる事がある……スーツ姿の金髪の男性は何処へ行ってしまったのだろう。出口へ向かう客達の中に男性の姿は見当たらなかったが……。
後ろを振り向く。
『な、何ですか?』
当たった男性と目が合ってしまった。男性を見たつもりはないのだが。
『いや、何でもないっす。幸運のお客様を見れて自分は幸せっすぅう!』
思ってもいない事を発言した所為で更にストレスが溜まってきていた。金髪の男性は自分達の後をついてきてはいないようだ。
『良かったす……あの金髪、警戒しないといけない気がするっすね』
辺りを警戒しながら事務所へと向かう。
建物裏の事務所に着くと、男性を室内に案内して椅子に座らせた。目の前に小型のテレビが置かれている。急いで紙コップを用意してお茶を入れた。
『500万ゴルドを持ってくるので、ちょっと待っててほしいっす。受け取る際の注意事項がテレビで流れるから確認をお願いしますっす。あっ、これ高級茶なのでよければ飲んでくださいっす』
『は、はい、ありがとうございます!』
そう言うと、男性はテレビを観る為に前を向き渡したお茶を飲んだ。
『は〜い、お疲れ様っすぅ〜! おやすみ〜』
『えっ⁉︎ あ、あれ? 急に眠く……』
──ドサッ
眠っている男性から当てた番号カードを奪い取った。男性が起きる前にここから遠くへ運べば、当たったことも夢だと思うだろう。自分のミスで迷惑をかけてしまったことには少し反省していた。
『すまねぇっすなぁ、彼女へのブレスレットは自腹で買ってくださいっす。さてと……』
男性の腕を肩にまわそうとした瞬間。
『やっぱりねー。騙してたのかぁ〜』
『へっ?』
いつの間にか自分の後ろに金髪の男性が立っていた。




