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36  作者: 川之一
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56. 旧五野八(ダラメット編3)


 「ア、アネアは海は好きっすか?」

このままデートに誘えるのではないだろうか。胸の高鳴りが止まらなくなってきていた。やっと、自分が望んでいた良い雰囲気になってきたからである。もう重たい会話に戻してはならない。

「好きよ。悩んだ時とか……波の音を聞きたくなる時ってあるよね」

"好きよ"と言う言葉が脳内でエコーのように響いていく。


 今がチャンスだろう。

「ア、アネア、そ、その俺と……俺と、俺とぉおおおおお‼︎」


 「本当に良かった。ダラメットが"ついて来て"くれて」


 〈うっひょぉおおおおお‼︎ きゅ、急に何すかぁああ⁉︎ ま、まさか、アネアも俺のことを⁉︎〉

「ア、アネア、俺も……‼︎」


 「見て」


 トンネルの先をアネアがハンディライトで照らす。何か見つけたのだろうか……自分も不思議そうにトンネルの先を見つめる。目を細めて見ると少し開けた場所がトンネルの先にあった。

「やっと、やっと来れたのよ。これが"本当の旧五野八(ごのや)トンネル"なの! アハハッ! ダラメット、あなたのおかげだわ!」


 本当の旧五野八(ごのや)トンネル? どういう意味なのだろうか。


 「ど、どういう事っす? 俺達は元々旧五野八(ごのや)トンネルに来てたじゃないっすか?」

アネアは右手に持っているハンディライトをこちらに向けてきた。眩しく感じ目を細めるとアネアは深い笑みを浮かべていた。その笑みは、先程の嬉しそうな笑みとは全く違う。


 「ごめんね、ダラメット。私、本当は先に旧五野八(ごのや)トンネルに入っていたのよ。だけど、ここで亡くなった人達の念が私をトンネルの奥へ行かせてくれなかったの」

「えっ……念って? い、行けてよかったじゃないっすか? 何で謝るんす?」

アネアの笑みが更に深くなっていく。スールイティ団に長年所属しているだけあって、もしかしたら騙されてしまうかもしれないとは思っていたが……。


 「ザンツィル。あいつを一人で行かせたことによって、念達はザンツィルの元へ行き私達は無事に本物のトンネルへと来れたの。審判のコインを持っていれば……彼らはザンツィルを"敵"だと思うから」


 「えっ」

まさか……最初から、アネアの狙いはザンツィルを一人で行かせることだったのだろうか。自分は利用されただけ?


 〈そんな……アネア……〉


 慌ててライトフォンをポケットから取り出す。電波の表示は0になっていたが、構わず急いでザンツィルに電話をかけた。0の状態だと繋がるのは難しいが……。


 ──ピーピー


〈頼む‼︎ 繋がってくれっす‼︎〉


 突然、アネアは自分が持っていたライトフォンを取り上げてきた。

「アネア、何するんすか⁉︎ ザン兄貴が無事かどうか……」

「ねぇ、ダラメット。また、リーダーに迷惑をかける気?」


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