51. 旧五野八(ダラメット編)
〈あっ! やっべ、オレのライト車に忘れてきた!〉
こっそり二人について行こうと思っていたのだが、ハンディライトを車の中に置きっぱなしにしていたことを思い出す。今から車に戻ってハンディライトを探したら二人は先に行ってしまうだろう。もし二人と逸れた場合、灯りがないと自分だけがトンネルの奥に行けても何も見えない。
〈それはマズイ。世界財産を渡すわけにはいかねぇんだよ! くっそぉおお!〉
慌てて車の方へと戻る。
─────
何故か焦りながらザンツィルは車の方へと走って行く。
「えっ? あ、あれ? ザン兄貴ー⁉︎」
突然、隣にいたアネアが右手で自分の左腕を掴んできた。思わず驚いて後退りをするとアネアは上目遣いでこちらをジッと見つめていた。
「ねぇ、ダラメット、ザンツィルなんておいて早く行こう。私……どうしても二人で行きたいの……お願い」
〈うっひょぉおおおっすぅううう‼︎〉
心の中で思い切り叫ぶ。
もしかしたら、アネアは自分に気があるのではないだろうか。驚きの余り心臓の高鳴りが止まらず焦り始めていた。
〈も、もしかして、二人でトンネルに入った後、こ、こ、こ、こ、告白っすかぁあ⁉︎〉
スールイティ団に所属していた頃、自分もアネアに少しだけ気があったのかもしれない。アネアは頭も良く可愛いので他の団員達からも人気だった。アネアに告白して振られた男性は数え切れないぐらいだ。自分のことなんて眼中に無いと思っていた。
だが、今、確かに"二人で行きたい"と言ってくれた。
〈ザン兄貴……すまねぇっす。俺、パラダイスに行ってくるっすよ。兄貴のことは忘れねぇっす〉
「行ってくれるの?」
「当たり前じゃないっすか。君を……アネアを放っておけないっすよ」
「やった! それじゃあ、行こっか!」
アネアの笑顔を見ながら、不気味な笑みを浮かべる。まるで目の前に女神がいるようだ。
「おいっ、ダラ! 世界財産を先に取られたら絶対に許さねぇからな! 絶対に取られるんじゃねぇぞ‼︎」
こちらを向いて大声で話しながらザンツィルは走っている。必死の形相だ……。
「はいはいっすぅ〜!」
軽く聞き流してしまった。
入り口のフェンスドアからトンネル内を覗く。トンネルの中は真っ暗で何も見えず、水が滴る音が何度も響いていた。奥をハンディライトで照らしてみるが、やはり人がいる気配はない。
「だ、大丈夫すかね? 本当に不気味なトンネルっすね」
「大丈夫、大丈夫! 奥まで行けばいいだけだよ。絶対に世界財産を見つけましょ!」
「すぅ……」
アネアに世界財産を渡せば……付き合ってくれるのではないだろうか。




