5. 噂の15番
……三人の姿は見えなくなっていった。
──『くそっ‼︎』
降りてくる侵入者捕獲用シャッターに番力を使う。上がるように命令するとシャッターは上がり始めていた。確かに自分の36番力はしっかり使えている筈だ……何故、キラーアームには効かなかったのだろう。
自分ともう一人は無事に脱出することができたが、別の方向へ逃げた三人はいつまで待っても戻って来ることはなかった。侵入者捕獲用シャッターが閉じたとしたら、三人はキラーアームに捕まってしまったのだろう。
任務も失敗し、仲間も失い、自分ともう一人はスールイティ団から追い出された。
─────
あれから他の盗賊団に入るのをやめ、自分の力で目的の物を探しながら、掲示板の依頼や裏の依頼などを受けて金を稼ぎ旅をしていた。
──アミトレアの全ての世界財産を奪う夢を抱きながら。
世界財産とは、この世界で最も貴重な財産とされている宝物のことである。決して複製することはできない。
"審判のコイン36枚も世界財産の一つ"である。
ふと、思い出した事があり車の運転速度を落とす。
〈もしかして……でも、あれは本当の噂なのか〉
二年前噂で聞いた程度だったが、中央依頼店の警備には15が雇われているという情報を酒場で聞いたことがあった。今になって思う事はもしかしたら、あの機械を操作していたのは……。
「審判のコインに15番目に選ばれた人物」
納得していた。それならば、その人物は15番力が使える。36番力とぶつかって力をかき消されてしまったのだろう。その人物がどのような力を使うか分からない以上、中央依頼店に侵入するのはやめた方が良さそうだ。
砂浜の端に再び車を停めてから降りて海を見つめた。静かな波の音が聞こえる。
「女神は何で選んだ36人全員に変な力を与えたんだ……。力があれば争いが起きるかもしれないと分かっていた筈だ」
持っていたライトフォンの電源を入れた。
……凄い数の着信数だ。着信履歴を見るとほとんど失敗した依頼主からだった。
「だぁあああ‼︎ 履歴消すの面倒くさいんだぞ‼︎ てめえの財産全て奪ってやろうか‼︎ オラオラオラオラ‼︎」
物凄い勢いで指で連打しながら画面にある着信履歴の削除ボタンを押していく。
──ポポン
また着信がきてしまった。だが、画面に表示されている名前は依頼主ではない。表示されていた名前は……。
──中央依頼店
「うーわ、更に面倒くさくなったぞ。あの野郎、本部にまで言いやがったな! くそぉおお‼︎」