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36  作者: 川之一
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49. 入り口前


 一瞬、目の前の光景が歪んだ。


 「いや、何か急にめまいが」

慌てて目を閉じて額に手を当て首を横に振る。運転中にめまいがしたのは初めてだ。もしかしたら、ホテルでしっかり眠れなかった所為で睡眠不足になっているのかもしれない。ダラメットを睨み付けながら話し始める。

「誰かが替わってくれなかった所為で……オレがベッドだったら、しっかり寝れてたのになぁ〜」

ダラメットも白い目でこちらを見ていた。

「なぁーに言ってるんすか! 兄貴が文句無しって言ったんすよ? でも、兄貴がめまいなんて本当に珍しいっすね、大丈夫っすか?」

「……ああ」

寝るのが遅くなった日は何度もあるが、めまいが起きたことなんてない。


 〈番力を使った直後だったよなぁ……何なんだ? まっ、いいや〉


 再び運転しようとするとダラメットが慌ててハンドルを止めた。

「お、俺が運転替わるっすよ?」

「いや、いーよ。お前が運転するなんて危険すぎる」

ダラメットに運転なんてさせてしまったら、更にぶつけられて間違いなく愛車はキズだらけになってしまうだろう。

「もう、これ以上の出費はごめんだからなぁ……! せっかくの3000万をこれ以上減らしてたまるか!」

まだ依頼も終わっていないのに、3000万ゴルドの小切手のことばかりが頭に浮かんでいた。


 何が何でも報酬の小切手を貰わなければ……この先に待っているのは地獄である。


 両手でハンドルを強く握っていた。

「ただでさえ、オレを警戒しているカジノが多いからなぁあ。2000万ゴルドをすぐに稼ぐのは難しい……!」

「兄貴、きちんと前見るっす、前」

「お前他人事かよ! いいか⁉︎ 2000万なんてなぁあ……」

ダラメットの胸倉を掴む為にハンドルから左手を離した。

「いやぁあああ‼︎ 兄貴ぃいいい、ハンドルぅううう‼︎」


 ドタバタとしながらも、旧五野八(ごのや)トンネルを目指して車を走らせる。




 めまいがしてから更に慎重に進んでいると、少し開けた場所にトンネルが見えてきた。ロキョウが言っていたとおり、旧五野八(ごのや)トンネルの入り口はしっかりとコンクリートで塞がれており、車で入ることはできないようだ。トンネル付近の道路脇に車が二台停められている……ラグファミリーとスールイティ団の車だろう。


 旧五野八(ごのや)トンネルの入り口の前に自分も車を停めた。


 車内から旧五野八(ごのや)トンネルをジッと見つめる。

「新の方は大丈夫なのに、旧の方にだけ何で変な事ばかりが起こる? 奥に行く前に何か起こるのか?」

「新トンネルの方は想元山(そうげんざん)の右側っす。左側は戦いがヤバかったらしいっすからかね」

「何でそれを早く言わねぇんだよ。それじゃ、トンネルなんか掘っちゃマズイだろ。……ん?」


 よく見ると、旧五野八(ごのや)トンネルの入り口の前に一人の女性が立っていた。


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