45. 審判のコイン34番
「やぁ、依頼を頼みたいのかな?」
ニコニコと微笑みながらミリの代わりに受付の対応をすることにした。暗殺の依頼を頼んでくる相手がどんな人物なのか分からない以上、無闇に質問をしない方がいいだろう。
6番力を使っておく。
「アッ、そうなんですけど……頼めないって本当ですか?」
ザンツィルの暗殺の依頼を頼んできたのは黒髪のショートヘアーの青年だった。目元まで伸びている前髪の所為で顔はしっかりと見えない。黒髪の青年はノートパソコンを左腕に挟んで持っていた。
「本当だよ。申し訳ないけど、命に関わる依頼や暗殺等の依頼は断っています」
「アッ……えー……」
「ちょっと詳しく聞きたいから、メモ帳を取ってくるので待っててもらっていいかな?」
「アッ、はい……できれば早めで」
慌てて受付カウンターの奥へと向かう。メモ帳から紙を二枚切り離し鉛筆で急いで文字を書いた。
「ミリさん、タイムくん、ちょっといいかな?」
イスに座っていた二人を呼んで、文字を書いたメモ用紙を手渡した。
「……受付長、了解です」
「分かりました、僕も準備しておきます」
「二人共、頼んだよ」
メモ帳を持って慌てて受付へと戻る。黒髪の青年はノートパソコンの上に右手の人差し指を乗せてトントンと音を鳴らしながら待っていた。少し機嫌が悪くなっているようだ。あまり刺激しないように話しかけなければ。
「ごめんね、待たせたね。先ずは君の名前を聞いていいかい?」
音を鳴らしたまま黒髪の青年はこちらを見ている。
「アッ、シムです」
……本名ではない。
〈偽名かぁ、やっぱり何かバレてはいけない事があるんだろうね〉
メモ帳に文字を書き込んでいく。
"名前はシム、偽名を使っているようだ"。
「シムくんだね。暗殺してほしい人は誰なんだい?」
「アッ、ザンツィルって奴です。あの、あなたにも会っていますよね?」
「……何故、それを?」
シムはノートパソコンに映っている映像をこちらに向けて見せてきた。
……自分とザンツィルが映っている。
旧五野八トンネルの依頼を頼んでいた時の映像だった。どうやらシムは中央依頼店の警備カメラを勝手にハッキングしたようだ。
真顔だった表情をやめて再び微笑んだ。誰であろうと依頼者にはいつも笑顔で対応を。
「君、只者じゃないね。厳重なセキュリティの筈なんだけど……もしかして、審判のコインを持っているのかな?」
「アッ、34番です。あの、ザンツィルって奴は今どこにいます? 僕が殺すので」
シムはズボンのポケットから審判のコインを取り出しこちらに見せてきた。
裏側には"34"の数字が彫られている。
「やっぱりね、悪いけどザンツィルの居場所は教えられないよ。うん、そのパソコンと審判のコインは没収だね」




