44. 想元山の道
車を走らせながら海沿いの道路を進んでいく。途中、右側に想元山へ向かう道がある筈なのだが一向に見えてこない。
車を道路脇に止めてロキョウから渡された地図を確認すると、もう少し先のようだった。
「あーあ、ホテルの売店で飲み物買っておけばよかったなぁ」
地図上の想元山を指差しながらダラメットが話し始める。
「ザン兄貴、あと少しで想元山っすよ。そこなら湧水があるかもしれないっす」
兄貴分である自分に湧水を飲めと言いたいのだろうか……白い目でダラメットを見ていた。
「馬鹿にしてんのか、お前。オレはアイスコーヒー以外は飲まないんだよ。何だよ、湧水って」
「昨日、水飲んでたっすよ。兄貴」
ああ言えばこう言う奴は放っておくのが一番だ。無視して車を再び走らせる。
──三十分後。
道路沿いに分かれ道が見えてきていた。よく見ると右側の道路は山の方へと続いている。
右側に曲がり、道に沿って更に奥へと進んで行く。
想元山の入口付近は新五野八トンネルが使われていることもあり、きちんと整備されていた。これならば車も大きく揺れることなく先に進めるだろうと思っていた。だが……。
「ザン兄貴、そこ曲がるみたいっす」
「はぁ? ここを⁉︎」
山の中に入ると更に分かれ道があり、ダラメットは今度は左側を指差していた。左側の道路は殆どが落ち葉に覆われてしまっている。今にも倒れそうな木や落ちている大きな石に注意して運転をしなければいけないようだ。
「あー……なるほど、旧の方へ向かう道路整備はもう知らねってことか。使わねぇもんな」
「兄貴、大丈夫そうっすか?」
「まぁ、大丈夫だろ。他の二組も行けてる筈だし」
旧五野八トンネルに向かう道路には車が通った跡が残っていた。先に行ったスールイティ団とラグファミリーの車のタイヤの跡だろう。
「このオレが行けないわけねぇじゃん。見てろよ、余裕だから」
「ザン兄貴、本当に安全運転でお願いしますっす」
ダラメットは真顔でこちらを見ていた。
─────
その頃、中央依頼店ではロキョウが依頼紙に認証印を押す業務を行っていた。
受付カウンターからミリが慌ててこちらに駆け寄って来る。
「あの……受付長、ちょっと受付に来ていただけませんか?」
認証印を押していた右手を止めて、顔を上げた。
「どうしたんだい?」
「おかしな依頼を頼んでくる方がいまして……お断りしたのですが」
何でもやってくれると思い、変わった依頼を頼んでくる人は多い。だが、中央依頼店は盗みや調査の依頼は密かに承認しているが、命に関わる依頼や暗殺等は基本的に断るようにしている。
余程の悪人でなければ。
保安雇人に知られたら大事になってしまうからだ。
「私が断ってこよう。どんな依頼なんだい?」
「それが、ザンツィルさんの暗殺を依頼したいと……」
「えっ」
驚いた表情でミリを見ていた。




