43. 風邪をひかせる作戦
「いやっほーいっすぅう‼︎」
ダラメットはベッドに向かって勢いよく飛び込む。ふかふかしていて寝るのも気持ち良さそうだ。自分も床に毛布を敷いて寝転がってみるが、やはり硬くて冷たい。
「冷たいし、硬いし、こんなんじゃ眠れねぇよ‼︎ おい、ダラメット! やっぱり変われ!」
「なーに言ってるんすか⁉︎ 兄貴、文句無しなって言ってたっすよ! ダメっす」
何が何でも変わるつもりはないようだ。
「てめぇ、運転しないだろうがぁ! いいのか? 崖から落ちたらお前の所為だからな」
「知らないっすぅ〜。おやすみなさ〜い!」
そう言うと、ダラメットは薄い毛布に包まりそっぽを向いて寝てしまった。
……ダラメットが寝てから、二時間後。
腕時計を見ると時刻は午前二時になっていた。
ダラメットの毛布を取るタイミングを見計らう為、自分は未だに起きている。ダラメットはいびきをかきながら寝ており起きる気配はなさそうだ。
「よーし、寝たな。お前だけ良い気分では寝させてやらねぇからな!」
ダラメットがかけていた薄い毛布を36番力で自分の方へゆっくり動かすと、掴んでテラスに放り投げた。
「ケッ、朝には風邪ひいてるはず。ざまぁみろ」
……季節は夏だが、風邪をひいてくれることを願って眠りについた。
──翌日。
「うぇっくしょよおいっす‼︎」
ダラメットは鼻水を垂らしながら鼻をかんでいる。自分もダラメットの無駄にうるさいくしゃみで起き上がってしまった。
……夜遅くに寝てしまった所為か、物凄い眠気が襲ってくる。
髪の毛がボサボサな状態で毛布を抱えながら再び目を閉じようとしていた。まだ時間に余裕があるのでもう少し寝ていたい。
「ぶえっくしゅんっすぅうう‼︎」
「うるせぇえ‼︎ もっと静かにくしゃみできねぇのか⁉︎ ……ふぁぁあ〜」
大きなあくびをしながら髪を掻いていると、ダラメットは困惑した表情で辺りを見回していた。
「兄貴、自分の毛布知らないっすか? 何故か無いんすよね」
「し、知らないよぅ」
……テラスにあるのに何故気付かない?
色眼鏡をかけて出発の支度を終えてからホテルの受付へと向かう。昨日のチェックインをしてくれた女性のホテルスタッフも既に受付に立っていた。
「昨日は本当にありがとうございました。またコールオーシャンに泊まりに来てくださいね。ザンツィルさん、ダラメットさん」
「さすが、五つ星ホテルだな。また来るよ」
「安くしてくれて助かったっす! また来るっす!」
チェックアウトを済ませると、お互いに手を振りホテルを後にした。
車のエンジンをかけ、ハンドルを握る。今日中に想元山に着かなければ。
「さぁて、想元山へ向かうか!」
「はいっす!」
─────
海辺でノートパソコンを操作する青年はジッと画面を見つめていた。
「アッ、ザンベールじゃなくてザンツィルね。中々、データが見つからないなぁと思ったら……」
ハッキングしたホテルの警備カメラの映像を自分が持っているノートパソコンのメモリに保存する。
「アッ、とりあえずこの人を殺すように何でもする中央依頼店とやらに頼んでみようかな。面倒くさいし」




