41. よく見る夢
「では、ザンベール様ともう一人様のお名前をこちらの紙に書いていただいて……」
「悪りぃ、オレはザンベールじゃなくて本名はザンツィルなんだ。オレも書く」
「嘘ついてたんすよ、申し訳ないっすね」
さすがに偽名のまま泊まるわけにもいかないだろう。
──ピピピ
〈映像を記録しました〉
─────
「はーん、なるほど……」
その後、よく確認したら空室が一つしかなかった為、一つの部屋で5万ゴルドにしてもらい二人で泊まることにした。
だが……この空室はシングルルーム。
一つ問題がある。
「おい、ダラメットお前が床で寝ろ。オレがベッド」
「嫌っすよ。兄貴が床で俺がベッドっす」
兄貴と呼んでいる割には全く自分に敬意を払おうとしない。何故ダラメットは自分についてくるのだろう。五年前、スールイティ団から追い出された時に他に行きたい場所などはなかったのだろうか。
「はぁ……お前ってさ他に行く場所とか帰る場所ないの? 何でオレについて来ようとする⁉︎ 邪魔なんだよ!」
「ザン兄貴に恩があるからっす‼︎」
目を輝かせながらダラメットはこちらを見ている。やはり中央依頼店で助けたことが理由のようだ。恩を感じているのなら兄貴分である自分を色々と優先するべきだと思うが。
「じゃあ、じゃんけんで勝負だ! これで負けても文句無しな!」
「望むところっす!」
……負けてしまった。
「ぬぉおおああああ‼︎」
「いぇぇえええい‼︎ ふかふかのベッドっすうぅう‼︎」
ダラメットは勢いよくベッドの上に乗っかった。
床に座ってみるがとても冷たい。
こんな床で寝なければいけないと思うと、げんなりしていた。だが、負けてしまったのでここは我慢するしかなさそうだ。
「くそっ、ついてねぇ……」
色眼鏡をかけたままレストランへ行き、豪華な料理の食べ放題を鱈腹食べ終わると風呂を済ませ部屋へと戻った。
「あれ? まだ、ダラの奴戻ってねぇのか」
左目を見られるのが嫌なので早めに風呂を済ませたが、どうやらダラメットはまだレストランにいるようだ。部屋では眼鏡を外した。
この部屋には少し狭いテラスがあり、外には白色と青色のビーチチェアのような椅子が置かれていた。
高層階でコール海も見渡せる……これが女性のホテルスタッフが言っていたオーシャンビューなのだろう。
ビーチチェアに寝転んだ。
コール海を広く見渡せる光景は絶景だった。五つ星と言われているのも納得できる。海を見ていると何故か段々と眠気が襲ってきていた。
「ダラの奴……おっせえなぁ」
静かなテラスで意識が遠のいていく。
─────
──『お父さん、お母さん……迎えに来てよ……』
「また、この夢か。何回見るつもりなんだ」
道路脇に座り込んでいる幼い頃の自分の前に立っていた。最近、よく見る夢だ。




